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国土交通白書 2023

第1節 直面する課題とデジタル化の役割

コラム 3D都市モデルを活用した避難行動支援(PLATEAU、国土交通省)

 洪水等の災害時、住民が命を守る行動をとるにあたっては、早めの避難や被災状況に応じた適切な避難ルートの選択等が必要であるが、地域の災害リスクと自ら取るべき行動を一体的に認識することは容易ではない。

 国土交通省では、時系列ごとの浸水の広がり、浸水リスクを考慮した避難ルート等を3D都市モデル上に分かりやすく可視化するとともに、算出された浸水範囲と避難ルートをAR空間で体験するアプリケーションなどの開発を行い、住民の避難行動の変容を促進する実証事業を推進している。

 例えば、東京都板橋区は、荒川の破堤により、破堤後30分未満で浸水5mを超え、さらにその後2週間以上浸水が継続すると想定されるエリアを含む、水害リスクの高い地域である。氾濫発生時には、浸水により避難ルートが遮断され、建物が孤立する可能性もあるため、住民が水害から身を守るためには、想定されるリスクとそれに応じた避難行動を事前によく理解し、発災時に的確に行動できるよう備えておくことが重要である。この地域の住民に対して、3D都市モデルを用いた「洪水による浸水の広がりの時系列での可視化」、「時系列浸水推移と連動した避難ルート検索システム」及び「避難ルートと最大浸水深をAR空間に表現するアプリケーション」を体験してもらい、建物から避難場所への避難ルートが時間経過によって変化していく様子を可視化することで、防災意識の向上を図っている。

3D都市モデルを活用した避難行動支援

このシステムは、洪水による浸水の広がりを時系列で可視化するものであり、建物から避難場所への最短避難ルート(赤線で示されたルート)が、浸水エリアの拡大とともに時間経過によって変わっていく様子をわかりやすく表現できる。

 また、熊本県熊本市は、2016年の熊本地震の際、渋滞により車での避難に課題が生じた経験を踏まえ、浸水被害予測や避難シミュレーションに加え、渋滞状況を加味し、車又は徒歩の別に避難に要する時間やルートを示すシステムを開発し、住民に体験してもらうことで、防災意識の向上を図っている。

3D都市モデルを活用した避難行動支援

このシステムでは、住民が避難開始地点・時刻、避難先や徒歩・車の別等を指定することで、浸水エリアや交通渋滞等の状況が動的に再現された避難行動の軌跡を視覚的に体験することができ、被災リスクの有無などを確認することが可能となる。

資料)国土交通省

【関連リンク】

PLATEAU by MLIT URL:https://www.mlit.go.jp/plateau/