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国土交通白書 2022

第2節 国際交渉・連携等の推進

■3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組み

(1)国土政策分野

 アジア各国等において、政府関係者、国際機関等様々なステークホルダーをネットワーク化し、会議、ウェブサイト等により国土・地域政策に係る課題や知見を共有する仕組みである「国土・地域計画策定・推進支援プラットフォーム(SPP)」の第4回会合を、令和4年2月にオンライン開催した。本会合では、「スマートリージョンの形成と防災・国土強靱化によるSDGsの達成とニュー・アーバン・アジェンダの実現に向けて」をメインテーマとし、テーマ1ではスマートリージョンが果たすことのできる役割を議論し、テーマ2では国土のレジリエンスを高める防災戦略について議論した。また、タイ公共事業都市計画省の求めに応じ、同国の国土計画に関する素案について、オンライン会合を3回開催した。

(2)都市分野

 国際的な不動産見本市である「MIPIM」(令和4年3月フランス・カンヌ開催)において、日本の都市開発・不動産市場のPRを行い、シティセールス等を図っている。タイでは、同国運輸省の要請を受け、バンスー中央駅周辺都市開発計画の実現に向けて、現地JICA専門家を通じて技術協力を行っている。令和3年度には、Smart JAMP(Smart City supported by Japan ASEAN Mutual Partnership:日ASEAN 相互協力による海外スマートシティ支援策)に基づき,令和2年に JICA が作成したバンスー中央駅周辺整備におけるスマートシティ構想のもと、バンコクのスマートシティ開発の推進を図るべく、今後の事業推進体制や実行計画等の検討を実施した。

 カンボジアでは、平成31年2月の第1回日カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォーム会合において、両国政府の連携の下での両国企業による案件形成が決定されたパイロットプロジェクトについて、資金計画と連動した事業性のある開発計画案を策定し、引き続き事業化に向け検討している。インドネシアでは、独立行政法人都市再生機構が、同国の国鉄(KAI)とMRTを運営するジャカルタ首都特別州の州営企業(MRTJ)の合弁会社であるジャカルタ首都圏交通統合公社(MITJ)との間で公共交通指向型開発(TOD)プロジェクトの実現に係る協力覚書を交換した。

 また、開発途上国の都市における上流段階での計画策定等に係る連携から下流段階の具体の都市開発プロジェクトの実施まで着実につなげていくことを目指し、独立行政法人国際協力機構と独立行政法人都市再生機構との間で連携強化の覚書が交換された。この連携強化によって、開発途上国におけるより良好な都市環境整備と本邦企業が関与可能な都市開発案件等のプロジェクトの円滑な組成を促進していく。

 さらに、我が国企業の海外展開促進を図るため、都市開発海外展開支援事業を活用し、独立行政法人都市再生機構による調査やセミナー等の取組み、J-CODE(海外エコシティエコシティプロジェクト協議会)による企業マッチング等の取組みを支援している。

(3)水分野

 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。令和4年4月には、熊本市で第4回アジア・太平洋水サミットの開催が予定されている。同サミットは、アジア太平洋地域の各国政府首脳級や国際機関の代表などが参加し、アジア太平洋地域の水に関する諸問題について、幅広い視点から議論を行うものであり、本サミットの円滑な実施のため、関係各省が連携して準備を進めている。

 それに加え、水資源分野では、独立行政法人水資源機構を事務局とし関係業界団体や関係省庁からなる「水資源分野における我が国事業者の海外展開活性化に向けた協議会」を活用し、相手国のニーズや課題に対応し治水・利水機能の向上を図るダム再生事業の案件形成に向けた調査を行うなど、水資源分野の案件形成に向けた取組みを実施した。また、アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理(IWRM)の普及・促進に貢献している。このほか、アジアにおける汚水管理の意識向上等を目的としたアジア汚水管理パートナーシップ(AWaP)を平成30年に設立し、国連サミットで採択されたSDGs(ターゲット6.3「未処理汚水の割合の半減」)の目標達成に貢献するための協力関係を参加国・国際機関及び日本下水道事業団を含む関係機関と構築した。令和2年度は、参加国が自国の下水道に関する現状や課題、取組み等を取りまとめた年次レポートの共有を図るとともに、令和3年3月に運営委員会を書面審議で開催し、同年8月に総会を開催することを確認した。

(4)防災分野

 世界の水関連災害による被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、相手国の防災課題と日本の防災技術をマッチングさせるワークショップ「防災協働対話」をインドネシアやベトナム、ミャンマー、トルコで実施している。現在、既存ダムを有効活用するダム再生や危機管理型水位計などの本邦技術を活用した案件形成を進めているところである。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、統合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)モデル等の開発、リスクマネジメントの研究、博士課程及び修士課程を含む人材育成プログラムの実施、UNESCOやアジア開発銀行、及び世界銀行のプロジェクトへの参画及び国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局としての活動等を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。

 また、砂防分野においては、イタリア、韓国、スイス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会議を開催しているほか、JICA専門家の派遣等や研修の受入を通じて土砂災害対策や警戒避難、土地利用規制などの技術協力を行っている。

(5)道路分野

 世界道路協会(PIARC)の各技術委員会等に継続的に参画し、国際貢献に積極的に取り組んでいる。令和2年からは4年間の戦略計画がスタートし、1)道路行政、2)モビリティ、3)安全性と持続可能性、4)レジリエントなインフラストラクチャーの4つの戦略テーマの下に17の技術委員会と6つのタスクフォースを設置して、加盟国による調査研究が進められている。

 令和4年2月には第16回冬期サービスとレジリエンスに関する世界大会(カルガリー冬期大会)がオンラインで開催され、大会テーマ「冬期道路サービス」及び「レジリエンス」に関する多くのセッション・展示が行われた。日本からも、斉藤国土交通大臣がビデオレターにて日本の優れた取組みを紹介したほか、展示ブースにおいて「高度技能が必要な除雪作業の自動化」「再生可能エネルギーを利用したロードヒーティング」等、日本が誇る最新の道路技術・政策を紹介した。

 また、日ASEAN交通連携の枠組みの下、ASEAN地域における橋梁維持管理の質の向上を目指した「橋梁維持管理技術共同研究プロジェクト」に取り組んでおり、令和4年1月、同年3月に専門家会合を開催した。

(6)住宅・建築分野

 国際建築規制協力委員会(IRCC)、日米加建築専門家会合(BEC)等への参加など、建築基準等に係る国際動向について関係国間での情報交換を行った。

 また、カンボジアからの要請を受け、建築物の構造安全や火災安全に関する建築技術基準の策定支援に取り組んでいる。さらに、国立研究開発法人建築研究所国際地震工学センター(IISEE)では地震学・地震工学・津波防災の研修を実施し、開発途上国の研究者、技術者の養成を通じて世界の地震防災対策の促進に貢献している。

(7)鉄道分野

 令和3年度も、インド高速鉄道に関する合同委員会や日英鉄道協力会議のオンライン開催、JICA専門家の派遣を通じた技術協力など、二国間での連携に向けた取組みを実施している。

(8)自動車分野

 平成27年の第13回日ASEAN交通大臣会合にて承認された、「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関する日ASEAN新協力プログラム」に基づく取組みとして、令和3年12月に第12回アジア地域官民共同フォーラムを開催し、アジア地域における基準調和・相互認証活動、交通安全・環境保全施策などについて情報交換を行った。また、同フォーラムでは令和4年1月から開始されるASEAN域内の自動車部品等の相互承認協定の円滑な運用に向け、日本が官民で最大限支援するとともに、アジア地域での自動車の安全・環境対策に引き続き各国が協力して取り組むことに合意した。加えて、これに合わせて政府実務者級会合を行い、自動車分野のカーボンニュートラルに向けた取り組み等についても意見交換を行った。

(9)海事分野

 海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間協力、CSG会議(海運先進国当局間会議)や日ASEAN交通連携を通じた多国間協力の取組み等を実施している。

 令和3年5月及び11月のCSG 会議において、我が国から、米国での港湾混雑による世界的なコンテナ輸送の需給逼迫、特定国の貿易阻害措置(米国産出LNG輸送に係る米国籍船使用義務化法案や危険物船等が中国領海を通航する場合に事前通報を義務付ける中国の法改正)、新型コロナ禍での円滑な船員交代、パナマ運河の新料金体系等について問題提起を行い、海運先進国間の連携を呼びかけた。

 我が国は、ASEAN等新興国・途上国に対する海上保安能力向上や公共交通インフラの整備としてODAを通じた船舶の供与を行っており、令和4年3月末現在、ベトナム、フィリピン向け巡視船やサモア向け貨客船など、6か国に対し計14隻の船舶の供与に向けたODA事業が進行中である。この他、平成30年3月より、マラッカ・シンガポール海峡の共同水路測量調査事業の現地調査が実施されている。

 また、日ASEAN交通連携協力プロジェクトの一環として、日本とASEANにおけるクルーズ振興に取り組んでいる他、ASEAN域内の内航船等において低環境負荷船を普及促進させるため、「ASEAN低環境負荷船普及戦略」に基づき、令和3年10月の海上交通WGにおいて、ASEAN各国の具体的取組等を共有した。

 その他、洋上浮体技術を活用した海洋施設撤去の事業化に向けた取組み、海事分野の人材育成支援等、我が国の優れた海事技術の海外展開にも取り組んでいる。

(10)港湾分野

 北東アジア港湾局長会議やAPEC交通WGを通じて、港湾行政に関する情報交換や、クルーズの促進等を実施している。また、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等との協調を重視し、政府自らその会員となり、各国の政府関係者等との交流を行うとともに、各種研究委員会活動に積極的に参画している。特にPIANC、IAPHにはいずれも日本から副会長を輩出している。コロナ禍においても、リモートで活発に実施されている取組みに積極的に参画し、我が国の質の高い港湾技術の発信や、世界の様々な港湾技術に関する最新の知見を得るほか、技術基準等の海外展開・国際標準化の推進にも積極的に取り組んでいる。

 さらに、令和2年10月には、海運業界の脱炭素化を支援する将来の船舶燃料に対応するための港湾間協力に関する覚書をシンガポール海事港湾庁・ロッテルダム港湾公社・国土交通省港湾局の3者で締結し、港湾間の協力ネットワークへの参加を通じて、船舶燃料としてクリーンな代替燃料の普及促進に取り組んでいる。また、令和3年4月の日米首脳共同声明の別添文書において、日米両国がカーボンニュートラルポート(CNP)について協力することが明記されるなど、CNPの国際協力も開始している。

 加えて、令和3年10月には、日本とオランダ間の港湾分野における包括的な協力に関する覚書をオランダ社会基盤・水管理省との間で締結した。

(11)航空分野

 ベトナムにおいて、同国民間航空局(CAAV)より要請を受けている航空機騒音対策に係る技術協力を実現するため、令和3年8月、CAAVとのオンライン会議を開催し、ニーズ把握のための意見交換等を行った。

(12)物流分野

 日中韓物流大臣会合における合意に基づき、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の加盟国・加盟港湾の拡大等、日中韓の物流分野における協力の推進について中韓と議論を進めた。

 令和3年8月には、第8回日中韓物流大臣会合(テレビ会議)を開催し、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大や世界的な気候変動などの影響を踏まえ、三国間の強靱で円滑かつ環境にやさしい物流の推進に向けた連携強化を確認した。

 また、ASEANとの関係では、コールドチェーン物流サービス規格に関する適切な認証体制の整備を促進するため、認証機関が行うべき手続きや審査の際に確認すべき項目をとりまとめた「日ASEANコールドチェーン物流認証審査ガイドライン」が令和3年11月の日ASEAN交通大臣会合にて承認された。加えて、同年9月にフィリピンとの間で物流政策対話・ワークショップ、4年1月にはマレーシアとの間で物流政策対話を開催したほか、同年2月には、マレーシアの現地物流事業者等を対象としたコールドチェーンの普及啓発に関するセミナーを開催し、日本及びマレーシア政府や現地の日系物流事業者等の取組みに関する紹介等を行った。

(13)地理空間情報分野

 ASEAN地域等に対し、電子基準点網の設置・運用支援等を行っている。具体的にはフィリピン及びインドネシアにおいて、電子基準点を用いた高精度測位の利活用に関するパイロットプロジェクトを実施した。また、令和4年1月には、UN-GGIM防災WG及びUN-GGIM-APと共催で「Geospatial Capacity Development Conference on GNSS Applications and DRR」を開催(オンライン)し、4日間で約400名の参加者を得て各国の電子基準点網の運用支援に貢献した。

(14)気象・地震津波分野

 気象庁は、世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや予測結果等の国際的な交換や技術協力により各国の気象災害の防止・軽減に貢献しており、令和3年11月にアジア各国の国家気象水文機関を対象に気象レーダーの防災気象情報への活用等に関するワークショップをオンラインで開催した。

 また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供し、関係各国の津波防災に貢献している。

 更に、国際協力機構(JICA)等と協力して、開発途上国に対し気象、海洋、地震、火山などの様々な分野で研修等を通した人材育成支援・技術協力を行っている。

(15)海上保安分野

 海上保安庁は、世界海上保安機関長官級会合、北太平洋海上保安フォーラム、アジア海上保安機関長官級会合といった多国間会合や、二国間での長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。

 また、シーレーン沿岸国における海上保安能力向上支援のため、国際協力機構(JICA)や公益財団法人日本財団の枠組みにより、海上保安庁モバイルコーポレーションチーム(MCT)や専門的な知識を有する海上保安官を専門家として各国に派遣しているほか、各国の海上保安機関等の職員を日本に招へいし、能力向上支援に当たっている。

 昨今、新型コロナウイルス感染症拡大により、諸外国との往来が制限されたため、MCTによるオンライン研修等を実施していたが、令和4年1月から被支援国の感染状況にかんがみ可能な範囲で現地への派遣を再開した。

 また、海上保安政策に関する修士レベルの教育を行う海上保安政策プログラムを開講し、アジア諸国の海上保安機関職員を受け入れるなどして各国の連携協力、認識共有を図っている。

 このほか、海上保安庁は国際水路機関(IHO)の委員会等における海図作製に関する基準の策定、コスパス・サーサット計画における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の委員会等におけるVDESの開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへの職員の派遣など、国際機関へ積極的に参画している。

図表Ⅱ-9-2-1 ジブチ沿岸警備隊に対する能力向上支援
図表Ⅱ-9-2-1 ジブチ沿岸警備隊に対する能力向上支援