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国土交通白書 2022

第3節 国際標準化に向けた取組み

(1)自動車基準・認証制度の国際化

 我が国は、安全で環境性能の高い自動車を早期に普及させるため、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)等に積極的に参加し、安全・環境基準の国際調和を推進するとともに、その活動を通じ、高度な自動運転技術などの優れた日本の新技術を国際的に普及させていくこととしている。このような活動を推進するため、具体的には、①日本の技術・基準の戦略的国際標準化、②国際的な車両認証制度(IWVTA)の実現、③アジア諸国の国際基準調和への参加促進、④基準認証のグローバル化に対応する体制の整備、の4つの柱を着実に実施し、自動車基準認証制度の国際化を推進している。

(2)鉄道に関する国際標準化等の取組み

 欧州が欧州規格の国際標準化を積極的に推進する中、日本の優れた技術が国際規格から排除されると、鉄道システムの海外展開に当たって大きな障害となる可能性があるなど、鉄道分野における国際競争力へ大きな影響を与えることから、鉄道技術の国際標準化を推進することが重要である。このため、鉄道関係の国際規格を一元的に取り扱う組織である公益財団法人鉄道総合技術研究所「鉄道国際規格センター」において、鉄道の更なる安全と鉄道産業の一層の発展を図るべく、活動を行っている。

 このような取組みの結果、国際標準化機構(ISO)の鉄道分野専門委員会(TC269)では議長として国際標準化活動を主導し、国際電気標準会議(IEC)の鉄道電気設備とシステム専門委員会(TC9)と併せ、それぞれにおける個別規格の提案・審議等の国際標準化活動で中心的な役割を担い、成果を上げている。引き続き、これら国際会議等における存在感を高め、鉄道技術の国際標準化の推進に取り組むこととしている。

 また、国内初の鉄道分野における国際規格の認証機関である独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所は、鉄道認証室設立以来、着実に認証実績を積み重ね、鉄道システムの海外展開に寄与している。

(3)船舶や船員に関する国際基準への取組み

 我が国は、海運の環境負荷軽減や安全性向上を目指すとともに、我が国の優れた省エネ技術等を普及するため、国際海事機関(IMO)におけるSOLAS条約注2、MARPOL条約注3、STCW条約注4等による基準の策定において議論を主導している。

 また、海上保安庁は、国際水路機関(IHO)での海図や水路書誌、航行警報等の国際基準に関する議論に参画している。さらに、船舶交通の安全を確保するとともに、船舶の運航能率のより一層の増進を図るため、国際航路標識協会(IALA)e-Navigation委員会において新たな海上データ通信方式であるVDESの国際標準化に関する議論を主導している。

(4)土木・建築分野における基準及び認証制度の国際調和

 土木・建築・住宅分野において、外国建材の性能認定や評価機関の承認等の制度の運用や、JICA等による技術協力等を実施している。また、設計・施工技術のISO制定に参画するなど、土木・建築分野における基準及び認証制度の国際調和の推進に取り組んでいる。さらに、我が国の技術的蓄積を国際標準に反映するための取組みを支援するとともに、国際標準の策定動向を考慮した国内の技術基準類の整備・改定等について検討を進めている。

(5)高度道路交通システム(ITS)の国際標準化

 効率的なアプリケーション開発や国際貢献、国内の関連産業育成のため、ISO等の国際標準化機関におけるITS技術の国際標準化を進めている。

 特にISOのITS専門委員会(ISO/TC204)に参画し、ITS関連サービスの役割機能モデルに関する標準化活動を行っている。また、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の自動運転に係る基準等について検討を行う各分科会等の共同議長等又は副議長として議論を主導している。令和2年6月に成立した自動運行装置(レベル3)や自動車のサイバーセキュリティに関する国際基準について、より高度な自動運転技術に関する国際基準の策定等を進めている。

(6)地理情報の標準化

 地理空間情報を異なる地理情報システム(GIS)間で相互利用する際の互換性を確保することなどを目的として、ISOの地理情報に関する専門委員会(ISO/TC 211)における国際規格の策定に積極的に参画している。あわせて、国内の地理情報の標準化に取り組んでいる。

(7)技術者資格に関する海外との相互受入の取決め

 APECアーキテクト・プロジェクト、APECエンジニア・プロジェクトでは、一定の要件を満たすAPEC域内の建築設計資格者、構造技術者等に共通の称号を与えている。APECアーキテクト・プロジェクトでは、我が国は、オーストラリア、ニュージーランドとの二国間相互受入の取決めの締結、APECアーキテクト中央評議会への参加等を通じ、建築設計資格者の流動化を促進している。

(8)下水道分野

 我が国が強みを有する下水道技術の海外展開を促進するため、現在、「水の再利用」に関する専門委員会(ISO/TC282)、「汚泥の回収、再生利用、処理及び廃棄」に関する専門委員会(ISO/TC275)、「雨水管理」に関するワーキンググループ(ISO/TC224/WG11)等へ積極的・主導的に参画している。

(9)物流システムの国際標準化の推進

 コールドチェーン物流への需要の拡大が見込まれるASEAN等を念頭に置いて、我が国の質の高いコールドチェーン物流サービスの国際標準化及び普及を推進している。

 具体的には、日本式コールドチェーン物流サービス規格(JSA-S1004)のASEAN各国への普及を推進するため、令和2年度に策定した普及戦略に基づき、ASEAN各国のアクションプランの策定やセミナーの開催等の取組みを実施している。令和4年2月には、マレーシア政府との共催により、現地物流事業者等を対象とした普及啓発セミナーを開催したところである。また、日本提案により3年1月に国際標準化機構(ISO)に設置されたコールドチェーン物流に関する技術委員会(TC315)において、我が国は議長国として、コールドチェーン物流分野の国際標準化に向けた議論を主導している。

(10)港湾分野

 日ベトナム間で、平成26年に署名し、29年及び令和2年に更新した「港湾施設の国家技術基準の策定に関する協力に係る覚書(MOC)」に基づき、我が国のノウハウを活用した、ベトナムの国家技術基準の策定協力を実施しており、令和2年3月までに、8項目の国家基準の策定に至った。また、ベトナム政府からの要請に基づき、令和4年までに新たな設計基準(防波堤、浚渫・埋立)について、国家基準原案の作成を行うなど、幅広い分野における取組みを推進している。

  1. 注2 海上における人命の安全のための国際条約
  2. 注3 船舶による汚染の防止のための国際条約
  3. 注4 船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約