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国土交通白書 2024

第2節 望ましい将来への展望

コラム 自動運転移動サービスの実用化による地域の足の確保(福井県永平寺町)

 福井県内は、高齢運転者による死亡事故が多く、死亡事故全体の約5割を占めている。永平寺町も高齢化が進む中で、町全体が車社会のつくりとなっていることから、高齢者による死亡事故の多発が危惧されている。

 そこで、同町は、2016年より電動カートを用いた遠隔型自動運転システムの実証実験に取り組み、2023年5月には、自家用有償旅客運送としては国内で初めて、一定の条件下で運転手が不要となる、レベル4による自動運転移動サービスを開始した。

 これは、旧京福電鉄の跡地を自転車歩行者専用道に改修した町道(「永平寺参ろーど」)上で行われ、途中の停留所から曹洞宗の大本山永平寺の門前にある停留所までの2㎞の区間を、時速12㎞で運行するものである。電波が不安定な山間部にあるため、高精度GPSや高精度地図を用いての位置認識は困難であるが、路面に敷設された電磁誘導線からの電磁波を検知することにより、自動運転による経路運行を可能としている。自転車や歩行者のいる公道上を運行するため、AIカメラやミリ波レーダー、超音波ソナー等を搭載し、走路上の障害物を検知すると減速又は自動停止する技術が備わっている。

 遠隔監視室からは、停留所や車両搭載のカメラ映像等を通し、車両の周囲状況や、制御状態・通信状態等を確認でき、車両の緊急停止、発進許可の指令が可能である。ただ、車両自ら不具合を感じれば自動停止をし、遠隔監視者に自動通報されるため、遠隔監視者が常時監視する必要はない。なお、遠隔監視者は1名で足り、1名で最大3台の車両を運行管理できる。2023年5月のサービス開始から2024年3月までの間に1,229名が利用した。

 同町は、自動運転の実用化に向けた取組みによって、自動運転に対する町民の理解の促進だけでなく、地域の移動交通に対する町民の関心も高めたことが、2020年の自家用有償旅客運送によるデマンド型乗合タクシーの実用化につながったと考えている。

 今後は、公共交通の補完となるよう、自動運転の運行エリアを拡大し、永平寺の門前からふもとまでの運行区間の延伸を検討するほか、観光資源としての活用を進めることとしている。

<レベル4自動運転車両>
<レベル4自動運転車両>
<遠隔監視室>
<遠隔監視室>

資料)永平寺町