
国土交通白書 2023
第2節 観光立国の実現に向けた取組み
(1)訪日外国人旅行者の受入環境整備
観光地や公共交通機関等における多言語対応、無料公衆無線LAN環境の整備や公衆トイレの洋式化等に対する支援を行った。また、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるインバウンド対応の取組みへの支援を実施した。また、インバウンド需要の本格的な回復を見据え、免税制度の利用促進や、令和5年4月の免税購入対象者の明確化等に向けた必要な情報の周知広報に取り組んだ。加えて、免税販売手続を行う自動販売機(別途国税庁長官が観光庁長官と協議して指定するものに限る。)の指定の告示が行われ、空港等への設置が7か所(令和5年3月31日現在)で進んでいる。さらに「道の駅」について、外国人観光案内所のJNTO認定取得や多言語表示の整備等のインバウンド対応を促進し、地域のインバウンドの受入拠点とする取組みを推進した。
(2) 急患等にも十分対応できる外国人患者受入体制の充実
外国人患者を受け入れる医療機関について、令和4年度に2,135(うち都道府県が指定する「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」は1,623)の医療機関をリスト化し、情報発信を行うとともに、多言語案内機能等の整備に対する支援を行った。また、引き続き外国人旅行者が医療費の不安なく治療が受けられるように、旅行保険への加入を促進した。
(3)「地方創生回廊」の完備
バスタプロジェクトの全国展開を推進している。その際、民間ノウハウを活用しつつ効率的に整備・運営するため、官民連携での整備・運営管理を可能とするコンセッション制度等を活用しつつ、多様な交通モード間の接続を強化し、MaaSなどの新たなモビリティサービスにも対応可能な施設としている。
訪日外国人旅行者をはじめ、すべての利用者にわかりやすい道案内を実現するため、観光地と連携した道路案内標識の改善などに取り組んでいる。
高速道路会社等において、地域振興や観光振興のため、周辺地域や観光関係事業者等と連携し、一定の期間及びエリア内の高速道路が乗り降り自由となる観光周遊パス注2を販売している。また、各鉄道事業者において、「ジャパン・レール・パス」をはじめとする訪日外国人旅行者向けの企画乗車券販売に取り組んでいる。
(4) クルーズ船等の受入環境の整備を通じた地域の活性化
国内クルーズについては、関係業界団体による国内クルーズ用のガイドラインについて新しい知見や社会全体の感染症対策の進展等に応じた改訂の支援を行った。また、船内や旅客ターミナル等での感染予防対策を徹底した上でのクルーズの実施を促進した。
国際クルーズについては、国内外の感染状況や水際対策の動向を踏まえつつ、関係者間で再開に向けた安全対策について検討を進め、令和4年11月に国際クルーズ用のガイドラインが関係業界団体から公表された。その後、同年12月に日本船による国際クルーズの運航が再開し、5年3月には外国船による国際クルーズの運航が再開された。
また、クルーズ再興に向け、感染防止対策を含む旅客ターミナル等における受入環境整備や、クルーズ船社と寄港地の相互理解促進に資する取組等、ハード・ソフト両面にわたる支援を行った。
(5)公共交通利用環境の革新
「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律(国際観光振興法)」に基づき実施している外国人観光旅客利便増進措置については、令和4年4月及び9月に同措置を講ずべき区間等として、鉄道241区間・バス262区間・旅客船33区間・旅客船ターミナル3港・エアライン16事業者・空港ビル64空港を指定しており、公共交通事業者等から外国人観光旅客利便増進措置実施計画が提出され、訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金(交通インバウンド環境革新等事業)などを活用して取組みを進めている。
JNTO(日本政府観光局)と連携して手ぶら観光のウェブサイトをリニューアルすることで認知度向上を図るとともに、手ぶら観光カウンターを2件新たに認定した。
(6) サイクリング環境向上によるサイクルツーリズムの推進
インバウンド効果を全国へ拡大するために、自転車を活用した観光地域づくりは有望であるものの、サイクリングの受入環境や走行環境は不十分な状況である。このため、官民連携による先進的なサイクリング環境の整備を目指すモデルルートを設定し、関係者等で構成される協議会において、走行環境整備、受入環境整備、魅力づくり、情報発信を行う等、サイクルツーリズムの推進に取り組んでいる。
また、国内外のサイクリストの誘客を図るため、日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングロードを国が指定するナショナルサイクルルートについて、令和元年11月につくば霞ヶ浦りんりんロード、ビワイチ、しまなみ海道サイクリングロードを第1次ナショナルサイクルルートとして、3年5月に、トカプチ400、太平洋岸自転車道、富山湾岸サイクリングコースを第2次ナショナルサイクルルートとして指定した。
- 注2 観光周遊パスは、従来平均約3割お得であるところ、令和4年11月からは、平日のみの利用を対象として合計で約4割お得となる拡充措置を実施している。