国土交通白書 2025
第3節 産業の活性化
(1)旅客自動車運送事業
バス事業(乗合・貸切)、タクシー事業については、新型コロナウイルス感染症の拡大等により、輸送人員・運送収入が大きく減少し、依然としてコロナ禍前の水準に戻っていないところである。
こうした中で、バスの運転者については、令和元年度から令和4年度において約2.4万人が減少した。また、タクシーの運転者については、同期間において約5万人減少した一方、運賃改定により経営基盤が回復したこともあり、令和5年3月末に底を打ち増加傾向にある。いずれにせよ、バス・タクシー運転者の確保は、依然として地域住民や観光客の移動手段確保の観点から喫緊の課題である。
こうした運転者不足を解消するため、令和5年度補正予算に引き続き、令和6年度補正予算において、第二種運転免許取得支援を含む人材確保支援を実施することとした。具体的には、事業者が負担する第二種運転免許取得費用に加え、人材確保セミナーの開催経費やPR資料の作成等の広報業務等についても補助対象としており、不足する人員を事業者が確保するために必要な支援を行うこととしている。
また、自動車運送事業の給与水準は他産業に比べて低く、職業としての魅力を高めるためにも賃金を上げていくことが重要である。
そこで、乗合バスについては、令和5年度までに、人件費の算出方法の見直しや地方運輸局への認可権限の大幅な委任と申請書類の簡素化による審査の迅速化を行い、事業者による賃上げ等の労働条件改善を目的とした積極的な運賃改定の実施を促し、令和2年4月以降令和6年末までに、126事業者で運賃改定がされた。
また、タクシーについては、令和6年12月に運賃ブロック見直したことにより、定期的な改定を可能としており、令和2年4月以降令和6年度末までに99地域で運賃改定を実施し、賃金引上げに向けた取組を進めている。
また、貸切バスについても、令和5年8月に新運賃の公示を行い、同年10月より順次適用開始されたところであり、今後も定期的に公示運賃の見直しを行うことにより、賃上げ等の労働条件改善に向けた取組を後押ししていくこととしている。
こうした取組により、バス運転者の平均年間給与は令和4年の399万円から令和6年には463万円に増加し、タクシー運転者の平均年間給与は令和4年の361万円から令和6年には418万円に増加した。このような賃金の引上げの状況が継続するよう、引き続き必要な支援をしていく。
他方、主に訪日外国人旅行者を相手として行われる、道路運送法(昭和26年法律第183号)に違反する自家用車を使用したタクシー行為、いわゆる「白タク」行為については、関係機関と連携して対応してきたところであり、令和5年度以降、訪日外国人旅行者が増加している状況を踏まえ、主要空港等において白タク防止を呼びかける啓発活動等を実施し、旅行者の安全・安心を確保できるよう白タク行為防止対策を強化しているところである。
【関連データ】
・乗合バスの輸送人員、営業収入の推移
・貸切バス事業の概況
・タクシー事業の現状
(2)自動車運転代行業
自動車運転代行業は、飲酒時の代替交通手段として活用されており、令和6年12月末現在、総事業者数7,558者となっている。これまで、自動車運転代行業の健全化及び利用者の利便性・安心感の向上を図るための施策等を推進している。令和6年度には、今後の運転代行業の適正化について、自動車運転代行関係団体と意見交換を実施した。
(3)貨物自動車運送事業(トラック事業)
トラック事業者数は長期にわたり増加していたが、平成20年度以降はほぼ横ばいで推移しており、足下では約63,000者となっている。中小企業が99%を占めるトラック運送事業では、他産業と比較して、労働時間が長く、低賃金にあることから、担い手不足が課題となっている。こうした中、物流産業を魅力ある職場とするため、昨年4月よりトラックドライバーに対し時間外労働の上限規制が適用された一方で、何も対策を講じなければ物流の停滞が生じかねない「2024年問題」に直面している。このため、昨年策定された「2030年度に向けた政府の中長期計画」等に基づいて様々な取組を進めており、「標準的運賃」については、周知・浸透に取り組んでいるほか、昨年4月に成立した、物流効率化や取引環境適正化を図るための規制を盛り込んだ改正物流法については、改正内容の周知・徹底を行っている。加えて、同年11月に改組を行ったトラック・物流Gメンによる荷主・元請事業者への監視体制を強化するとともに、昨年8月に立ち上げた「トラック運送業における多重下請構造検討会」において、トラック運送業における過度な多重取引構造の是正に向けた対応策を検討していく。
(4)自動車運送事業等の担い手確保・育成
ヒト・モノの輸送を担っている自動車運送事業等は、日本経済及び地域の移動手段として重要な社会基盤産業であり、深刻化する担い手不足は、解決すべき喫緊の課題である。
自動車運送事業においては、職場環境改善に向けた各事業者の取組を「見える化」するための運転者職場環境良好度認証制度の普及を推進しているほか、業種別に様々な対策に取り組んでいる。バス・タクシーについては、賃金引上げ実現に向けた運賃改定の円滑な実施や第二種運転免許取得支援の導入等により、人材確保に取り組んでいる。トラックについては、荷主や消費者等も巻き込んだ「ホワイト物流」推進運動や賃金引き上げに向けた標準的運賃の周知・浸透、大型・けん引運転免許取得支援等に取り組んでいる。このほか、2024年3月、特定技能制度の対象分野に自動車運送業分野等、4分野を新たに追加することが閣議決定されたことを受け、自動車運送業分野においては特定技能1号評価試験を開始するなど、特定技能外国人の早期受入れに向けて必要な対応を進めている。自動車整備については、「自動車整備の高度化に対応する人材確保に係る検討WG」を設置し、産学官が協力して人材確保・育成に取り組んでいる。

