
国土交通白書 2022
第4節 交通分野における安全対策の強化
運輸安全委員会の調査対象となる事故等は、令和3年度中、航空24件、鉄道15件、船舶849件発生しており、原因究明と事故等防止・被害軽減等を目的とした調査を行っている。
令和3年度に調査を終えた航空事故等については、平成31年4月に山形空港で離陸滑走を開始した際、進行方向が左に偏向して滑走路を逸脱した重大インシデントについての調査報告書を令和3年10月に公表するなど、20件の調査報告書を公表した。
鉄道事故等については、令和2年6月に東京都葛飾区で台車に亀裂が発生した影響で、車輪の荷重バランスが崩れ、車輪がレールに乗り上がり脱線した事故についての調査報告書を4年3月に公表するなど、11件の調査報告書を公表した。
船舶事故等については、令和元年5月に濃霧により視界が制限された状況下、千葉県銚子市犬吠埼南方沖で貨物船同士が衝突し、一方が沈没して乗組員4名が死亡した事故についての調査報告書を3年12月に公表するなど、847件の調査報告書を公表した。
また、運輸安全委員会は事故等防止に関する普及啓発活動の一環として、船舶事故等については、多発海域や事故等の調査結果を電子地図に表示し検索できる「船舶事故ハザードマップ」及びスマートフォン等に対応した「船舶事故ハザードマップ・モバイル版」のほか、機関故障の部位・部品から調査報告書を検索できる「機関故障検索システム(ETSS)」を、鉄道事故等については、踏切事故防止対策に関する情報をまとめた「踏切事故を起こさないために」を運輸安全委員会ホームページに公開している。令和3年4月には、ETSSに加えて、小型船舶操縦者向けに「小型船舶機関故障検索システム」を新たに公開した。
令和3年6月に公布された航空法等の一部を改正する法律(令和3年法律第65号)により運輸安全委員会設置法(昭和48年法律第113号)が改正され、運輸安全委員会の調査対象に無人航空機の事故等が新たに加わることとなったことに伴い、専門知識を有する人材を調査官に採用するなど体制の整備を進めた。
令和4年4月23日、北海道知床沖で乗員乗客26名を乗せた遊覧船が沈没するという痛ましい海難事故が発生した。事故直後より、国土交通省本省に加え、現地においても事故対策本部を設置し、対応にあたっている。また、運輸安全委員会が事故原因の調査を行うとともに、公共交通事故被害者支援室において相談窓口を開設するなど被害者家族への支援を丁寧に実施している。
本事故を受け、海上保安庁の救助・救急体制の強化を図るとともに、同年4月28日に国土交通省に設置した「知床遊覧船事故対策検討委員会」において、小型船舶を使用する旅客輸送における安全対策を法的規制のあり方も含め、総合的に検討し、検討結果を踏まえ、必要な対応を図っていくこととしている。(令和4年5月末現在)

資料)国土交通省