
国土交通白書 2024
第5章 競争力のある経済社会の構築
(1)幹線道路ネットワークの整備
幹線道路の整備は、昭和29年に策定された「第1次道路整備五箇年計画」以来、現在に至るまで着実に進められてきた。例えば、高速道路等の幹線道路ネットワークの整備は、高速道路のインターチェンジ周辺での工場の立地を促すなど、地域経済の活性化に大きく寄与するとともに、地方部における広域的な医療サービスの享受、災害等で幹線道路が途絶した場合の広域的な迂回ルートの確保等が可能となるなど、国民生活の質や安全の向上にも大きく貢献してきた。
例えば、東京外かく環状道路(三郷南IC~高谷JCT)は平成30年6月2日に15.5kmが開通し、東京外かく環状道路の全体で約6割がつながった。これにより、中央環状内側の首都高(中央環状含む)の渋滞損失時間が約3割減少した。このようなストック効果が最大限発揮されるよう、幹線道路ネットワークの整備を引き続き推進する。

一方で、全国においては未だ高速道路等の幹線道路ネットワークが繋がっていない地域があることから、計画的に整備を推進していく。
また、令和5年10月31日に社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会が取りまとめた「高規格道路ネットワークのあり方 中間とりまとめ」及び、国土交通省道路局として今後取り組む具体的な政策を取りまとめた「WISENET2050・政策集」の下、取組みを進める。
(2) 道路のネットワークの機能を最大限発揮する取組みの推進
生産性の向上による経済成長の実現や交通安全確保の観点から、必要なネットワークの整備と合わせ、今ある道路の運用改善や小規模な改良等により、道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する取組みを推進している。特に、平成27年8月より本格的な導入が開始されたETC2.0がその取組みを支えている。
①道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する取組みを支えるETC2.0
ETC2.0とは、全国の高速道路上に約1,800か所設置された路側機と走行車両が双方向で情報通信を行うことにより、これまでのETCと比べて、(ア)大量の情報の送受信が可能となる、(イ)ICの出入り情報だけでなく、経路情報の把握が可能となるなど、格段と進化した機能を有し、ITS推進に大きく寄与するシステムである。
②賢い料金
平成28年4月及び令和4年4月に首都圏で、平成29年6月に近畿圏で、令和3年5月からは中京圏で新たな高速道路料金を導入し、外側の環状道路への交通の転換や、都心流入の分散化等の効果が発揮されている。
③賢い投資
今あるネットワークの効果を、最小コストで最大限発揮させる取組みとして、上り坂やトンネル等の構造上の要因で、速度の低下や交通の集中が発生する箇所を、ETC2.0等により収集したきめ細かい旅行速度データや加減速データ等のビッグデータにより特定し、効果的に対策するピンポイント渋滞対策を実施している。これまで、関越自動車道の大泉JCT付近等12か所で、既存の道路幅員の中で、付加車線等を設置する運用を開始している。現在、関越自動車道の高坂SA付近等12か所で、ピンポイント渋滞対策を実施している。