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国土交通白書 2023

第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性

■6 デジタル化を支える横断的な取組み

(1)現状と今後の方向性

 国土交通省は、国土交通行政のデジタル化を推進するとともに、国土交通分野における諸施策の総合的かつ効果的な推進を目指し、横断的な取組みを行っている。これまでも、行政手続のデジタル化等や各種情報のオープンデータ化を推進してきた。コロナ禍を契機に、遠隔化・非接触での手続の充実など一層取組みを強化している。今後、デジタル技術の飛躍的な進展を活用し、事業改革・業務改善を通じて国土交通行政の諸課題に対応するべく「国土交通DX」を推進していく。

 まず、行政自らがデジタル化に取り組み、デジタル・トランスフォーメーションを牽引することが重要である。法令に基づく国に対する申請等については、原則としてオンラインで実施することとし、行政サービスの利用者の利便性向上や行政運営の簡素化及び効率化を推進していく。

 また、国土交通省が保有するデータを地図情報活用によってオープンデータ化しながら民間等のデータと連携し、施策の高度化や産学官連携によるイノベーションの創出を目指す取組みが重要であり、国土に関するデータ、経済活動、自然現象に関するデータを連携させ、分野をまたいだデータの検索や取得を可能とするデータ連携基盤(「国土交通データプラットフォーム」)のさらなる拡充などに取り組んでいく。

 このほか、担い手となる人材の育成及び国土交通省所管分野のサイバーセキュリティの更なる強化を推進していく。

(2)今後の施策展開

①新たな国土形成計画(全国計画)の策定に向けた取組み

 地方における人口減少・流出や巨大災害リスクの切迫、暮らし方・働き方の変化等を踏まえ、デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくりを基本的な方向性の一つとする新たな国土形成計画の策定に取り組んでおり、計画の確実な実行を推進していく。特に、市町村界に捉われず、官民パートナーシップにより、デジタルを徹底活用しながら、暮らしに必要なサービスが持続的に提供される地域生活圏の形成を進めるため、デジタルインフラ、データ連携基盤等の整備や地域交通の再構築、自動運転、ドローン技術など、先端技術サービスの社会実装等を加速化する。

②国土交通分野の行政手続のデジタル化に向けた取組み

(eMLIT(業務一貫処理システム)の拡充によるデジタル・トランスフォーメーションの加速)

 行政手続のオンライン化を加速し、国民等の利便性向上や行政の業務効率化等に資する国土交通行政のデジタル・トランスフォーメーションを推進するため、申請受付から審査、通知等の申請業務に係るプロセスを一貫して処理できるシステムeMLIT(業務一貫処理システム)の対象手続を拡充することで、申請者の利便性向上や行政の業務効率化等に資する国土交通行政のデジタル・トランスフォーメーションを推進していく。

(道路占用許可申請手続)

 道路占用許可については、既にオンライン化されているが、今後は占用物件の位置情報をデジタル化することで工事の際の事業者間の調整の円滑化など申請者の負担軽減を可能とし、道路占用申請許可手続の迅速化を推進していく。

(建設業許可等申請手続)

 建設業許可、経営事項審査(経営規模等評価)については、書類での申請のみであり、確認書類も膨大であることから、申請書類準備、審査事務が申請者・許可行政庁双方にとって大きな負担となっていた。そこで、建設業許可等の申請手続を合理化するために、国と都道府県で統一のシステムを構築し、2023年1月から運用を開始した。

 また、申請の際に添付を求めている登記事項証明書、納税証明書(国税)などの各種確認書類については、各行政機関等が保有する情報を連携(バックヤード連携)させることにより、添付省略を図っていく。

(特殊車両通行手続等)

 特殊車両の通行手続は、従来は利用者の申請から許可まで平均で約1か月を要していたが、2022年度から登録を受けた車両について通行可能な経路をオンラインで瞬時に確認できる制度の運用を開始した。

 また、事業者等が特定車両停留施設に車両を停留させるための許可申請等手続についてもオンライン化を推進しており、2022年度中にオンライン化の整備を実施し、オンラインによる申請の実現を目指していく。今後とも、手続のデジタル化を推進し道路利用者等の生産性向上を図っていく。

③データ・プラットフォームの整備に向けた取組み

 デジタル庁など関係省庁と連携し、デジタル社会の実現において不可欠なデータ基盤強化を図るため、「包括的データ戦略」に基づき、医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータ・プラットフォームを早期に整備することとされている。

(国土交通データプラットフォーム)

 国土に関するデータ、経済活動、自然現象に関するデータを連携させ、分野を跨いだデータ検索・取得を可能とするデータ連携基盤として「国土交通データプラットフォーム」の構築を進めている。2023年4月には、検索性の高度化やデータ閲覧が容易になるユーザーインターフェースへの改良を実施し、リニューアル公開した。引き続き、データ連携を拡充するとともに、ユーザビリティ・可視化機能の高度化や、データの利活用促進のためのユースケースの創出に取り組み、これにより、業務の効率化や施策の高度化、産学官連携によるイノベーションを目指す。

図表Ⅰ-2-1-15 国土交通データプラットフォームの構築
図表Ⅰ-2-1-15 国土交通データプラットフォームの構築

資料)国土交通省

④デジタル社会形成を支える各種取組み

(DX社会に対応した気象サービスの取組み)

 気象情報・データは、全国を面的かつ網羅的にカバーするとともに、過去から現在、将来予測に至る内容を含むビッグデータとしての特性を有し、「DX社会」の基盤的なデータセットとして非常に重要である。気象情報・データの作成、流通、利活用を推進すべく、気象庁は、最新技術を踏まえた洪水等の予測精度の向上のため、民間の予報業務に関する許可基準の最適化を行うなど、民間気象事業者等によるきめ細かな予報の高度化に資する法制度の改正や、気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)等と連携したセミナーの開催等を通じた気象情報・データの高度な利活用の促進等に取り組んでいる。また、気象庁が持つ気象情報・データへのアクセス性を向上させ、研究や事業での活用等が促進されることを目指し、大容量の気象データを共有し利用できるクラウド環境を2024年3月から運用開始すべく整備を進めていく。

(位置情報の共通ルールである国家座標の取組み)

 i-Construction、自動運転など、高精度かつリアルタイムな衛星測位を活用したDXの取組みが進んでいる。これらの取組みで使用される位置情報が互いに整合し、データ連携を容易にするためには、あらゆる位置情報をその国の位置の基準である国家座標に準拠させる必要がある。この共通ルールに基づいた位置情報の流通を図るため、国土地理院では、電子基準点網の適切な運用、民間等電子基準点の登録制度の普及促進、新たな標高基準の整備等を実施している。

 一方で、地殻変動が激しい我が国では、時間の経過によって位置が変化し、国家座標とズレが生じるという問題がある。国土地理院では、このズレを補正する地殻変動補正の仕組みを構築し、地殻変動があっても国家座標に準拠できる取組みを行っている。

 今後とも、高精度測位の恩恵をどこでも、すぐに、誰もが安心して享受できる環境を整備するため、位置情報の共通ルールである国家座標の取組みを推進していく。