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国土交通白書 2022

第2節 観光立国の実現に向けた取組み

■3 すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

(1)最先端技術を活用した革新的な出入国審査等の実現

 関係省庁と連携の下、日本人出帰国及び外国人出国手続のための顔認証ゲートを、令和2年度までに7空港(羽田、成田、中部、関西、福岡、新千歳、那覇)に配備した。また、携帯品の電子申告をした旅客の迅速な通関を可能とする税関検査場電子申告ゲートを、令和2年度までに7空港(羽田、成田、中部、関西、福岡、新千歳、那覇)に配備した。

 さらに、羽田、成田空港では、搭乗関連手続(チェックイン、手荷物預け、保安検査、搭乗ゲート)を顔認証により一元化する機器を導入し、令和3年7月に運用を開始した。

図表Ⅱ-3-2-1 免税店数の推移
>図表Ⅱ-3-2-1 免税店数の推移

(2)訪日外国人旅行者の受入環境整備

 観光地や公共交通機関等における多言語対応、無料公衆無線LAN環境の整備や公衆トイレの洋式化等に対する支援を行った。

 また、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるインバウンド対応の取組みへの支援を実施した。また、インバウンド需要の回復を見据えた免税店の拡大や、令和3年10月の免税販売手続の完全電子化に向けた事業者の対応を更に促進する観点から、必要な情報の周知広報に取り組んだ。加えて、令和3年10月から、免税販売手続を行う自動販売機 (別途国税庁長官が観光庁長官と協議して指定するものに限る。)については人員の配置を不要とする措置が講じられるところ、指定に向けた準備を進め、令和4年3月に国税庁長官による自動販場機の指定の告示が行われた。さらに「道の駅」について、外国人観光案内所のJNTO認定取得や多言語表示の整備等のインバウンド対応を促進し、地域のインバウンドの受入拠点とする取組みを推進した。

(3)急患等にも十分対応できる外国人患者受入体制の充実

 外国人患者を受け入れる医療機関について、令和3年度に2,044(うち都道府県が指定する「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」は1,494)の医療機関をリスト化し、情報発信を行った。また、引き続き外国人旅行者が医療費の不安なく治療が受けられるように、旅行保険への加入を促進した。

(4)「地方創生回廊」の完備

 「ジャパン・レールパス」をはじめとする訪日外国人旅行者向けの、企画乗車券について利便性向上のための調査を行った。

 また、バスタプロジェクトの全国展開を推進している。その際、民間ノウハウを活用しつつ効率的に整備・運営するため、官民連携での整備・運営管理を可能とするコンセッション制度等を活用しつつ、多様な交通モード間の接続を強化し、MaaSなどの新たなモビリティサービスにも対応可能な施設としている。

 訪日外国人旅行者をはじめ、すべての利用者にわかりやすい道案内を実現するため、観光地と連携した道路案内標識の改善などに取り組んでいる。高速道路会社等が、レンタカーを利用する訪日外国人旅行者向けに、全国の各エリアを対象とした高速道路の周遊定額パスを実施している(但し、新型コロナウイルスの感染拡大等に伴い、令和2年4月8日より新規の申込受付を停止している(令和4年3月31日現在))。

 海事分野においては、旅に係る新サービス創出の促進を図るため、平成28年4月から3年間、「船旅活性化モデル地区」制度を設け観光利用に特化した航路の旅客船事業の制度運用を試験的に弾力化した。この結果を踏まえ、31年4月からは「インバウンド船旅振興制度」を創設し、インバウンド等の観光需要を取り込む環境整備を図っている(令和3年度承認等実績:6件)。

(5)クルーズを安心して楽しめる環境整備づくり

 国内クルーズについては、令和2年9月に公表された国土交通省による中間とりまとめや関係業界団体による国内クルーズ用のガイドライン等に基づき、船内や旅客ターミナル等での感染予防対策を徹底し、都道府県等の衛生主管部局を含む協議会等における合意を得た上での実施を促進した。国際クルーズについては、国内外の感染状況、我が国並びに諸外国の水際対策の動向等を踏まえつつ、再開に向けて引き続き安全対策について検討を進めていくこととしている。

 また、クルーズの再興に向け、クルーズ船の航行の安全性の検証や上質かつ多様なツアーメニューの造成等を支援した。引き続き、ハード・ソフト両面にわたる支援を実施し、クルーズを安心して楽しめる環境づくりを推進する。あわせて、訪日観光のポテンシャルを有している海洋周辺地域において、観光コンテンツの磨き上げや訪日観光客の受入環境整備、多言語避難誘導等の災害時の訪日観光客の安全確保のための取組みを支援した。

図表Ⅱ-3-2ー2 クルーズを安心して楽しめる環境づくりへの取組み
>図表Ⅱ-3-2ー2 クルーズを安心して楽しめる環境づくりへの取組み

【関連リンク】

CRUISE PORT GUIDE OF JAPAN

URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/cruise/jp/

(6)公共交通利用環境の革新

 訪日外国人旅行者のニーズが多い、鉄道車両の無料 Wi-Fi について、令和3年10月にすべての新幹線車両で導入が完了した。

 配車アプリ等を通じて、目的地の近い旅客同士を運送開始前にマッチングし、タクシーに相乗りさせて運送するサービス(タクシーの相乗り)を認める新たな制度を令和3年11月に導入した。

 また、訪日外国人旅行者を含む旅行者が大きな荷物を持ち運ぶ不便を解消するため、空港・駅等で荷物の一時預かりや空港・ホテル等へ荷物を配送する手ぶら観光を推進した(「手ぶら観光」共通ロゴマーク認定数:令和4年3月末現在533箇所)。

 外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律(国際観光振興法)に基づき実施している外国人観光旅客利便増進措置については、令和3年3月に同措置を講ずべき区間等として、鉄道240区間・バス267区間・旅客船33区間・旅客船ターミナル3港・エアライン16事業者・空港ビル64空港を指定しており、公共交通事業者等から外国人観光旅客利便増進措置実施計画が提出され、観光振興事業費補助金(公共交通利用環境の革新等事業)などを活用して取組みを進めている。

 さらに、平成31年4月にフェリー・旅客船事業者と経路検索事業者間のデータ共有環境整備に向けて「標準的なフェリー・旅客船航路情報フォーマット」及び「簡易作成ツール」等を策定・公表し、事業者自身による航路情報のデータ整備を支援・推進しているところ、令和3年3月には、フォーマット、ツールを改良し、機能向上を図るとともに、ツール入力支援動画の作成を実施するなどデータ化の促進を図った。