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国土交通白書 2022

第2節 気候変動時代のわたしたちの暮らし

■2 気候変動時代のわたしたちの暮らし

 前章までに記述したとおり、脱炭素に向けて、国内外で取組みが進展しており、脱炭素技術の開発や関連するイノベーションへの投資等が趨勢となっている。革新的技術を社会実装すること等を通じ、2050年カーボンニュートラルと生活の質や利便性の向上の実現が期待される。今後の脱炭素に向けた技術革新等を見据え、気候変動への対策とともに生活の質の向上が図られていく側面に焦点を当て、想定される暮らしの変化の例について、日常生活の局面ごとにイラストを用いて紹介する。

(1)住まいの変化

 住まいの断熱性・気密性が高まることで、夏は涼しく冬は暖かい住まいとなり、健康的で快適な暮らしが可能となる。また、太陽光発電などに必要な蓄電池といった設備とともに省エネルギー効果の高い家電等も普及し、エネルギー消費が効率化されて光熱費が抑えられている。電気自動車など各家庭の次世代モビリティも蓄電池として活用され、太陽光発電設備とともに災害時には非常用電源としてエネルギー自給を支えることで、これら住まい方の変化による二酸化炭素排出量の減少のみならず、安心で快適な暮らしがもたらされている。さらに、エネルギー効率の高い自宅でのテレワークにより、家庭での時間が有効活用される中で、VRなどの利活用により、自宅にいながらオンライン観光を本格的に楽しむような過ごし方も可能となり、通勤や外出などに伴う環境負荷が軽減されている。

図表Ⅰ-3-2-1 住まいの変化のイメージ
図表Ⅰ-3-2-1 住まいの変化のイメージ

(2)まちなか・移動の変化

 まちなかでは、駅前の空間や公共・商業施設等の周辺空間が歩行者を中心としたものへと変化し、人々にとって過ごしやすく居心地のよい空間となるとともに、鉄道やバスなどの公共交通はもちろん、自転車や新たなモビリティなどの利用もしやすくなり、外出機会の増加にもつながっている。また、自動運転モビリティや自転車等のシェアリングの普及等とも相まって、従来の駐車場や駐輪場などの施設空間が公園や広場としても利用できるようになり、子どもの遊び場の確保やカフェなど民間活用も促進されることで、居心地のよい良好な都市環境となっている。

 まちなかのビルや施設では、太陽光等の再生可能エネルギー設備を備えたゼロエネルギー・ビル化が進み、地域材の活用とともに利用者が過ごしやすい屋内環境が整えられている。また、まちなかのエネルギーの面的利用が進むことで、施設等の効率的なエネルギー消費とともに災害時など停電時のエネルギー自給が支えられ、企業等の業務継続性の観点からも災害に強いまちづくりが醸成されている。

 さらに、緑豊かな歩行空間やビルなどの緑化の進展に加え、次世代モビリティの普及に伴って大気の改善も進み、歩きたくなるまちなかの創出や自動車への依存度の低下による環境負荷の低減とともに、体を動かす機会の増加による人々の健康への効果ももたらされるようになる。

図表Ⅰ-3-2-2 まちなか・移動の変化のイメージ
図表Ⅰ-3-2-2 まちなか・移動の変化のイメージ

(3)モノの輸送の変化

 ロボット配送の実現により、まちなかで宅配トラックからのラストワンマイル輸送が自動化・省力化されるとともに、山間部や離島などではドローンによりグリーン物流が可能となるのみならず、自宅にいながら荷物の受け取りを行う機会が提供され、買い物のためだけに移動を余儀なくされることも少なくなり、環境負荷の低減にも寄与すると期待される。

図表Ⅰ-3-2-3 モノの輸送の変化のイメージ
図表Ⅰ-3-2-3 モノの輸送の変化のイメージ

(4)基幹インフラの役割の多様化

 日々の暮らしに必要不可欠なエネルギーについては、その供給拠点として自然エネルギーが最大限活用されており、環境負荷が軽減されている。例えば、洋上風力や小水力発電、バイオマス発電などにより、再生可能エネルギーの地産地消が進んでいる。

図表Ⅰ-3-2-4 自然エネルギーを活かした発電環境のイメージ
図表Ⅰ-3-2-4 自然エネルギーを活かした発電環境のイメージ

 さらに、地域の基幹インフラはエネルギーの拠点ともなっており、例えば空港はその敷地の広さを活かして太陽光発電等の拠点となるとともに、港湾は水素・アンモニアの輸入受け入れや貯蔵・配送の拠点となっている。これらのエネルギーや生活物資などの物流を担う船舶や航空機については、バイオ燃料等の持続可能な燃料や水素等の新エネルギーを活用し、環境負荷を低減した輸送が実現されている。

図表Ⅰ-3-2-5 基幹インフラのエネルギー拠点のイメージ
図表Ⅰ-3-2-5 基幹インフラのエネルギー拠点のイメージ

 このように、住まいや移動、まちなかや自然環境、そして基幹インフラまでの至る所で、その特性を活かした取組みが進展することにより、気候変動時代のわたしたちの暮らしが支えられていく。