
国土交通白書 2024
第1節 国土交通分野の現状と方向性
コラム 無人運航船((株)商船三井)
内航海運の船員は、近年高齢化が進んでおり、年齢構成で見ると50歳以上の割合が全体の約44%(2022年時点)を占めている。特に、内航貨物船員は長期間の連続乗船により、総労働時間が長くなる傾向にあり、長時間労働も深刻な問題である。
海運業を営む(株)商船三井は、この課題の解決に向けて、演算アルゴリズムや画像認識技術を活用した無人運航船の実用化に取り組んでいる。
同社は、(公財)日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」のコンソーシアム「内航コンテナ船とカーフェリーに拠る無人化技術実証実験」に参画し、2022年1月に世界で初めて、商業運航コンテナ船の無人運航技術実証実験(航路は福井県敦賀港から鳥取県境港)を成功させた。また、同実証実験では、係船作業の自動化を目的として、ドローンによる実験も行われた。さらに、同年2月には大型カーフェリーの無人運航技術実証実験(航路は北海道苫小牧港から茨城県大洗港)も成功させ、世界で実施された無人運航の中で最長距離となる約750km、かつ最長時間となる約18時間の航行を達成した。
今後、このような技術を活用することで、内航海運の人手不足解消や、ヒューマンエラーによる海難事故の防止、さらには船員の労務負担軽減につながることが期待されている。
<無人運航実証実験に使用した内航コンテナ船>

資料)(株)商船三井