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国土交通白書 2022

第7節 地球環境の観測・監視・予測

■1 地球環境の観測・監視

(1)気候変動の観測・監視

 気象庁では、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの状況を把握するため、大気中のCO2を国内3地点で、北西太平洋の洋上大気や表面海水中のCO2を海洋気象観測船で観測しているほか、航空機を利用して北西太平洋上空のCO2等を観測している。また、世界気象機関(WMO)温室効果ガス世界資料センターとして、世界中の温室効果ガス観測データの収集・提供を行っている。

 また、気温、降水量、海面水温・水位等、地球温暖化に伴う気候変動の観測・監視を行い、これら観測結果等を「気候変動監視レポート」で毎年公表しているほか、文部科学省と共に我が国における気候変動の観測事実と将来予測をまとめた報告書「日本の気候変動2020」(令和2年12月公表)を取りまとめ、気候変動の現状等を公表している。

図表Ⅱ-8-7-1 日降水量200mm以上の年間日数
図表Ⅱ-8-7-1 日降水量200mm以上の年間日数

(2)異常気象の観測・監視

 気象庁は、我が国や世界各地で発生する異常気象を監視して、極端な高温・低温や多雨・少雨などが観測された地域や気象災害について、定期及び臨時の情報を取りまとめて発表している。また、社会的に大きな影響をもたらした異常気象が発生した場合は、特徴と要因、見通しをまとめた情報を随時発表している。

 さらに、気象庁では、アジア太平洋地域の気候情報提供業務支援のため、世界気象機関(WMO)の地区気候センターとしてアジア各国の気象機関に対し、異常気象の監視・解析等の情報を提供するとともに、研修や専門家派遣を通じて技術支援を行っている。

(3)静止気象衛星による観測・監視

 気象庁は、静止気象衛星「ひまわり8号・9号」の運用を継続して実施している。「ひまわり8号・9号」の2機体制によって長期にわたる安定的な観測体制を確立し、東アジア・西太平洋地域の広い範囲を、24時間常時観測している。これらの衛星では、台風や集中豪雨等に対する防災機能の向上に加え、地球温暖化をはじめとする地球環境の監視機能を世界に先駆けて強化している。

(4)海洋の観測・監視

 海洋は、大気と比べて非常に多くの熱を蓄えていることから地球の気候に大きな影響を及ぼしているとともに、人類の経済活動により排出されたCO2を吸収することによって、地球温暖化の進行を緩和している。このことから、地球温暖化をはじめとする地球環境の監視のためには、海洋の状況を的確に把握することが重要である。

 気象庁では、国際的な協力体制の下、海洋気象観測船により北西太平洋において高精度な海洋観測を行うとともに、人工衛星や海洋の内部を自動的に観測する中層フロート(アルゴフロート)によるデータを活用して、海洋の状況を監視している。

 その結果については、気象庁ウェブサイト「海洋の健康診断表」により、我が国周辺海域の海水温・海流、海面水位、海氷等に関する情報とともに、現状と今後の見通しを解説している。

 海上保安庁では、日本周辺海域の海況を自律型海洋観測装置(AOV)、漂流ブイ及び海洋短波レーダーにより常時監視・把握するとともに、観測結果を公表している。また、日本海洋データセンターにおいて、我が国の海洋調査機関により得られた海洋データを収集・管理し、関係機関及び一般国民へ提供している。

図表Ⅱ-8-7-2 海洋気象観測船による地球環境の監視
図表Ⅱ-8-7-2 海洋気象観測船による地球環境の監視

冬季の東経137度に沿った海域での表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)(北緯7度~33度での平均)の長期変化図。10年あたり0.019の割合でpHが低下しており、海洋酸性化が進行しています。
資料)気象庁

図表Ⅱ-8-7-3 気象庁ウェブサイトで公表している「海洋の健康診断表」の例
図表Ⅱ-8-7-3 気象庁ウェブサイトで公表している「海洋の健康診断表」の例

【日別海面水温分布図】
・人工衛星とブイ・船舶による観測値を用いて解析した海面水温の分布図をウェブサイトに掲載し、毎日更新している。
・海面水温は、図の右にあるスケールで色分けしている。海氷のために海面水温データがない海域は灰色の網掛けで示している。
 (令和4年1月17日の海面水温分布図)
日本近海の海面水温は、東シナ海を北上してトカラ海峡から日本の南を関東の東まで流れる黒潮や、千島列島に沿って南下して日本の東まで流れる親潮といった海流などの影響を受けて複雑な分布を示す。
資料)気象庁

(5)オゾン層の観測・監視

 気象庁では、オゾン・紫外線を観測した成果を毎年公表しており、それによると世界のオゾン量は、2000年以降ではわずかな増加がみられるが、1970年代と比較すると少ない状態が続いている。

 また、国民の有害紫外線対策に資するため、気象庁ウェブサイト「紫外線情報」において、現在の紫外線の強さ(紫外線解析値)を毎時間提供し、当日または翌日の紫外線の強さの予測(紫外線予測値)を毎日提供している。紫外線の強さには、有害紫外線の人体への影響度を示す指標(UVインデックス)を用いている。

(6)南極における定常観測の推進

 国土地理院は、南極地域観測隊の活動及び地球環境変動の研究や測地測量に関する国際的活動等に寄与するため、南極地域の基準点・水準測量等の測地観測、GNSS連続観測、地形図の作成・更新、衛星画像図の整備等を実施している。

 気象庁は、昭和基地でオゾン、日射・赤外放射、地上、高層等の気象観測を継続して実施しており、観測データは南極のオゾンホールや気候変動等の地球環境の監視や研究に寄与するなど、国際的な施策策定のために有効活用されている。

 海上保安庁は、海底地形調査を実施しており、観測データは、海図の刊行、氷河による浸食や堆積環境等の過去の環境に関する研究等の基礎資料として役立てられている。また、潮汐観測を実施し、地球温暖化と密接に関連している海面水位変動の監視にも寄与している。