
国土交通白書 2023
第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性
コラム 遠隔監視制御型樋門管理システム研究開発(福岡県直方市)
直方市は、人口約5万5千人の市であり、河川の支川や小規模の水路等を多く有している。樋門の開閉操作は、集中豪雨等による急激な河川の変化に即応できるよう、近隣に居住する自営業者や定年退職者に業務委託をしており、操作員の確保や高齢化が大きな課題となっていた。また、樋門の開閉操作は、暴風雨や夜間の作業も必要で危険度が高く、重責な作業という点も、操作員の担い手不足を招く一因であった。
これらの課題を解決するため、直方市は、2020年度から産学官が連携してデジタル技術を活用した研究開発を開始し、市内に設置されている樋門に、遠隔監視及び遠隔制御のために開発したユニットを取り付けて実証事業を実施してきた。
具体的には、樋門を遠隔制御するため、電動化ギアユニットとIoT制御盤及び制御用コンピュータを取り付けるとともに、樋門の開閉状況を確認するためのIPカメラと樋門直下の水位を計測するための超音波式水位センサを設置した。樋門に設置した各ユニットの情報は、セキュリティが確保された専用クラウドにあるデータベースに送信される。操作員は、樋門から離れた場所で様子を確認し、専用の端末からボタン操作一つで樋門の開閉操作を実施できる。また、このシステムの荒天時の実証も行い、樋門の開閉作業が可能であることも確認してきた。コストを抑えるため、後付けの簡易な仕組みの開発を目指している点も特徴的である。
今後、樋門の開閉操作の自動化に向けて、必要なデータを蓄積し担い手不足や減災に寄与するシステム開発を推進していくこととしている。
<小規模水路での樋門操作自動化に向けた開発>

資料)直方市