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国土交通白書 2022

2 気候変動に伴う気象災害リスクの高まり

コラム 水害発生時における浸水推定図の作成について

 国土地理院では、台風や豪雨発生時に、災害対策等に必要な基礎資料として、浸水や崩壊地等の被害エリアに関する情報を公開している。

 これは、地図など国土に関する地理空間情報を提供する基本業務に加え、災害対策基本法の指定行政機関として、明治期以降100年以上にわたる測量技術や地形・土地の変化を把握する技術を防災・減災対策に役立てている。

 近年、豪雨災害が激甚化・頻発化しており、洪水ハザードマップなどにより、災害発生前に、住まいの地域の災害リスク情報を踏まえ、防災・減災対策に役立てることが必要であるが、発災直後に国や被災自治体等が救命活動を含む応急対応やライフラインなどの復旧活動を適切に計画・実施するためには、どの地域がどの程度浸水したかを迅速に把握することも重要である。

 このような中、国土地理院は、「平成30年7月豪雨」以降、発災後の浸水エリアを示す手段として、浸水範囲における水深を色の濃淡で表現した「浸水推定図」の公表に取り組んでいる。

 従来、「推定浸水範囲」という、浸水した範囲の縁を線で示す地図を、空中写真や国土交通省の防災ヘリ画像から得られる情報を元に作成し、当該地図が被災自治体の排水活動等に役立てられていたものの、天候等により着手までに時間がかかる課題があった。

 「平成30年7月豪雨」では、悪天候が続き、「推定浸水範囲」の作成に必要となる空中写真の取得に日数を要したため、若手職員の発案により、SNS情報を含む被災地の画像と標高データを用いて、迅速に浸水の範囲と深さを推定し、視覚的に図示する「浸水推定図」を新たに発信した。

推定浸水範囲(左)と浸水推定図(右)
推定浸水範囲(左)と浸水推定図(右)

資料)国土地理院

 以降、「浸水推定図」を、大規模水害時に発災直後の被災自治体に向けて発信しており、「令和2年7月豪雨」時には、7月3日からの大雨による浸水推定として、国土地理院が7月4日10時までに収集した情報から浸水推定図を7月4日16時に発信した。当該地図は、第一報としての時点情報のため、浸水範囲が必ずしも正確ではない可能性について留意すべき旨の注釈を伴いつつ、被災自治体における被害エリアの情報収集に当たり、おおむねの浸水被害状況を視覚的に把握し、応急対応の判断に役立てる目的で発信した。また、2021年8月の大雨の際にも浸水推定図を発信した。

 「浸水推定図」は、これまで更新してきた標高データとSNS画像との組合せによる新たな主題図であるが、気候変動により激甚化・頻発化する災害への迅速な対応のため、国土地理院は今後とも実社会に真に役立つ地図情報の提供等に取り組んでいく。

「令和2年7月豪雨」による浸水推定図
「令和2年7月豪雨」による浸水推定図

資料)国土地理院