国土交通白書 2023

（１） デジタル化をめぐる我が国の現状

（デジタル化の動向）

　我が国におけるデジタル化は、他の主要先進国より相対的に後れをとっているとの指摘がある。例えば、スイスのビジネススクール国際経営開発研究所（IMD）が発表した2021年の世界デジタル競争力ランキング^注1によると、我が国は調査対象国63カ国中28位、主要先進７カ国中６位である。主要先進７カ国では、一人当たりGDPと世界デジタル競争力ランキングに相関がうかがえ、デジタル化が進んでいる国ほど一人当たりGDPが高い傾向にある。国際競争力の観点からも、デジタル化の一層の推進が必要である。

資料）IMD「世界デジタル競争力ランキング（2021年）」、世界銀行ウェブサイトより国土交通省作成

（行政手続のデジタル化の動向）

　デジタル社会の形成にあたっては、行政手続のデジタル化の推進が必要不可欠である。経済協力開発機構（OECD）によると、国の行政手続のオンライン利用率（公的機関のウェブサイトからオンラインの申請フォームに記入・提出した個人の割合）は、OECD諸国等で回答があった30カ国の中で日本が最下位（7.3％）となっており、改善の余地が残されていることがうかがえる。

（注）行政手続のオンライン利用率とは、公的機関のウェブサイトからオンラインの申請フォームに記入・提出した個人の割合。

資料）内閣府「令和２年度年次経済財政報告」

（デジタル化を支えるIT投資・IT人材の動向）

　IT投資を見ると、主要先進国ではIT投資が2000年以降増加傾向にあるのに対し、我が国は横ばいで推移している。また、IT資本の生産性の推移も主要先進国と比べ低い水準にとどまっており、IT投資を付加価値向上に十分結び付けられていない可能性がうかがえる。

　また、就業者に占めるIT人材の割合を見ると、主要先進国と比べ我が国は低い水準にあり、我が国のIT人材の確保を図ることが重要である。

（注）IT人材の割合：IT人材が全就業者に占める割合。IT人材：国際標準職業分類の「25．情報通信技術系専門職」.「35．情報通信技術者」の合計。
日本の就業者は、「就業構造基本調査」における「有業者」を用いている。

資料）内閣府「令和４年度年次経済財政報告」

（２）世界水準のデジタル社会形成に向けて

（デジタル庁を中心とした政府の取組み）

　我が国では、デジタル技術の進展に伴い、その重要性等が増大したデータについて、生成・流通・活用といったすべての側面で環境整備を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症への対応において、国や地方の情報システムが個々にバラバラで十分な連携がなされていなかったことなどにより、行政機関同士の不十分なシステム連携に伴う非効率など、デジタル化をめぐる様々な課題が明らかになった。デジタル技術の高度化に対応しなければ、我が国は世界の趨勢に乗り遅れ、国際競争力の低下を招きかねないとの認識の下、2021年９月にデジタル庁が発足した。

　デジタル庁の創設は我が国におけるデジタル社会の実現に向けた第一歩であり、今後、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」（2022年６月７日）に基づき、デジタル社会の目指す将来の姿を描き、その実現に向けて、国や地方自治体、民間企業などの関係者が連携し、行政手続のデジタル化やIT人材の確保等の取組みを推進していくこととしている^注2。