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国土交通白書 2023

第1節 地球温暖化対策の推進

■3 再生可能エネルギー等の利活用の推進

(1)海洋再生可能エネルギー利用の推進

 洋上風力発電の導入に関し、港湾区域内において港湾管理者が事業者を選定済みの全国6港のうち、能代港内及び秋田港内において、令和4年12月から5年1月にかけて、我が国初となる大型商用洋上風力発電の運転が開始された。また、一般海域においても、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」に基づく公募により、経済産業省及び国土交通省が3年度に計5区域において事業者を選定した。4年12月には「秋田県八峰町及び能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」、「新潟県村上市及び胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計4区域において事業者公募を開始するなど、洋上風力発電の導入が加速化している。

 また、洋上風力発電設備の設置及び維持管理に利用される港湾(基地港湾)について、これまで国土交通大臣が4港を指定している。このうち、秋田港では整備が完了し、令和3年4月に港湾法に基づく発電事業者への埠頭の長期貸付を開始した。能代港、鹿島港、北九州港については引き続き地耐力強化などの必要な整備を実施している。

 また、浮体式洋上風力発電施設の商用化に向けて同施設のコスト低減が喫緊の課題となっている。このため、平成30年度より安全性を確保しつつ浮体構造や設置方法の簡素化等を実現するための設計・安全評価手法を検討しているところ、令和2年度からは検査の効率化を実現するための手法を検討している。引き続き洋上風力発電の導入促進に向けた取組みを進めていく。

【関連リンク】

洋上風力発電

URL:https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_mn6_000005.html

(2)未利用水力エネルギーの活用

 ダムによる治水機能の強化、水力発電の促進、地域振興の3つの政策目標を官民連携の新たな枠組みのもとで実現する「ハイブリッドダム」の取組みを推進している。この取組みの一環として、国が管理する治水等多目的ダム等において最新の気象予測技術を活用した洪水後期放流の活用、非出水期水位の弾力的運用などのダム運用の高度化を試行的に行うとともにダム管理用水力発電設備の積極的な導入等による未利用エネルギーの徹底的な活用を図ることとしている。また、河川等における取組みとして、登録制による従属発電の導入、現場窓口によるプロジェクト形成支援、砂防堰堤における小水力発電の検討情報の提供等、技術的支援及び発電設備の導入支援等を実施し、小水力発電の導入促進を図っている。

(3)下水道バイオマス等の利用の推進

 国土交通省では、下水汚泥のエネルギー利用、下水熱の利用等を推進している。平成27年5月には、「下水道法」が改正され、民間事業者による下水道暗渠への熱交換器設置が可能になったほか、下水道管理者が下水汚泥をエネルギー又は肥料として再生利用することが努力義務化された。固形燃料化やバイオガス利用等による下水汚泥のエネルギー利用、再生可能エネルギー熱である下水熱の利用について、PPP/PFI等により推進している。

(4)太陽光発電等の導入推進

 公的賃貸住宅、官庁施設や、道路、空港、港湾、鉄道・軌道施設、公園、ダム、下水道等のインフラ空間等を活用した太陽光発電等について、施設等の本来の機能を損なわないよう、また、周辺環境への負荷軽減にも配慮しつつ、可能な限りの導入拡大を推進している。

(5)水素社会実現に向けた取組みの推進

①燃料電池自動車の普及促進

 燃料電池自動車の世界最速普及を達成すべく、また、比較的安定した水素需要が見込まれる燃料電池バス等を普及させることが水素供給インフラの整備においても特に重要であるとの認識の下、民間事業者等による燃料電池自動車の導入事業について支援している。令和4年末までに、燃料電池自動車の保有台数は7,425台となった。

②水素燃料電池船の実用化に向けた取組み

 「水素燃料電池船の安全ガイドライン」について、最新の知見や動向を踏まえて、水素燃料電池船の安全性を確保しつつ、開発・実用化をより推進する観点から令和3年8月に改訂版を公表した。

③水素燃料船の開発

 令和3年より、「グリーンイノベーション基金」を活用した「次世代船舶の開発」プロジェクトにおいて、水素燃料エンジンの技術開発を支援しており、9年の実証運航開始を目指している。また、「海事産業集約連携促進技術開発費補助金」を通じて、様々な業種で連携して水素燃料船等の開発を行う事業者を支援し、技術のトップランナーを中核としたシステムインテグレータの育成を行っている。このような取組みを通して、我が国の海事産業の競争力を高めていく。

④液化水素の海上輸送システムの確立

 平成27年度より、川崎重工業株式会社等が、豪州の未利用エネルギーである褐炭を用いて水素を製造し、我が国に輸送を行う液化水素サプライチェーンの構築事業(経済産業省「未利用エネルギー由来水素サプライチェーン構築実証事業」(国土交通省連携事業))を実施している。

⑤下水汚泥由来の水素製造・利活用の推進

 下水汚泥は、量・質の両面で安定しており、下水処理場に集約される。下水処理場が都市部に近接している等の特徴から、効率的かつ安定的な水素供給の実現の可能性が期待されている。

⑥燃料電池鉄道車両の開発

 東日本旅客鉄道株式会社等が水素を燃料とする燃料電池鉄道車両の開発しているところ、国土交通省等における手続きを経て、令和4年3月より営業路線において試験車両の実証試験が開始された。