国土交通白書 2025
第2節 望ましい将来への展望
コラム 人工衛星とAIを活用した漏水調査の効率化(愛知県豊田市)
水道管の老朽化が全国的に進む中、漏水対策は地方公共団体にとって喫緊の課題である。豊田市の漏水調査は、職員が水道管の通る道路を徒歩で少しずつ移動しながら、漏水探知機で漏水音を聞き分けているため、調査に相当な時間を要していた。また、調査に熟練した職員の高齢化が進んでおり、退職による担い手不足も懸念されていた。
このような中、豊田市では、漏水調査に人工衛星とAIを活用し、調査の効率化に取り組んでいる。
2020年には、人工衛星からマイクロ波を照射して地下で反射して返ってきた水の成分データから、AIが水道水か非水道水かを識別する技術を導入した。衛星画像から漏水の可能性があるエリアを直径約200m単位で検知することができるため、エリアを絞り込んだ漏水調査が可能になり、従来の調査方法に比べ、調査距離は10分の1程度まで削減され、5年ほどかかる調査期間は約7カ月に短縮した。
また、2022年には、複数種類の衛星から水道管にストレスを及ぼす環境要因(地表面温度、気象情報、地盤変動等)をAI解析することで、漏水エリアの特定範囲を更に100m四方に絞り込むとともに、当該エリアの漏水リスクを5段階で評価する実証実験も行っている。
豊田市では、今後、担い手不足が懸念される中でも、重要なライフラインを維持する体制の構築が可能となるように、デジタル技術の活用に取り組むこととしている。
<豊田市が導入・実証した漏水調査における最新技術>
漏水エリア特定診断
漏水リスク評価
資料)豊田市