国土交通省ロゴ

国土交通白書 2025

第3節 産業の活性化

■10 持続可能な建設産業の構築

(1)建設産業を取り巻く現状と課題

 建設産業は、社会資本の整備を支える不可欠の存在であり、都市再生や地方創生等、我が国の活力ある未来を築く上で大きな役割を果たすとともに、震災復興、防災・減災、老朽化対策等、「地域の守り手」としても極めて重要な役割を担っている。一方、建設業の現場では担い手の高齢化が進んでおり、将来的な担い手の確保が課題となっており、処遇改善、働き方改革の推進、生産性向上等を推進するための取組を進めていく必要がある。また、平成28年12月に成立した「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」及び同法に基づく基本計画に基づき、安全衛生経費が下請まで適切に支払われるような施策の検討を進めてきた検討会の提言注13を踏まえ、安全衛生対策項目の確認表及び安全衛生経費を内訳として明示するための標準見積書の作成・普及等の取組を進める。

【関連リンク】

地方公共団体の入札契約適正化の取組状況「見える化」まとめ

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/nyukei-portal/

【関連リンク】

「発注関係事務の運用に関する指針」改正の概要

URL:https://www.mlit.go.jp/tec/content/001860708.pdf

【関連リンク】

『営繕積算方式』活用マニュアルの普及・促進について

https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000009.html

(2)建設産業の担い手確保・育成

 建設産業は、多くの「人」で成り立つ産業である。建設業就業者数は近年、横ばいで推移しているが、今後、高齢者の大量離職が見込まれており、建設産業が地域の守り手として持続的に役割を果たしていくためには、令和6年度からの時間外労働規制の適用も踏まえた働き方改革を含め、引き続き、将来の担い手の確保・育成に取り組んでいくことが重要である。

 このため、長時間労働の是正を図るとともに、賃金引き上げに向けた取組や社会保険への加入徹底、建設キャリアアップシステムの活用等による処遇改善に加え、教育訓練の着実な実施による円滑な技能承継に取り組む。また、将来の労働力人口の減少を踏まえ、建設プロセス全体におけるICT活用、インフラ分野全体のDX、技術者制度の合理化、重層下請構造の改善、書類作成等の現場管理の効率化等による生産性の向上も図っていく。

 また、現下の建設資材の高騰等を反映した請負代金や工期の設定が図られるよう、取組を進めていく。

 これらに加えて、現場技能者の賃金の原資となる労務費等がしわ寄せを受けないよう、高騰分の適切な価格転嫁が求められているところ、処遇改善、資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止、働き方改革と生産性の向上を大きな柱に、「持続可能な建設業」の実現に向け、令和6年6月、建設業法を改正した。

 こうした取組を官民一体となって推進し、建設業への入職を促進し、誇りを持って仕事に打ち込めるような環境整備に取り組んでいく。

 また、将来的に生産性向上や国内人材確保の取組を行ってもなお不足すると考えられる労働力を、外国人材の受入れによって中長期的に確保する必要がある。令和元年度より特定技能(建設分野)の在留資格で外国人材を受け入れており、現在は38,578人(令和6年12月末時点)が在留している。国際的な人材獲得競争が激化する中、我が国が外国人材から「選ばれる国」であり続けるための施策を実施するとともに、外国人材の円滑な受入れ、適正な就労監理に引き続き取り組むことで建設業の担い手の確保を図る。

【関連データ】

建設投資、許可業者及び就業者数の推移

URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html

(3)建設キャリアアップシステムの推進

 建設産業における中長期的な担い手の確保・育成を図るためには、技能労働者がキャリアパスや処遇について将来の見通しを持ちながら、働きがいや希望をもって働くことができる環境を構築し、業界全体として人材への投資や賃金設定が適切に行われる好循環を生み出すことが重要である。

 このため、担い手の技能・経験の見える化や適正な能力評価を業界横断的に進めるための建設キャリアアップシステム(CCUS)について、建設産業の持続的な発展のための業界共通の制度インフラとして普及を促進するとともに、更なる処遇改善等のメリットを技能労働者が実感できる環境づくりを目指す。具体的には、令和6年度からの3か年を「メリット拡大フェーズ」と位置付け、官民一体となって取り組む施策をまとめた「CCUS利用拡大に向けた3か年計画」を令和6年7月に公表した。今後、計画に掲げた取組の具体化を進め、処遇改善や業務効率化のメリット拡大を図る。

(4)公正な競争基盤の確立

 技術力・施工力・経営力に優れた建設業者が成長していく環境を整備する上で、建設業者の法令遵守の徹底をはじめとする公正な競争基盤の確立が重要である。

 そのため、従前より下請取引等実態調査や立入検査等の実施、建設工事の請負契約を巡るトラブル等の相談窓口である「建設業取引適正化センター」の設置、「建設業取引適正化推進期間」の取組、また請負代金や工期等の契約内容に関する実地調査の実施等により、発注者・元請・下請間の取引の適正化に取り組んでいる。

(5)建設企業の支援施策

①地域建設業経営強化融資制度

 地域建設業経営強化融資制度は、元請建設企業が工事請負代金債権を担保に融資事業者(事業協同組合等)から工事の出来高に応じて融資を受けることを可能とすることにより、元請建設企業の資金繰りの円滑化を推進するものである。本制度では、融資事業者が融資を行うにあたって金融機関から借り入れる転貸融資資金に対して債務保証を付すことにより、融資資金の確保と調達金利等の軽減を図っている。

②下請債権保全支援事業

 下請債権保全支援事業は、ファクタリング会社注14が、下請建設企業等が元請建設企業に対して有する工事請負代金等債権の支払保証又は買取を行う場合に、保証、買取時における下請建設企業等の保証料、買取料負担を軽減するとともに、保証債務履行時等のファクタリング会社の損失の一部を補償することにより、下請建設企業等の資金繰りの改善、連鎖倒産の防止を図る事業である。なお、本事業は令和7年度においても引き続き実施することとした。

③建設産業の担い手確保に向けた女性・若者の入職・定着の促進事業

 他産業を上回る高齢化が進行する建設業にとって将来の担い手確保が喫緊の課題であり、多様な人材が入職し、かつ、働き続けられる業界とする取組が必要である。

 こうした問題意識を踏まえつつ、女性活躍・定着促進を切り口として、全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産業を実現し、建設産業の担い手確保につなげていくため「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画」を策定した。

(6)建設関連業の振興

 社会資本整備・管理を行う上で、工事の上流に当たる測量や調査設計の品質確保が重要であることから、令和元年6月の改正で新たに、広く公共工事品確法の対象として位置付けられたところであり、建設業だけでなく、建設関連業(測量業、建設コンサルタント、地質調査業)も重要な役割が求められている。

 国土交通省では、建設関連業全体の登録業者情報を毎月、その情報を基にした業種ごとの経営状況の分析を翌年度末に公表しており、また関連団体と協力し就職前の学生を対象に建設関連業の説明会を開催するなど、建設関連業の健全な発展と登録制度の有効な活用に努めている。

(7)建設機械の現状と建設生産技術の発展

 我が国における主要建設機械の保有台数は、令和5年度で約109万台であり、建設機械の購入台数における業種別シェアは、建設機械器具賃貸業が約42%、建設業が約24%となっており、建設業とともに、建設機械器具賃貸業が欠かせないものとなっている。i-Constructionの取組の一環として、ICT施工の普及促進を推進しており、3次元データを活用した建設機械の自動制御等により高精度かつ効率的な施工を実現するマシンコントロール/マシンガイダンス技術等の積極的な活用を図っている。ICT施工の普及促進のためには、ICT建設機械等の普及が必要である。

(8)建設工事における紛争処理

 建設工事の請負契約に関する紛争を迅速に処理するため、建設工事紛争審査会において紛争処理手続を行っている。令和5年度の申請実績は、中央建設工事紛争審査会では42件(仲裁7件、調停29件、あっせん6件)、都道府県建設工事紛争審査会では101件(仲裁32件、調停61件、あっせん8件)である。

  1. 注13 建設工事における安全衛生経費の適切な支払いに向けて(提言)、令和4年6月27日第7回建設工事における安全衛生経費の確保に関する実務者検討会。
  2. 注14 他人が有する売掛債権の保証や債権の買取りを行い、その債権の回収を行う金融事業会社のこと。現在、銀行子会社系、前払保証会社系、リース会社系等8社のファクタリング会社が、当事業を運営している。