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国土交通白書 2023

第1節 インフラシステム海外展開の促進

■4 各国・地域における取組み

①東アジア・大洋州

 中国については、日中経済パートナーシップ協議を通じて、中国の観光に係る規制緩和を求めるとともに日中間の往来回復等について議論し、中国によるシップ・リサイクル条約の早期締結を呼びかけた。

 モンゴルについては、令和4年5月に渡辺国土交通副大臣(当時)が訪日したバトエルデネ自然環境・観光大臣と会談し、二国間の観光分野の交流・協力や航空路線の拡大への期待について情報・意見交換を行った。また、同年11月に日モンゴル首脳会談が実施され、今後10年間の日モンゴルの行動計画を発表し、国土交通分野においては、観光・航空等の分野で協力を推進することで一致した。

 大洋州については、本邦企業が建設・運営に参画しているパラオ国際空港に関し、令和4年5月にウィップス大統領出席の下で、完工式典を開催した。また、同年9月の同大統領訪日に合わせ、国土交通省とパラオ共和国公共基盤・産業省、人的資源・文化・観光・開発省との間で、交通・観光分野についての協力を総合的に推進する枠組みを構築するための協力覚書を締結した。

②ASEAN地域

(ア)インドネシア

 令和4年6月、斉藤国土交通大臣は訪日したブディ運輸大臣と会談を行い、二国間で進めている港湾・鉄道・自動車に係るインフラ案件について意見交換を行った。同年10月、ブカシ自動車認証試験場の整備・保守事業に関し、JOINを含む日系コンソーシアムがインドネシア政府とPPP契約を締結した。また、同年10月、パティンバン港のコンテナターミナル拡張事業(パッケージ6)、同年12月には同港自動車ターミナル拡張事業(パッケージ5)をそれぞれ日系コンソーシアムがインドネシア政府と契約を締結し、建設工事を受注した。

 令和4年11月、インドネシアにおける更なる都市高速鉄道の整備を促進するため、国土交通省とインドネシア運輸省はジャカルタMRT東西線整備に関する協力覚書を締結した。

 令和5年2月、インフラメンテナンスに関するセミナーをジャカルタにて対面、オンラインのハイブリッド形式で開催し、日本企業のインドネシアにおけるインフラメンテナンス事業への参画・協働に向けたネットワーク構築を支援した。同年3月、「第9回日・インドネシア建設次官級会合」をオンラインで開催し、両国における「質の高いインフラ投資」、「持続可能な都市開発」の2つのテーマを中心に、両国の取組みの現状、課題及び今後の計画等を共有するとともに、両国の協力を推進していくことで一致した。

(イ)カンボジア

 令和4年3月の日柬首脳会談において、両首脳は1990年代後半より我が国政府が継続的に開発を支援しているシハヌークビル港について地域における中核港として機能させるべく協力していくこと等について一致した。

 加えて、官民双方の連携を強化し、都市開発・不動産開発分野における課題の解決に貢献することを目的としてカンボジア国土整備・都市化・建設省との間で設立した「日カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォーム」について、第3回会合を令和4年2月にオンラインで開催した。

 熊本市で開催された第4回アジア・太平洋水サミットを契機とし、令和4年4月23日に水資源気象省と水及び気象分野に関する協力覚書に署名し、今後、二国間の協力を強化することを合意した。

(ウ)シンガポール

 令和4年9月、豊田国土交通副大臣は、訪日したチー運輸省上級国務大臣と会談し、海事・港湾分野における脱炭素化の取組みについて意見交換を実施した。

(エ)タイ

 令和4年11月の日タイ外相会談において、両国の今後5か年の経済分野での協力の方向性を定めた「日タイ戦略的経済連携5か年計画」が策定された。この中で、国土交通分野においては、鉄道、空港、道路、都市開発などのインフラ分野や観光分野について、協力を行うことで一致した。同年12月には、斉藤国土交通大臣は訪日したサックサヤーム運輸大臣と会談し、インフラ分野における両国間の協力について意見交換したほか、両省間において鉄道分野における協力覚書の締結、両省間及びUR都市機構、タイ国鉄においてバンスープロジェクトの協力に関する覚書の更新確認等を行った。

(オ)フィリピン

 平成30年から円借款を供与し進めてきたマニラ首都圏鉄道(MRT)3号線改修事業に関し、令和4年3月に改修工事完了に係る式典をドゥテルテ大統領出席の下で開催した。

 平成28年から円借款を供与し進めてきたフィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化事業(フェーズII)による97m級の大型巡視船2隻の供与に関し、令和4年6月に巡視船引き渡しに係る式典をドゥテルテ大統領出席の下で開催した。また、4年10月、「道路トンネルの建設・O&Mに関するビジネスワークショップ」の開催に加え、新たな協力覚書を締結し、道路トンネル技術の共有やビジネスマッチングのためのワークショップの継続開催、定期的な意見交換の会合の実施、日本の高速道路会社のビジネス活動の支援についての協力を確認した。

 令和5年2月に発生したタンカーからの油流出被害に対し、国際緊急援助隊・専門家チームのメンバーとして、海上保安庁職員の派遣を行った。

(カ)ベトナム

 令和4年5月の日越首脳会談において、両首脳は、3年11月の越・チン首相の訪日以降、両国間で、鉄道・航空・道路・港湾・都市開発等のインフラ分野や人的交流、ビジネス等の各分野における協力について、二国間協力案件の進捗が図られたことを確認した。

 令和4年12月には斉藤国土交通大臣は訪日したタン交通運輸大臣と会談し、鉄道を中心とした交通インフラ分野の協力案件に関する両国の取組み・課題及び5年の日越外交樹立50周年に向けた協力について意見交換を行った。さらに同月、西田国土交通大臣政務官が訪越し、国土交通省とベトナム建設省で開催する「第4回日・ベトナム建設副大臣級会合」と「第8回日・ベトナム建設会議」に出席し、両国における建設・不動産分野の課題・経験を共有するとともに、今後も両国の協力を推進することを確認した。また、ベトナム計画投資省、農業農村開発省、運輸省及び建設省の各大臣等と会談し、両国間の協力案件について意見交換を行った。

 令和5年2月には、国土交通省とベトナム農業農村開発省間の水防災等の協力覚書に基づく防災協働対話を開催し、同分野における二国間関係を強化した。

(キ)マレーシア

 令和4年9月、マレーシアにおける3L水位計の展開を図ることを期待し、日本企業の参画の下、3L水位計の導入に向けた観測性能・維持管理性能等の検証を行う試験施工を現地にて開始した。

(ク)ミャンマー

 ミャンマー国内で日本企業により実施されていた建設等のプロジェクトについて、現下の情勢を踏まえ、引き続き今後の事態の推移を注視し対応を検討していく。

③南アジア

(ア)インド

 令和5年3月に行われた日印首脳会談において、両首脳は、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業の3,000億円の円借款に署名が行われたことを歓迎し、引き続き、日印の旗艦プロジェクトである本事業を推進していくことを確認した。

 同年3月に「第13回都市開発に関する日印交流会議」を開催し、下水道、スマートシティ、アフォーダブル住宅分野について、意見交換を行うとともに、日本企業が各社の技術をアピールした。4年12月に「第8回日印道路交流会議」を開催し、日本における道路点検技術、道路トンネル維持管理技術等について紹介し、意見交換を実施した。

 また、同年12月に「第1回日インド水資源管理に関する合同実施部会」を開催し、両国で署名した協力覚書に基づき令和3年12月に開催した合同作業部会での合意内容を踏まえた、今後の水分野に関する協力の具体的な内容について、意見交換を行った。

(イ)バングラデシュ

 PPP庁との覚書に基づき日本バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォームを構築し、政府間協力のもとでバングラデシュ側の関係省庁と我が国関心企業による各種プロジェクトの案件形成を支援している。

④北米・欧州

(ア)米国

 令和4年5月の日米首脳会談では、「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」の下での協力の進展が確認されており、競争力とイノベーションの推進、グリーン成長・気候変動の分野にて、国土交通関係でも協力が進められている。

 カリフォルニア州サンフランシスコで第5回日米インフラフォーラムが開催された。本フォーラムでは、国土交通省、米国運輸省及びカリフォルニア州より日米間のインフラ分野における協力関係の発展への期待が示された。また、日米企業による脱炭素化・デジタル化に係る取組みの紹介やブース展示を通じて、カリフォルニア州におけるインフラ市場への日本企業の参画を支援した。また、令和3年4月の日米首脳会談では、両国首脳が「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」に合意しており、競争力とイノベーションの推進、グリーン成長・気候変動の分野において、国土交通分野の更なる協力の推進が望まれる。

(イ)カナダ

 令和4年12月に、第32回日本・カナダ次官級経済協議がオンライン形式で開催された。日本側から、我が国のインフラ関連事業者やJOINの取組みを通じてカナダにおけるインフラの向上に引き続き貢献したい旨を表明した。

(ウ)欧州

 令和5年3月、第17回日EU運輸ハイレベル協議を東京にて開催し、交通分野における相互理解及び協力の促進を図るため、次官級による意見交換を行った。

⑤中南米

 令和2年9月に、海事局は、Web形式の局長級会合を通じ、パナマ運河庁に対し、水不足に起因する運河の水位低下による船舶通航量の調整を目的とした上水サーチャージ導入経緯の説明を求めるとともに、今後我が国がどのような協力ができるか検討する旨伝えた。このような背景から3年度より、「パナマ運河の水不足問題の解消に向けた調査」を開始し、4年度においては、パナマ運河流域周辺の水循環モデルを構築し、水不足の要因を特定するための調査を実施した。

⑥中東(トルコ)

 令和4年12月、日・トルコの防災協働対話の枠組みを活用し、官民による日トルコの防災協力を一層強化するとともに、日本企業のトルコ進出を支援するため、西田国土交通大臣政務官出席の下、「日・トルコ防災セミナー」をトルコ・アンカラにて、対面、オンラインのハイブリッド形式で開催した。

 令和5年2月に発生した大地震に対し、国際緊急援助隊・救助チームや専門家チームのメンバーとして、国土交通省職員の派遣を行った。

⑦アフリカ

 第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)にあわせて平成28年8月に開催した「日・アフリカ官民インフラ会議」を契機として設立した「アフリカ・インフラ協議会(JAIDA)」と連携し、アフリカにおける「質の高いインフラ投資」を推進するため、我が国の「質の高いインフラ」を支える技術や経験等について積極的に情報発信するとともに、相手国との官民双方の関係構築を促進している。

 令和3年度までにアフリカ13か国において「官民インフラ会議」(閣僚級)を開催してきたのに加え、これまでに官民インフラ会議を開催した国との関係を継続・発展させることを目的とした、「質の高いインフラ対話」を開催している他、実務者レベルでテーマを絞って議論することを目的とした「分科会」、これまで官民インフラ会議を開催していない国との新たな関係構築に向けたセミナー等を開催している。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、長らくアフリカでの会議開催は見送られてきたものの、令和4年8月にチュニジアで開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に併せて開催した「第3回日・アフリカ官民インフラ会議」を契機として、今後は、官民インフラ会議等の現地開催を本格的に再開することとしており、5年3月にはカメルーンにおいて初めての官民インフラ会議を開催した。