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国土交通白書 2025

第2節 望ましい将来への展望

■1 国民の願う将来の社会像

(将来の社会に対する国民意識)

 国土交通省「国民意識調査」によると、我が国の人手不足の傾向は、今後も続くことが予想される中、「今後、人手不足が深刻化する中でも、どのようなサービスが保たれた社会を望みますか。」とたずねたところ、最も期待されているサービスは「社会インフラ設備が不自由なく安定的に利用できる」(30.2%)であり、次いで「安定した物流により貨物や宅配物がいつでもすぐに届く」(25.5%)、「住んでいる場所に限らず、自家用車がなくても生活できるレベルで公共交通網が整備されている」(21.4%)の順に回答した人が多かった。

 住宅や建築物も含め、日常生活や社会活動を支える社会インフラの安定的利用や、物流サービスの確保、また、地域の移動を支える公共交通網の充実等への期待度が高い結果となった。

図表Ⅰ-2-2-1 将来の社会に求めるサービス
図表Ⅰ-2-2-1 将来の社会に求めるサービス

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

(国土交通行政への将来の期待)

 国土交通省「国民意識調査」によると、「今後も人口減少や供給制約が進む中、将来、我が国の社会がどのように発展することを望みますか。」とたずねたところ、「道路や水道、公共施設等のインフラが効率よく維持され、暮らしが守られる社会」(80.1%)が最も高い回答率となった注1。次いで、「働く人みんなの処遇が改善され、働きやすく多様性のある社会」(45.8%)、「住民もサービスの供給側に協力・連携し、日々の暮らしや社会にとって必要なサービスが維持される社会」(44.6%)が挙げられた。将来にわたり社会インフラが維持されるとともに、働く人々の処遇改善や、担い手不足が深刻化する中でもサービスが維持・存続されることなど、国民の身近に関わる生活環境や職場の改善が挙げられた。

図表Ⅰ-2-2-2 国土交通行政に期待する社会
図表Ⅰ-2-2-2 国土交通行政に期待する社会

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。回答者は該当する選択肢を3つ回答し、グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

 続いて、国土交通分野における担い手不足に伴うサービス低下を解消又は緩和するために、企業や地方公共団体が行うべき対策として優先度が高いと思うものについてたずねたところ、「処遇改善による担い手確保」(41.7%)が最も多く、次いで、「省人化・省力化につながる各種技術の開発・活用」(31.3%)、「供給方法・サービス内容の見直し」(27.0%)が挙げられた。サービスを維持するために企業や地方公共団体が行うべき対策としては、処遇改善や、省人化・省力化技術の活用によるサービスの維持のいずれかを優先度が高いと思うと回答したものが、全体の7割を超えており、供給方法・サービス内容の見直しについては比較的、消極的な姿勢であることが確認された。

 一方、年代別に回答を比較したところ、将来の担い手となる30代以下の比較的若い世代は「処遇改善による担い手確保」と「供給方法・サービス内容の見直し」で約7割を占めており、また、特に「供給方法・サービス内容の見直し」を優先度が高いと思うと回答した割合が全体よりも有意に高いことから、サービスの見直しに消極的な年代が高い世代より、現状のサービスの提供方法を変更することに対して抵抗感が少ないことが判明した。

図表Ⅰ-2-2-3 サービス低下を解消・緩和するための企業・地方公共団体が行うべき対策
図表Ⅰ-2-2-3 サービス低下を解消・緩和するための企業・地方公共団体が行うべき対策

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

 続いて、処遇改善による担い手確保に向けた企業及び地方公共団体の対策についてたずねたところ、「賃上げ」(69.5%)が最も多く、「超過勤務の縮減や育児・介護休暇等、賃上げ以外の処遇改善」(49.1%)、「専門分野における担い手を確保するための人材の育成」(42.9%)が続いた。

 年代別の回答を分析したところ、将来の担い手となる30代以下の比較的若い世代は「休憩設備の新設、空調設備の導入等の職場環境の改善」、「賃上げ」、「超過勤務の縮減や育児・介護休暇等、賃上げ以外の処遇改善」の順に回答比率が高くなっており、労働環境の改善を比較的、重要視している。

図表Ⅰ-2-2-4 処遇改善による担い手確保の対策
図表Ⅰ-2-2-4 処遇改善による担い手確保の対策

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。回答者は該当する選択肢をすべて回答し、グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

(産官学共同の人材好循環)

 建設業では、担い手確保に向けて、賃上げを含む処遇改善等の取組が行われているが、その取組や業界の魅力、やりがいについて、将来の担い手世代に広く情報発信していくことも重要である。また、情報発信に当たっては、地域の身近な現場見学を通じた体験や、新たな担い手側が知りたい情報を発信することで、建設業へのイメージも掴みやすく、入職後のミスマッチも減らすことができる。

 前述の図表Ⅰ-2-2-3の質問「サービス低下を解消・緩和するための対策」に対して「処遇改善による担い手確保」の次に回答が多かったのは、「省人化・省力化につながる各種技術の開発・活用」である。国民が将来の社会に求める「社会インフラの安定的利用」、「物流サービスの確保」、「公共交通網の充実」に向けて、省人化・省力化をいち早く実現するために、各種技術を積極的に導入する必要がある。

(担い手不足等に対応するための新技術の活用)

 国土交通省「国民意識調査」によると、担い手不足への対応のため、積極的に活用すべき技術についてたずねたところ、「建設工事の施工を自動化する建設機械・ロボットの活用」(47.4%)、「物流倉庫の自動化」(44.4%)、「ロボットやAI等を活用したインフラメンテナンス」(36.8%)が続いた。

図表Ⅰ-2-2-5 担い手不足への対応ため積極的に活用すべき技術
図表Ⅰ-2-2-5 担い手不足への対応ため積極的に活用すべき技術

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。回答者は該当する選択肢をすべて回答し、グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

(新技術の開発・活用に向けた行政への期待)

 国土交通省「国民意識調査」によると、省人化・省力化技術の開発・活用に向けた行政への期待についてたずねたところ、「新技術開発を財政面で支援する制度の創設」(60.0%)、「新技術の実証実験を行うための環境の整備」(50.4%)、「新技術の認証・実装の迅速化」(45.0%)となり、すべての年代に共通した回答傾向であった。

 民間の技術研究・開発意欲を促進する制度面でのインセンティブをはじめ、技術開発・実証実験を推し進める環境の整備や、早期の社会実装に資する新技術の認証・実装の迅速化はともに将来にわたり行政に期待される重要な支援策であり、そのような支援への期待が万遍なくあることが確認された。

図表Ⅰ-2-2-6 省人化・省力化技術の開発・活用に向けた行政への期待
図表Ⅰ-2-2-6 省人化・省力化技術の開発・活用に向けた行政への期待

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。回答者は該当する選択肢をすべて回答し、グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

 次から、前述の図表Ⅰ-2-2-3の質問「サービス低下を解消・緩和するための対策」に関する国土交通省「国民意識調査」で、「処遇改善」、「省人化・省力化」に続いて回答が多かった「供給方法・サービス内容の見直し」について、傾向を記述する。

(供給方法・サービス内容の見直しに対する国民意識)

 国土交通省「国民意識調査」によると、サービスを維持するため、移動時間や乗換えの手間の増加を伴う地域公共交通の減便や廃止、自宅以外の場所での宅配便の受取り等、サービスの供給方法の見直しや需要者側の協力についての意見をたずねたところ、受け入れられる(問題なく受け入れられる・受け入れられる・やむを得ず受け入れる、の合計)と回答した割合は、約7割となった。各質問では、「スクールバスや事業者の送迎バスの活用によるコミュニティバスの運行」(79.3%)、「集約された路線バスの幹線と支線への乗り換えを前提とする移動」(74.9%)、「貨客混載の実施」(73.1%)と続いた。

 一方、受け入れられない(あまり受け入れられない・受け入れられない・到底受け入れられない、の合計)と回答した割合が多かった内容は、「地域住民の手による橋等のメンテナンス」(45.7%)、「地域公共交通網の再編」(36.0%)、「自宅以外での宅配受取り」(27.9%)となった。

図表Ⅰ-2-2-7 サービスの供給方法の見直しや需要者側の協力等の取組についての意見
図表Ⅰ-2-2-7 サービスの供給方法の見直しや需要者側の協力等の取組についての意見

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。回答者は各質問ごとに該当する選択肢を1つ回答。

資料)国土交通省「国民意識調査」

 次に、サービスの供給方法の見直しに関する取組について、行政にどのような役割を期待するかをたずねたところ、全世代で大きな変化は見られず、「民間資金・ノウハウを活用した整備の促進(PPP/PFI)」や「インフラ集約・再編の推進」の回答した割合が多い結果となった。サービスの供給方法の見直しに併せて、官民連携による取組も活用しながら検討していくことが必要である。

図表Ⅰ-2-2-8 サービスの見直しにおいて、行政に期待する役割(年代別)
図表Ⅰ-2-2-8 サービスの見直しにおいて、行政に期待する役割(年代別)

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。回答者は該当する選択肢をすべて回答し、グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

 続いて、サービスを維持するための取組として、民間の資金・ノウハウを活かす官民連携(PPP/PFI)の取組について意見をたずねたところ、「サービスの維持に必要な範囲に限り担ってもらうべき」(34.9%)、「民間事業者に積極的に担ってもらうべき」(33.5%)であった。官民連携によるサービスの維持の取組に対し、受容する回答の割合は約7割となっており、生活サービスに係る公共サービスの分野において民間領域を広げることに、大きな抵抗感はないといえる。

図表Ⅰ-2-2-9 官民連携の取組についての意見
図表Ⅰ-2-2-9 官民連携の取組についての意見

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。

資料)国土交通省「国民意識調査」

 なお、図表Ⅰ-2-2-7の質問で、受け入れられないと回答した割合が最も多かった「地域住民の手による橋等のメンテナンス」について、人口減少や財政状況の悪化等の制約の下でも社会インフラの維持管理等を実施するため、住民に協力を求めるとした場合に、協力の内容に対する意向をたずねたところ、「増税や料金の徴収・引上げ等」の金銭負担については、否定する回答(「どちらかというと実施すべきでない」、「実施すべきでない」48.7%)が、肯定する回答(「実施すべき」、「どちらかというと実施すべき」35.8%)を上回った。住民協力の内容として、増税や料金の徴収・引上げ等の経済的負担を肯定する回答の割合は低い一方で、地域住民による「美化・清掃への協力」や、「点検・通報への協力」、「維持管理・保全工事への協力」については、肯定する回答がそれぞれ50%を上回るなど割合が高いことから、住民は、経済的な負担よりも、維持管理の主体として住民自らが協力参加することを優先しているといえる。

図表Ⅰ-2-2-10 インフラメンテナンスの需要者側の協力についての意見
図表Ⅰ-2-2-10 インフラメンテナンスの需要者側の協力についての意見

※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。回答者は各質問ごとに該当する選択肢を1つ回答。

資料)国土交通省「国民意識調査」

  1. 注1 アンケート実施時期が令和7年2月上旬であり、7年1月に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故当時の報道状況が影響を与えた可能性がある。