
国土交通白書 2024
第1節 国土交通分野の現状と方向性
コラム 道の駅整備による地域活性化(山都町・東広島市)
■道の駅「通潤橋」
熊本県山都町は、九州のほぼ中央に位置し、北は阿蘇南外輪山、南は九州脊梁山地が連なる景観豊かな山間の町である。また、近世石橋の傑作である「通潤橋」等の歴史遺産も豊富である。
同町は1955年のピーク以降人口減少が進み、現在は約13,000人(2024年2月)、高齢化率は約50%であり、後継者・担い手不足等の深刻な課題を抱えている。
このような中、2024年2月に、九州を横断する九州中央自動車道の「山都中島西インターチェンジ」から「山都通潤橋インターチェンジ」までの10.4キロメートルが開通した。町内への移動を促すインフラが整ったことを好機と捉え、同町は、山都通潤橋ICの供用開始に合わせる形で、「道の駅」整備事業を進めた。
2024年1月、同町は、国道218号線沿いに道の駅「通潤橋」を移転オープンさせた。同駅の最大の特徴は、2023年に土木構造物として初めて国宝指定された「通潤橋」が車で5分圏内に位置していることである。そのほか、構内には地元の食材を使った料理を提供するレストランや、地元の特産品を多く揃えた物産館等を備えており、賑わいを創出する工夫がなされている。
現在、同施設の来場者数は月間で約15,000人であり、売上については月間約2,000万円を記録している。今後、同施設は道の駅を軸に、定住人口や産業と雇用の拡大により、地域の活性化及び情報発信等の取組みをより一層進めていくこととしている。


資料)山都町
■道の駅「西条のん太の酒蔵」
東広島市西条地区は、酒造りに適した気候や清らかな水を利用した日本酒づくりが盛んであり、日本三大銘醸地として知られる。その一方で、日本酒をはじめとした地域の特産品の魅力を発信する拠点がないという課題があった。そうした中、同市が運営主体となり2022年7月に中国地方最大の道の駅「西条のん太の酒蔵」がオープンした。
当施設の取組みは、市の観光資源につながるゲートウェイとして、来場者に対し、地元特産品の魅力を発信し、消費の拡大につなげることで、賑わいを創出し、ひいては地域活力の向上を図ることを目的とするものである。日本酒やジビエ、野菜等の市の特産品を取扱う直売所や、地元食材を使用したフードコートが設けられている。また、一度に100人が利用可能な屋内遊戯場(こどもひろば)も有しており、子育て世代にも利用しやすくなっている。
ほかにも、当施設は、長距離ドライバーの休憩拠点として、施設内にシャワー設備や24時間利用可能な無人コンビニを備えている。
同施設のオープン後、来場者数は増加の一途を辿っており、一日の平均直売所利用者は平日570人、休日1,150人を記録している。売上についても、3ヶ月間で約1.61億円(2024年1月~同年3月)を記録しており、前年同期間の売上から10%以上の増加を達成していることもあり、地域経済に貢献している。
そのほか、当施設は、従来の道の駅の役割である休憩機能、情報提供機能、地域連携機能に加え、防災機能を備えており、県内で初めて「防災道の駅」に指定されている。災害時には、地域住民、長距離ドライバー等の避難所としての役割もあり、施設内に非常用電源、貯水タンク、防災倉庫、防災トイレ等が備えられている。さらに、広大な駐車場を活かし、警察や自衛隊の救援部隊の拠点としても機能する。
今後は、当施設と市内観光拠点とがつながる仕組みや、子育て機能と連携したイベントの開催、大学や学生の知見を活かしたコンテンツの創出等、地域の中心拠点を目指すとしている。


資料)東広島市