
国土交通白書 2022
第2節 観光立国の実現に向けた取組み
(1)観光関係の規制・制度の適切な運用及び民泊サービスへの対応
平成30年1月に施行された「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」に基づき導入された地域通訳案内士制度について、市町村及び都道府県とも連携して育成を推進し、令和4年1月28日現在で40地域にて導入し、3,582名が登録されている。
また、旅行サービス手配業の登録制度について、登録行政庁である都道府県等とも連携して制度周知を図り、令和3年4月1日時点で1,714社の登録がなされている。
また、「住宅宿泊事業法」に基づき、健全な民泊を推進している。住宅宿泊事業の届出住宅数は、令和4年3月14日時点で18,196件となった。健全な民泊サービスの更なる普及に向けて、営業日数を効率的に集約するシステムの活用等により、違法民泊対策の実効性を向上させた。
(2)産業界ニーズを踏まえた観光経営人材の育成・強化
観光分野における人材の育成及び確保のため、トップレベル、中核レベル、実務レベル、それぞれのレベルで取組みを行った。
トップレベルについては、我が国の観光産業を牽引する人材を育成することを目的とし、平成30年度に一橋大学及び京都大学に「観光MBA」が設置され、これまでに54名の修了生が輩出された。また、観光MBA取得を目指す人材の企業による派遣を促進するため、令和元年度より産官学連携の協議会を開催しており、令和3年度においても、修了生の活躍ぶり等の成果報告や観光MBAを取得した人材の活用方法についての協議を行った。
中核レベルについては、地域観光の中核を担う人材の育成を図るため、平成27年度より大学におけるリカレント教育の実施を支援し、令和3年度においても、山口大学による地域の観光関連産業等の経営力向上に向けた講座を支援した。
実務レベルについては、国内人材向けでは、地域の観光産業の強化・発展を推し進める実務人材を確保・育成するため、令和3年度に採択した4地域(湯田川温泉観光協会、蓼科観光事業者向け「女性活躍」支援策事業化協議会、黒川温泉観光旅館協同組合、湯田中渋温泉郷人材開発協議会)において、人材の採用・定着に関する取組みをモデル事業として行った。
また、外国人材向けでは、平成31年4月に新たな在留資格である「特定技能」が創設され、宿泊業においても国内外において技能試験を実施したほか、令和2年2月に宿泊職種(接客・衛生管理作業)が技能実習制度における第2号技能実習への移行対象職種・作業へ追加された。令和3年度は、外国人材の受入促進に向けた宿泊事業者等向けセミナーや外国人材とのマッチング事業を行うなど、外国人材の受入環境整備に取り組んでいる。
(3)観光地域づくり法人(DMO)を核とする観光地域づくりの推進
観光地域のマネジメント及びマーケティングを担う観光地域づくり法人(DMO)注1を核とする観光地域づくりを推進するため、令和4年3月28日時点で311団体を登録するとともに、観光地域づくり法人に対する各種情報提供や観光地域づくり法人の体制強化、観光地域づくり法人が行う着地整備の取組みに対する支援を行った。
また、「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを実現するため、地域主体で住民理解を深めつつ、オーバーツーリズムを引き起こすことなく、観光で得られた収益を地域内で循環させることにより、地域の社会経済の活性化や文化・環境の保全・再生を図っていく。
(4)観光遺産産業化ファンド等の継続的な展開及び次世代の観光立国実現のための財源の展開
観光庁では、観光庁と包括的連携協定を締結している㈱地域経済活性化支援機構(REVIC)が、地域金融機関等と連携して組成した観光遺産産業化ファンド等も活用し、関係事業者や関係省庁、自治体と連携して、地域の観光資源の磨き上げ等を図るための取組みを行った。
また、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図る観点から、観光促進のための税として国際観光旅客税が創設された(平成31年1月7日制度開始)。財源の使途に関しては、受益と負担の関係から日本人出国者を含む負担者の納得が得られ、先進的で費用対効果が高く、地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致するものに充てることとしている。
(5)コロナ禍の訪日プロモーション
新型コロナウイルス感染症の影響により、商談会、メディア招請等の国際的な往来を伴う事業を実施できない状態が続いているが、日本政府観光局においては、ウェブサイトやSNS等による我が国の魅力や安全・安心に関する情報の効果的な発信を行うとともに、オンラインの商談会や旅行博への出展を行う等、発信方法を工夫しつつ「将来の訪日」につながる事業を実施した。
また、オリンピック・パラリンピック東京大会期間中は、広く世界に向けて日本の魅力を紹介する海外メディアを通じた番組放映や、著名アスリートを起用したプロモーション動画の配信等を実施し、海外の消費者の訪日意欲の向上につなげた。
さらに、地方部への誘客を促進するため、日本政府観光局において、地方自治体・DMO等を対象とした研修会やコンサルティングのほか、全国各地の観光コンテンツ収集やウェブサイト等による地域の情報発信等を実施した。
(6)MICE誘致の促進
新型コロナウイルス感染症により開催に大きな影響を受けたMICEの安全な再開と国際競争力の更なる強化に向けて、MICEの誘致に意欲的な地方都市に対する誘致力の強化に向けた支援を実施するとともに、官民のMICE関係者による「安全なMICEの再開と発展に向けた関係者協議会」を開催し、今後の取組みの方向性について検討した。また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた国際会議に関する実態調査を実施した。併せて、グローバル企業のビジネス活動を支える会議施設等の整備への支援に取り組んだ。
(7)ビザの戦略的緩和
新型コロナウイルス感染症の国内や諸外国・地域における感染状況等を踏まえつつ、今後のビザ緩和の実施について関係省庁と連携して検討を行うこととした。
(8)訪日教育旅行の活性化
日本政府観光局が運営する訪日教育旅行のウェブサイトを通じ情報発信を行った。
(9)観光教育の充実
子どもたちが日本及び地域への愛着と誇りを醸成し、観光の意義に対する理解を深めることを目的として、令和3年度は高等学校向けの教育プログラムを開発した。また、学校教員を中心としたワークショップを開催し、開発した教育プログラムの普及に取り組んだ。
(10)若者のアウトバウンド活性化
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、大きな影響を受けた若年層を含むアウトバウンドの段階的な回復に向けて、各国・地域における最新の感染症対策等の現地情報について情報収集を行うとともに、学校関係者、旅行業界関係者に向けた海外教育旅行に係る情報発信ツール(HP)の作成を行った。また、旅に精通した講師を学校に派遣し、若者に旅の意義や素晴らしさを伝える「若旅授業」を平成25年より実施している。令和3年度は、オンライン授業も導入し、計11回実施した。
- 注1 DMO:Destination Management/Marketing Organization