
国土交通白書 2024
第1節 交通ネットワークの整備
(1)新幹線鉄道の整備
新幹線は、我が国の基幹的な高速輸送体系であり、地域間の移動時間を大幅に短縮させ、地域社会の振興や経済活性化に大きな効果をもたらす。また、新幹線は安全(昭和39年の東海道新幹線の開業以来、鉄道事業者の過失による乗客の死亡事故はゼロ)かつ環境にもやさしい(鉄道のCO2排出原単位(g-CO2/人キロ)は航空機の1/5、自家用車の1/6)という優れた特性を持っている。「全国新幹線鉄道整備法」に基づき、昭和48年に整備計画が定められた、いわゆる整備新幹線については、平成9年10月の北陸新幹線(高崎・長野間)の開業を皮切りに、これまで東北新幹線、九州新幹線、北陸新幹線、北海道新幹線が開業しており、令和6年3月には北陸新幹線(金沢・敦賀間)が開業した。
北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)については、工事延長(212km)のうち約8割を占めるトンネル区間や、高架橋・橋りょう等において、工事を進めているところであり、引き続き、安全や環境に配慮し、関係者と協力しつつ、着実な整備を進める。青函共用走行区間のうち、青函トンネル内では、令和6年度より、貨物列車の本数が少ない特定時期において、新幹線列車と貨物列車の走行時間帯を区分し、新幹線の時速260km走行を実施することとしている。引き続き、安全の確保に万全を期して、新幹線の高速化と鉄道貨物輸送との両立について検討を進める。
未着工区間である北陸新幹線(敦賀・新大阪間)については、従来、工事実施計画の認可後に行っていた調査も含め、施工上の課題を解決するための調査を、先行的・集中的に実施している。
また、九州新幹線(西九州ルート)については、九州地域、西日本地域の未来にとってどのような整備のあり方が望ましいか議論を積み重ねることが重要と考えており、今後も関係者との協議を引き続き進める。
「全国新幹線鉄道整備法」では、全国で計11路線が、基本計画路線に位置付けられており、基本計画路線を含む「幹線鉄道ネットワーク等に関する調査」を行っている。引き続き、幹線鉄道ネットワークの今後の方向性について、調査・検討に取り組んでいく。
リニア中央新幹線は、東京・名古屋・大阪の三大都市圏を一つの圏域とする「日本中央回廊」を形成して日本経済を牽引するとともに、令和6年10月に開業60周年を迎える東海道新幹線とのダブルネットワークによるリダンダンシーの確保を図るものである。
これにより、我が国の国土構造が大きく変革され、国際競争力の向上が図られるとともに、その成長力が全国に波及し、日本経済全体を発展させるものである。全線開業の時期については、平成28年に「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法」の改正を行い、財政投融資(3兆円)を活用することにより、当初令和27年であった大阪までの全線開業を最大8年間前倒すことを可能としたところである。現在、国土交通大臣が認可した「中央新幹線品川・名古屋駅間工事実施計画」に従い、JR東海において、品川・名古屋間の早期開業に向け、工事を進めているところであり、名古屋・大阪間については、令和5年にJR東海が環境影響評価に着手したところである。
(2)技術開発の促進
①超電導磁気浮上式鉄道(超電導リニア)
超電導リニアの技術開発については、「超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画」に基づき、既に確立している実用技術のより一層の保守の効率化、高温超電導磁石の運用安定性の確保を目指した技術開発を推進する。
②軌間可変電車(フリーゲージトレイン)
フリーゲージトレインについては、軌間の異なる在来線間での直通運転を想定し、技術開発を行う。