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国土交通白書 2023

第2節 デジタル実装の現在地と今後への期待

コラム 複数の交通手段を1つのアプリで検索・予約・決済するAIを活用したMaaS
(スイス連邦鉄道モバイル、スイス)

 スイス連邦は、人口約870万人の欧州の国であり、スイス連邦鉄道(SBB)は、1902年に設立された約3,000kmのネットワークを持つスイス最大の鉄道会社である。SBBは、私鉄各社と相互乗り入れしながらスイス全土をくまなく結んでおり、近隣諸国とはヨーロッパ高速鉄道網で接続している。

 同国では、公共交通の輸送会社に対し、輸送手段や会社に関係なく、出発駅から目的駅まで単一のチケットで移動可能とするサービスを提供することが旅客の輸送に関する連邦法で義務付けられているとともに、政府は一貫してデジタルファーストを推進しており、「デジタルスイス戦略」の行動計画の中で、「インテリジェントでネットワーク化された、あらゆる分野における効率的なモビリティ」を目標に掲げている。こうした中、SBBはMaaSアプリ「SBB Mobile」を導入し、同アプリに自動発券システム「EasyRide」メニューを追加し、2019年よりサービスを開始した。

 EasyRideの導入により、利用者は複数の交通手段を1つのアプリで検索・予約・決済することが可能となり、チケットレスで電車やバス、船といった公共交通を自由に乗り継ぐことができる。利用料金については、AIがGPS情報等に基づく移動経路を推定し、割引額(ワンデーパスやグループ料金等)や時間帯変動価格等を組み合わせ、通常購入時と比べより安価になるようなチケット金額を算出し利用者に請求する。なお、同アプリの「EasyRide」画面で、移動を始めるにあたりスタートボタンをスワイプして「チェックイン」することでサービスが開始され、車内では車掌がチケットを保持しているか携帯同士で確認することで無賃乗車を防ぐ運用をとっている。

 2021年におけるSBBのチケット利用数約1 億1,800万枚のうち、EasyRideによる販売数は前年の2.4倍となる約940万枚と利用が増えている。

 SBBは、2030年に向けた戦略の中で、より利便性の高い移動に向けて、様々なモビリティについてMaaSアプリで利用可能とすることで、提供するサービスの質の向上や移動の効率性を高めることなどを目標として掲げている。

<MaaSアプリ「SBB Mobile」>
<MaaSアプリ「SBB Mobile」>

©Schweizerische Bundesbahnen(SBB)

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SBB URL:https://www.sbb.ch/en