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国土交通白書 2025

第2節 サービスの供給制約に対する国民意識

■1 政府の施策と国土交通分野に期待される取組

(1)政府の施策

 政府は、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとすることを目指している注2

 日本経済及び地方経済の中長期的な成長力を強化していくために、地方の中堅・中小企業の担い手不足対策を含めた生産性向上に関する取組の支援等を推進していくこととしている。

①新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画

 生産年齢人口が減少していく中では、若者・高齢者・女性が潜在的能力を発揮できるようにすること、労働生産性の向上に裏付けられた実質賃金の上昇を実現していくことが求められる。

 そこで、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版」(2024年6月)では、物価上昇を上回る賃上げを定着させるために、中小・小規模企業の「稼ぐ力」の向上を図ることとしている。また、生産年齢人口が減少しつつあることにかんがみ、省力化投資等による担い手不足対策、価格転嫁等の商慣行における定着等を推進していくこととしている。

②国土形成計画

 人口減少社会においては、地域の生活サービス提供のあり方として、サービス供給側の視点から、分野ごと、地方公共団体ごとでの個別最適を図る対応だけでは持続性に限界が生じるおそれがある。

 国土全体にわたって、地域で生き生きと安心して暮らし続けるためには、「共助」を通じて人と人とのつながりを生み出すなど地域の共同体を形づくりつつ、日常の生活実感や経済活動のまとまりを有する圏域を地域社会の新しい原単位と捉え、事業の発想を「供給者目線」から「需要者目線」に転換し、地域交通、不動産・住まい、買い物、医療・福祉・介護、教育等の生活関連サービスを持続的に提供していくことが必要である。

 「第三次国土形成計画(全国計画)」(2023年7月)では、分野の垣根を越えた、行政区域にとらわれない、官民パートナーシップによる地域経営により、日常の暮らしに必要な身近なサービスが持続的に提供される地域生活圏の形成を推進していくこととしている。

③地方創生2.0

 地方は、少子高齢化・人口減少、産業空洞化等、様々な社会課題に直面している。

 そのような中、デジタルの力で、地方の特性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上を図る「デジタル田園都市国家構想」が展開されてきた。

 さらに、2024年10月、「地方こそ成長の主役」との発想に基づき、「デジタル田園都市国家構想実現会議」を発展させる形で、内閣に「新しい地方経済・生活環境創生本部」が設置された。新たな地方創生施策(地方創生2.0)では、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていくために、若者や女性が暮らしやすい地方を創ること、地方を訪れる人を増やすこと、自治体同士が広域で連携すること等を推進していくこととしている。

(2)国土交通分野に期待される取組

(賃上げを含む処遇改善による担い手の確保)

 賃上げを含む処遇改善は、担い手のモチベーションを高め、今後、希少となる人材の定着を促す効果がある。賃上げの原資は、企業の「稼ぐ力」であり、これを継続的に高めるには、先端的な設備など有形資産の投資とともに、人への投資など無形資産の投資を行い、事業の高付加価値化及び生産性向上を実現することが重要である。次世代の担い手を確保していくためにも、生産性向上と賃上げの好循環を生み出し、担い手の誇り・魅力・やりがいを向上させていくことが期待される。

(適切な価格転嫁や生産性向上等に関する取組の推進)

 担い手の確保・育成が課題となっている建設業や運輸業においては、中小企業が賃上げの原資を確保できるよう、価格転嫁の円滑化や、省力化投資等による生産性の向上に関する取組を推進していくことが期待される。

 また、建設業では、未だ建設技能労働者は稼働日数の減少に伴う手取りの減額に対する懸念も強いことから、労働環境に対する意識改革を進めていくことが求められる。

 さらに、後継者不足が懸念される熟練の技術・技能では、伝統的な建造物の復元工事を契機に、生産性の向上に関する取組に加え、若い世代への技術継承に積極的に取り組む動きも見られる。

 生産性向上に関して、物流分野における民間の取組には、デジタル技術を活用し、共同輸配送の実現や荷待ち・荷役時間の削減に向けた動きが見られる。

(自動化技術の利用拡大・自動運転の社会実装)

 担い手不足が懸念される中、AIやロボット等の自動化技術の利用拡大が期待される。また、地域の持続可能な生活インフラを作っていくために、自動運転の実装加速に向けた制度整備の推進が期待される。

 自治体の取組には、市街地において自動運転バスの継続運行を行い、自動運転技術に対する市民の認知度向上を図っているものが見られる。また、諸外国の取組には、地方路線や貨物路線において、自動運転技術の開発を推進しているものが見られる。

(持続可能な地域社会の構築)

 人口減少により、将来的な生活サービスの維持・存続が危ぶまれる中、地域社会の持続性を確保していくために、居住や都市機能の誘導を進める都市のコンパクト化と交通ネットワークの確保をさらに推進していくことが期待される。

 公共施設やインフラの再編においては、公共と民間の役割分担を固定的に考えず、地域ごとの状況に応じて、広域連携による複数自治体での共同運営・共同管理を視野に入れた体制の検討が求められる。また、そのような体制を整えた上で、地域の将来像を見据え、民間の持つノウハウが最大限活かされていくことが求められる。

(分野の垣根を越えた横串の発想)

 各自が有する資源を融通・共有し合うなど、国や地方公共団体、民間事業者等のそれぞれの主体は、縦割りの発想で課題解決に取り組むのではなく、分野の間での十分な情報共有や連携を進め、取組主体間の垣根を越えた横串の発想で課題解決に取り組むことが期待される。

 民間の取組には、鉄道ネットワークを活かして、列車ならではの定時性・安定輸送により、高度な品質で荷物輸送を行うサービスが見られる。

(住民や地域団体等との多様な主体との連携)

 官民連携において、民の力を最大限発揮するには、住民やNPO等の地域団体、企業等の多様な主体と行政が連携して、地域を共に創る発想により課題解決に取り組んでいくことが期待される。

  1. 注2 2024年に、我が国では600兆円超の名目GDP、33年ぶりの高い水準となった賃上げが実現された。