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国土交通白書 2022

3 気象災害リスクへの適応策

 気候変動による気象災害リスクに対応するため、脆弱性に対応するインフラ計画(治水計画、高潮対策)や曝露にも対応するハード・ソフト一体となった流域治水の取組みなどの防災・減災対策の重要性が増大している。

(気候変動を考慮した治水計画・高潮対策等)

 気候変動の影響による将来の降雨量の増大を考慮して治水計画を見直し、堤防整備や河道掘削、ダム、遊水池等の整備を加速化するとともに、現況施設能力や河川の整備の基本となる洪水の規模を超える洪水に対しても氾濫被害をできるだけ軽減するよう、対策を推進することが重要である。

図表Ⅰ-0-1-9 気候変動の影響を踏まえた河川整備
図表Ⅰ-0-1-9 気候変動の影響を踏まえた河川整備

資料)国土交通省

 また、激甚化・頻発化する土砂災害による被害を防止、軽減する砂防関係施設の整備をすることや、高潮・波浪等の災害から国民の生命・財産を守るべく、気候変動の影響を踏まえた海岸保全基本計画への見直しを推進し、堤防、護岸、離岸堤、津波防波堤等の海岸保全施設の新設、改良等による対策を進めるとともに、潮位観測結果や気象情報等の提供を強化していくことが重要である注15

図表Ⅰ-0-1-10 高潮対策(護岸の嵩上げ・補強)
図表Ⅰ-0-1-10 高潮対策(護岸の嵩上げ・補強)

資料)国土交通省

(水災害リスクの増大への対応)

 気候変動による水災害リスクの増大に対応するために、集水域と河川区域のみならず、氾濫域も含めてひとつの流域ととらえ、流域に関わるあらゆる関係者により、地域特性に応じて、ハード・ソフトの両面から流域全体で治水対策に取り組む「流域治水」の推進が重要である注16

図表Ⅰ-0-1-11 あらゆる関係者が協働して行う「流域治水」
図表Ⅰ-0-1-11 あらゆる関係者が協働して行う「流域治水」

資料)国土交通省

 また、曝露への対策として、氾濫域における土地利用や住まい方についての対応も必要である。例えば、災害リスクを抱えた地域において発災前の段階からより安全なエリアへの住居や施設の移転、人口動態や土地利用等を踏まえた居住誘導、立地適正化計画の防災指針に基づく居住の安全性強化等の防災対策を推進し、安全なまちづくりを促進していくことが重要である。

 さらに、被害の軽減のため、浸水想定区域図やハザードマップの水害リスク情報の空白域解消に取り組むほか、浸水範囲と浸水頻度の関係をわかりやすく図示した「水害リスクマップ(浸水頻度図)」を新たに整備し、水害リスク情報の充実を図ることで、防災・減災のための土地利用等を促進する。また、このような水害リスク情報の提供を通じて、民間企業における「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)注17への対応等の気候変動リスク開示の取組みを支援する。

図表Ⅰ-0-1-12 水害リスクマップ(浸水頻度図)
図表Ⅰ-0-1-12 水害リスクマップ(浸水頻度図)

資料)国土交通省 

 このように、気候変動による災害の激甚化・頻発化に対して、多くの対策が必要であり、国土交通省では、災害による被害を最小限とするべく、各種の取組みを総合的かつ横断的に進めている。例えば、「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」注18により、関係者間の連携を強化した取組みを一層強化しているほか、流域治水の取組みをさらに加速するため、関係省庁の緊密な連携・協力のもと、流域治水の推進に資する連携施策等について「流域治水推進行動計画」注19としてとりまとめた。

  1. 注15 高潮等の具体的な取組みについては、第Ⅱ部第7章第2節2(4)参照。
  2. 注16 流域治水の具体的な取組みについては、第Ⅱ部第7章第2節1(2)参照。
  3. 注17 TCFDについては、第Ⅰ部第1章第2節3(2)参照。
  4. 注18 【関連リンク】総力戦で挑む防災・減災プロジェクト
    出典:国土交通省
    URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/sosei_point_tk_000034.html
  5. 注19 【関連リンク】流域治水の推進に向けた関係省庁実務者会議
    出典:国土交通省
    URL:https://www.mlit.go.jp/river/kasen/suisin/renkei001.html