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国土交通白書 2024

第4節 交通分野における安全対策の強化

■5 航空、鉄道、船舶事故等における原因究明と事故等防止

 運輸安全委員会は、独立性の高い専門の調査機関として、航空・鉄道・船舶の事故及びインシデント(事故等)の調査により原因を究明し、国土交通大臣等に再発防止及び被害の軽減に向けた施策等の実施を求めている。

 令和5年度中、調査対象となる事故等は、航空30件、鉄道15件、船舶753件発生した。また、同年度中、航空31件、鉄道16件、船舶923件の調査報告書を公表した。

①令和5年度中に調査報告書を公表した主な事案

 航空事故等では、令和3年2月、貨物機が復行中に機体後部下面が滑走路に接触し損傷した事案について、機体の姿勢が不安定となり復行操作を行った際、機体の速度が不十分なままピッチ角が過大となったことにより発生したことを明らかにした(5年8月公表注17)。

 鉄道事故等では、令和4年3月、福島県沖を震源とする地震により東北新幹線が脱線し、一部の輪軸が逸脱した事案について、地震動による列車の脱線や逸脱のメカニズム等の分析を行い、車体のローリングの発生やそれに伴う空気ばねの空気抜け等の影響を明らかにした。また、それらの脱線・逸脱の原因を踏まえた再発防止策として、列車の先頭軸を含む輪軸の逸脱防止機能の更なる高機能化を実施していくことが必要であること等を提言した(6年3月公表注18)。

 船舶事故等では、令和4年4月、北海道知床沖で旅客船が沈没した事案について、船体動揺でハッチ蓋が開き、海水が流入して上甲板下の区画に浸水が拡大したことのほか、発航や運航継続の判断、安全管理規程の遵守、運航会社への監査や船舶検査の実効性等の複合的な要因により発生したことを明らかにした(5年9月公表注19)。

②事故等防止に関する普及啓発活動

 各種統計に基づく分析や参考にすべき事故事例をまとめた「運輸安全委員会ダイジェスト」等の発行や安全啓発のための特集ページのホームページ上での公開注20、地図上から船舶事故等調査報告書を検索できる「船舶事故ハザードマップ」の提供注21等啓発活動を行っている。

③デジタル技術の活用

 デジタル・トランスフォーメーション(DX)が推進されている中で、多様な交通分野で情報化・自動化等の先端情報技術を活用した次世代モビリティの実用化が計画されている。事故調査において確実性の高い原因究明を行うため、進展する交通システムの最新技術に関する情報を調査・研究し、事故等調査能力を強化している。

 また、3Dスキャナーやドローンにより高精度な測量を行い、事故現場を3Dモデル化することが事故等調査において有効となっている。効率的かつ確実な事故等調査を行うために、今後も最新のデジタル技術を活用した事故等調査手法を推進することとしている注22

  1. 注17 報告書 https://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/AA2023-5-1-JA13KZ.pdf
  2. 注18 報告書概要 https://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/p-pdf/RA2024-1-1-p.pdf
  3. 注19 報告書概要 https://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/p-pdf/MA2023-9-1-p.pdf
  4. 注20 安全へのツール http://www.mlit.go.jp/jtsb/bunseki.html
  5. 注21 船舶事故ハザードマップ https://www.mlit.go.jp/jtsb/hazardmap.html
  6. 注22 運輸安全委員会年報2024 https://www.mlit.go.jp/jtsb/bunseki-kankoubutu/jtsbannualreport/annualreport_2024/jtsbannualreport_2024.html