国土交通白書 2025
第1節 交通ネットワークの整備
(1)航空ネットワークの拡充
①首都圏空港の機能強化等
訪日外国人旅行者の受入拡大、我が国の国際競争力の強化等の観点から、首都圏空港(東京国際空港(羽田空港)、成田国際空港(成田空港))の機能強化は必要不可欠であり、両空港で年間約100万回の発着容量とするための取組を進めているところである。
具体的には、羽田空港において、令和2年3月から新飛行経路の運用を開始し、国際線の発着容量を年間約4万回拡大しているところであり、引き続き、騒音対策・落下物対策や、地域への丁寧な情報提供に努めるとともに、新飛行経路の固定化回避に向けた努力を継続する。また、空港アクセス鉄道の基盤施設整備、国内線・国際線間の乗継利便性向上のための人工地盤の整備、旧整備場地区の再編整備、地上支援車両レベル4自動運転の実装のための整備等を実施している。成田空港においては、地域との共生・共栄の考え方の下、C滑走路新設等の年間発着容量を50万回に拡大する取組を進めるとともに、旅客ターミナルの再構築や航空物流機能の高度化等の検討を進めている。
②関西国際空港・中部国際空港の機能強化
関西国際空港については国、地元自治体、経済界、運営会社等の関係者が一体となった機能強化を進めており、容量拡張を目的として令和7年3月から新飛行経路の運用を開始するとともに、運営権者による民間の創意工夫を生かした機能強化として、令和7年3月の新国際線保安検査場のオープン等の第1ターミナルの改修事業を推進した。引き続き、国際線商業エリアの拡張等の第1ターミナル改修事業等を進める。
中部国際空港については、引き続き第1旅客ターミナルの処理能力向上を目的とした取組や現滑走路の大規模補修時における継続的な空港運用及び空港の完全24時間運用の実現等を目的とした代替滑走路事業を推進する。
③地方空港の機能強化
福岡空港においては、滑走路処理能力の向上を図るため、二本目の滑走路を令和7年3月20日に供用開始した。北九州空港においては、国際貨物輸送の拠点機能向上を図るため、屋久島空港においては、首都圏からの直行便の就航による交流人口の更なる拡大等を図るため、それぞれ滑走路延長事業を実施している。また、那覇空港においては、空港の利便性向上を図るため、国際線ターミナル地域再編事業を、新千歳空港においては、航空機や除雪車両の混雑緩和等を図るため、誘導路複線化等を実施している。
そのほかの地方空港においては、航空機の増便や新規就航等に対応するため、エプロンの拡張やターミナル地域の整備等を実施している。
また、航空機の安全運航を確保するため、老朽化が進んでいる施設について予防保全型の維持管理を踏まえた空港の老朽化対策を実施するとともに、地震災害時における空港機能の確保を図るため、滑走路等の耐震対策を進めている。
④航空自由化の戦略的推進による我が国の国際航空網の拡充
国際航空網の拡充を図るため、我が国では航空自由化(オープンスカイ)注1を推進している。首都圏空港の厳しい容量制約を背景に、羽田空港を自由化の対象外とするなど一部制約が残るが、我が国を発着する国際旅客便数は、成田空港における二国間輸送を自由化の対象に追加した平成22年時点(2,649便/週注2)と比べて、令和元年時点(5,516便/週注2)で2倍強に増加した。
その後、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、国際旅客便数は一時激減したが、水際措置が大幅に見直された令和4年10月以降、回復の傾向にある(6年10月末時点:5,178便/週)。
⑤航空機操縦士等の養成・確保
我が国の航空業界においては、操縦士・整備士共に50代あたりを中心とした年齢構成のピークがあり、将来の大量退職が見込まれている。操縦士等が航空会社において第一線で活躍するまでには長い時間を要することから、今後の航空需要の増加に対応するためには、中長期的な視点で計画的に操縦士等の養成・確保のための取組を継続する必要がある。
このため、令和6年2月に学識経験者及び関係団体等からなる「航空整備士・操縦士の人材確保・活用に関する検討会」を設置し、7年3月には、「最終とりまとめ」を公表した。今後とも産学官の一層の連携のもと、航空大学校における操縦士の着実な養成、航空業界における女性活躍推進に向けた検討及びリソースの有効活用等に資する資格や養成に係る制度の見直し等に取り組む。
(2)空港運営の充実・効率化
①空港経営改革の推進
国管理空港等において、「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」(民活空港運営法)を活用し、地域の実情を踏まえつつ民間の能力の活用や航空系事業と非航空系事業の一体的経営等を通じた空港経営改革を推進し、空港を活用した内外の交流人口拡大等による地域活性化を図っていくこととしている。具体的には、平成27年1月に但馬空港、28年7月に仙台空港、30年4月に高松空港、神戸空港、同年7月に鳥取空港、31年4月に福岡空港、静岡空港、南紀白浜空港、令和2年4月に熊本空港、同年6月より順次北海道内7空港、3年7月に広島空港の運営委託が開始された。
②LCCの持続的な成長に向けた取組
平成24年3月に本邦初となるLCCが就航した。それ以降、令和6年冬ダイヤ当初計画時点で、ピーチ・アビエーションは国内23路線及び国際13路線、ジェットスター・ジャパンは国内18路線及び国際5路線、スプリング・ジャパンは国内8路線(貨物専用路線も含む)及び国際4路線、ジップエア トーキョーは国際9路線へネットワークを展開している。
政府は、国内各地域における、LCCを含む国際線就航を通じた訪日外国人旅行客の増大や国内観光の拡大等、新たな需要を創出するため「令和7年の地方空港における国際線就航都市数130都市」を目標とした施策を行っている。また、様々な空港においても、政府の方針に沿った取組が行われている。
具体的には、主に受入環境整備、空港経営改革及び着陸料軽減措置を実施している。
③ビジネスジェットの受入推進
ビジネスジェットとは、数人から十数人程度を定員とする小型の航空機であり、利用者のスケジュールに応じた時間設定や、プライバシーが確保されるため搭乗中に商談等が可能となるなど、時間価値の高いビジネスマン等が利用の対象となっている。
欧米では既にビジネスジェットがグローバルな企業活動の手段となっている中、我が国においても経済のグローバル化に伴い、従来より、東京国際空港・成田国際空港を中心に、アジア地域における経済成長の取り込みの観点から、ビジネスジェットの振興は重要な課題であったが、近年は高付加価値旅行者の取込み等インバウンド拡大の観点からも重要性が増している。そこで、我が国ではビジネス需要や高付加価値旅行者の観光需要等に応えるべく、ビジネスジェットの利用環境の改善を図っている。例えば、令和6年度においては中部国際空港において、ビジネスジェット専用動線を一部改修整備し、ビジネスジェット利用者の利便性の向上を図るなど、ビジネスジェットの利用環境改善を着実に進めている。
④地方空港における国際線の就航促進
平成28年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」において掲げられている、令和12年に訪日外国人旅行者数6,000万人という目標の実現に向けては、国際線就航による地方イン・地方アウトの誘客促進が重要である。各地域における国際線就航の促進のため、グランドハンドリングや保安検査等の空港業務の体制強化や、航空燃料供給不足への対応を実施している。空港業務については、令和5年6月に公表した有識者会議の中間とりまとめを踏まえ、人材確保や処遇改善等を推進し、一時は人員が感染症拡大前の8割程度まで減少していたが、足下では感染拡大前の水準まで回復しつつある。航空燃料供給不足については、経済産業省と合同で令和6年6月に設置した官民タスクフォースにおいて同年7月に「航空燃料供給不足に対する行動計画」を取りまとめ、官民一体となった取組の結果として、週900便程度の国際旅客定期便の増便注3に対応してきている。また、東京国際空港以外の国管理空港(コンセッション空港を除く)・共用空港について、国際線の着陸料の軽減措置を講じている。
(3)航空交通システムの整備
長期的な航空交通需要の増加やニーズの多様化に対応するとともに、国際民間航空機関(ICAO)や欧米等の動向も踏まえた世界的に相互運用性のある航空交通システムの実現のため、「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)」を産学官の航空関係者により策定し、航空交通量の増大に対応するとともに、安全性や利便性の向上に取り組んできた。一方、脱炭素化に向けた社会的要請の高まり、ドローンや空飛ぶクルマの利用拡大等、我が国の航空交通システムを取り巻く環境は大きく変化しているため、令和6年度にCARATSの見直しを行っているところである。今後、新たなCARATSを指針として研究開発から社会実装に至るまで推進し、安全・安心な空域の利用を実現するとともに、利用者等にとってより良いサービスを提供できる航空交通システムを構築していく。
(4)航空インフラの海外展開の戦略的推進
アジア・太平洋地域における航空市場は今後も成長が見込まれる。このため、同地域の航空ネットワークの強化に貢献するとともに、各国の成長を我が国に積極的に取り込むべく、我が国企業による海外空港整備・運営への参画及び我が国企業が強みを有する個別技術の海外空港への展開を推進している。
令和6年度は、エジプトにおいて、円借款で整備したボルグ・エル・アラブ空港ターミナルが完成した。また、タイにおいて、スワンナプーム国際空港の地上直接送信型衛星航法補強システム(GBAS)の導入を推進した。加えて、インド等において、我が国企業が有する技術を紹介する航空技術セミナーを開催した。
- 注1 航空会社の新規参入や増便、航空会社間の競争促進による運賃低下等のサービス水準の向上を図るため、国際航空輸送における企業数、路線及び便数に係る制約を2か国間で相互に撤廃すること。
- 注2 いずれも各年の夏期スケジュールの第1週目の事業計画便数(期首時点での数値、往復で1便とカウント)。
- 注3 日本を発着する国際旅客定期便について、2023年冬ダイヤ第1週目4311.5便/週と2024年冬ダイヤ第1週目5178便/週を比較。


