国土交通白書 2025
第2節 国際交渉・連携等の推進
(1)アジア太平洋経済協力(APEC)
APECは、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化、ビジネスの円滑化、経済・技術協力等の活動を行う経済協力の枠組みであり、国土交通省では、APECの交通・観光分野に係る大臣会合及び作業部会に出席し、APEC域内における効率的でシームレスな輸送システムの構築等に積極的に取り組んでいる。
APECの交通分野を取り扱う作業部会「APEC交通ワーキンググループ」については、令和6年9月から10月にかけて第54回会合がシンガポールにて開催され、サプライチェーンと連結性、持続可能な交通、包摂性とジェンダー平等、技術革新とデジタル化について議論された。
APECの観光分野を取り扱う第63回APEC観光ワーキンググループ会合及び第12回観光大臣会合が令和6年6月にペルー・ウルバンバで開催された。大臣会合では「持続可能な観光業の成長に向けた革新的な道筋」をテーマに討議が行われ、観光大臣声明が採択された。
また、同年10月に第64回APEC観光ワーキンググループがマレーシア・ランカウイで開催され、包括的で持続可能な観光の実現に向けた取組等について議論された。
(2)東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力
国土交通省は、ASEANにおける「質の高い交通」を更に推進するため、日本とASEANの交通分野の協力枠組みである「日ASEAN交通連携」の下、陸上、海上、航空にわたる様々な協力プロジェクトを実施している。これらのプロジェクトの進捗状況を確認し、今後の方向性、新たなプロジェクトについて議論するため、「日ASEAN交通大臣会合」等の会合が毎年開催されている。令和6年11月、「第22回日ASEAN交通大臣会合」がマレーシア・クアラルンプールで開催され、我が国からは古川国土交通副大臣が出席した。本会合においては、令和5年11月に開催された「第21回日ASEAN交通大臣会合」において採択された10年間(2024~2033年)の新たな行動計画「ルアンパバーン・アクションプラン」の下、「日ASEAN交通連携」の具体的実施計画である「日ASEAN交通連携ワークプラン2024-2025」とともに、新規協力プロジェクトとして「ASEAN地域における航路標識要員の人材育成」、及び「日ASEANCORSIA適格燃料認証ガイドブックの作成-SAF原料の多様化と認証-」の2つが承認された。さらに、これまでのプロジェクトの成果物として、「交通運輸技術連携セミナー成果報告書」、「マラッカ・シンガポール海峡共同水路測量調査完了報告書」及び「小型船舶への情報提供ガイドライン」の3つが承認された。
また、ASEAN各国のスマートシティ実現に向けたプラットフォームである「ASEANスマートシティ・ネットワーク(ASCN)」への協力の一環として、令和6年10月、「第6回日ASEANスマートシティ・ネットワーク ハイレベル会合」をASEAN各国、国内関係省庁、関係自治体と連携して、東京都にて開催した。本会合では、「GX(グリーントランスフォーメーション)」をテーマに、スマートシティの成功事例を共有し、その成功要因について議論し、脱炭素社会の実現に向けた協力の更なる推進を確認し、本会合の継続的な開催と、ASEANでのスマートシティ実現に向けて引き続き協力をしていくことを確認した。あわせて、日本とASEANの協力を促進するための枠組みである、日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会(JASCA)の活動の一環として、同年11月にシンガポールにおいて、両国からスマートシティ開発における知見の共有を行うセミナーを開催し、併せて開催したビジネスマッチングイベントでは、両国の官民セクターからの参加者同士で関係づくりや情報交換が行われた。
さらに、観光分野においては、ASEANとの観光協力やASEAN+3(日中韓)地域における観光の促進を目的に、毎年「ASEAN+3観光大臣会合」が開催されている。令和7年1月、「第24回ASEAN+3観光大臣会合」がマレーシア・ジョホールバルで開催され、我が国からは高橋国土交通副大臣が出席した。本会合では、ASEANへの観光分野の協力について、今後更に連携強化を図っていくことを主な内容とする共同声明が採択された。
(3)経済協力開発機構(OECD)
国土交通省は、OECDの活動のうち、国際交通フォーラム(ITF)、造船委員会(SBC)、地域開発政策委員会(RDPC)、開発センター(DEV)、観光委員会等における議論に参画している。
ITFは、加盟69か国が全交通モードを対象に交通政策に関する議論・研究を行っており、毎年5月には各国の交通担当大臣を中心に、著名な有識者・経済人を交えて交通政策に関する議論を行うITFサミットをドイツ・ライプチヒにて開催している。令和6年5月に開催されたサミットでは、「交通のグリーン化」をテーマに、持続可能な経済を促進するための交通のグリーン化について議論が行われるとともに、ウクライナに関する特別大臣ラウンドテーブルにおいては、ウクライナの交通インフラの復旧・復興について議論が行われた。また、ITFの調査研究部門である交通研究委員会(TRC)の「ビジョン主導の交通計画」ワーキンググループや「持続可能な交通への移行における、再生可能エネルギーの供給に対する競合するセクターの需要管理」ラウンドテーブル等に我が国から多くの専門家が参画し、国際的な研究活動の推進に貢献している。
SBCは、造船に関する唯一の多国間フォーラムとして、国際造船市場に関する政策協調のための重要な役割を担っており、公的支援の適正化や透明性確保、輸出信用等に関する議論を行っている。環境に配慮した船舶への融資等を促進するための国際的なルールの改正を検討する特別会合では、我が国が提出した提案文書をベースに環境に配慮した船舶の定義及び金融条件の議論が行われている。我が国はSBC及び同特別会合の副議長国として活動しており、引き続き、政策協調のための議論を継続的に実施し、加盟国間による公的支援の相互監視等を通じて、公正な競争条件の確保に努める。
RDPCでは、国土・地域政策等に関する各加盟国の政策レビューや、我が国の提案により都市における高齢化等の人口動態を踏まえた都市政策に関する調査等に積極的に取り組んでいる。また「スマートシティと包括的成長に関するOECDプログラム」の一環としてスマートシティのデータ利活用に関する調査に取り組んできた。
DEVは、途上国及び新興国における成長を促進し、生活水準を向上させるための政策的解決策を見つける手助けを行う機関であり、今後の開発に関する議論を行うとともに、セミナー等により質の高いインフラの途上国及び新興国への普及・実施についても取り組んでいる。
観光委員会では、各国の観光関連政策のレビューや、観光統計データの整備及び分析等を行っており、我が国は同委員会の副議長国として、積極的に議論に関与している。
令和6年には「OECD諸国の観光動向と政策2024」を発刊した。同書では、観光経済が新型コロナウイルス感染症による危機からの回復傾向にある中、より強靱で持続可能かつ包摂的な観光の実現に向け、観光政策における優先事項について分析するとともに、我が国の関連施策や取組事例等を含む実践例が提示されている。
(4)国際連合(UN)
①国際海事機関(IMO)
IMOは、船舶の安全・環境等に関する国際ルールを定めている国連の専門機関である。我が国は、世界の主要海運・造船国として同機関の活動に積極的に参加し、世界の海事分野におけるルール作りを主導している。
特に、世界的に関心が高まっている気候変動対策を海運分野で強力に進めるべく、令和5年に合意された「2050年頃までにGHG排出ゼロ」等の目標を達成するための新たなルールの策定に向けた議論が進められており、我が国は各国と協力し具体的な条約改正案を提案するなど、その議論の着実な進展に貢献している。
また、安全面においては、今後のGHG排出削減に必要不可欠な水素・アンモニア等のゼロエミッション船の普及の前提である安全確保に向けて国際的な安全基準作りを進めており、令和6年12月に我が国提案等をベースにしたアンモニアを燃料とする船舶の安全基準が策定されるなど、IMOにおける安全に関する国際ルール作りに貢献した。
②国際民間航空機関(ICAO)
ICAOは、昭和19年に締結されたシカゴ条約に基づき設立され、国際民間航空の安全・保安・環境等に関する国際標準の策定、各国の安全監視体制の監査等の取組を実施している国連の専門機関の一つであり、令和6年に80周年を迎えた。
我が国は、昭和31年以降今日に至るまで連続して理事国に選出されており、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加してきた。
また、我が国は、令和7年11月に実施される予定である理事会議長選挙の候補者として、ICAO日本政府代表部特命全権大使の大沼俊之氏(元 国土交通省航空局航空政策戦略監)を擁立することを決定しており、大沼氏の擁立を通じ、国際民間航空の安全かつ整然とした持続可能な発展に向けた貢献を更に加速させていく。
③国連人間居住計画(UN-Habitat)
UN-Habitatは、人間居住問題を専門に扱う国連の基金・計画の一つである。我が国は、設立以来の理事国としてUN-Habitatの諸活動に積極的に参加し、我が国の国土・地域・居住環境改善分野での経験、知見を活かした協力を通じ、世界、特にアジアでの人口爆発、急激な都市化に伴う人間居住問題の改善に貢献している。
令和6年11月には、エジプト・アラブ共和国で開催されたUN-Habitatが事務局を務める第12回世界都市フォーラムに参加した。本フォーラムにおいては、「都市と地方の連携」をテーマとしたネットワーキングイベントを開催し、「バランスの取れた国土開発」の重要性を発信した。また、「TOD(公共交通指向型都市開発)とデジタル技術の活用」をテーマとしたイベントも開催し、都市開発におけるTODやデジタル技術の有用性や今後の協力可能性等について議論を行うなど、両イベントとも大きな関心が寄せられた。
④世界観光機関(UN Tourism)
UN Tourismは、観光政策に関する意見交換、観光分野での技術協力、観光統計の整備、各種セミナー等を通じ、世界の観光振興を実施する国連の専門機関の一つである。我が国は、執行理事国としてUN Tourismの企画・運営に積極的に関与するとともに、アジア・太平洋地域事務所(奈良県奈良市)による持続可能な観光の実現や観光レジリエンス向上に向けた取組を支援している。
⑤国連における水と防災に関する取組
世界の水関連災害に対する各国の取組を強化し、意識啓発や各種提言・支援をするため令和6年5月にインドネシア・バリで開催された「水と災害ハイレベルパネル(HELP)」の第23回会合では、こやり国土交通大臣政務官(当時)が参加し、流域のあらゆる関係者による協働により立ち向かう「by ALL」の取組等について報告した。また、令和6年12月にスイス・ジュネーブで開催された第24回会合では、国定国土交通大臣政務官がオンライン出席し、「対話セッション」の基調講演において新潟県三条市長時代の被災経験を紹介しながら、防災投資の重要性を強調した。
令和6年12月には、国連総会本会議で毎年8月27日を「世界湖沼の日」と定める決議が採択された。同決議は、第10回世界水フォーラム閣僚級会合においてこやり国土交通大臣政務官(当時)が支持を表明し、インドネシアをはじめ74か国が共に提案したものである。
⑥国連における地理空間情報に関する取組
国土地理院は、国連経済社会理事会に設置されている「地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UN-GGIM)」に参加しているほか、UN-GGIMの地域委員会の1つである「国連地球規模の地理空間情報管理に関するアジア太平洋地域委員会(UN-GGIM-AP)」には副会長として、更には、「国連地名専門家グループ(UNGEGN)」に参加し、我が国で培った技術や経験を活かして、地球規模の測地基準座標系(GGRF)の普及や、地理空間情報に関するパートナーシップの推進等により貢献している。
(5)G7交通大臣会合
イタリアがG7議長国を務めるG7交通大臣会合が令和6年2月及び同年4月に開催された。令和6年2月の臨時会合では、令和5年11月以降、紅海等においてホーシー派による船舶の自由かつ安全な航行を阻害する行為が続いていることを踏まえ、紅海等を取り巻く現状や対応について情報共有・議論を行い、こうした行為を断固非難するとともに、G7の協調を強化していくことを内容とするG7交通大臣宣言を発することを合意した。
また、令和6年4月の会合では、「交通の未来~不確実な世界での連結性の確保~」をテーマに、ショックへの耐性がある交通、海上における連結性、ウクライナとの連携について議論が行われた。その結果、強靱な交通の実現につながる「交通サプライチェーンに関するG7ワーキンググループ」を設置すること、ホーシー派による紅海等における行動を強く非難すること、G7がウクライナを継続的に支援すること等を内容とするG7交通大臣宣言が採択された。
(6)G7都市大臣会合
第1回目のドイツ・ポツダム会合、前回の香川高松会合に続き3回目となるG7都市大臣会合が令和6年11月3日と4日にイタリア・ローマにて開催された。
議長国イタリアが前回の香川高松会合の成果を引き継ぎつつ、深化させ、「ネットゼロ・レジリエンス」「インクルーシブな都市、アフォーダブルな住宅、歴史・文化」「イノベーション創出とデジタル化」をテーマとして議論し、G7が連携して取り組む「共同行動」を含む成果をコミュニケとして取りまとめた。
(7)G7観光大臣会合・G20観光大臣会合
令和6年9月、ブラジル・ベレンにおいてG20観光大臣会合が開催され、観光が持続可能な開発目標(SDGs)の達成において果たす役割をテーマに議論を行った。各国・国際機関が協力して観光への財政支援を促進し、観光を通じた格差是正と包摂性の実現に向けて取り組む必要性に賛同したベレン宣言が採択された。
同年11月、イタリア・フィレンツェにおいて、G7の枠組みとしては初となる観光大臣会合が開催された。本会合では、持続可能で包摂的な社会発展のための観光の役割、観光産業におけるAI導入の可能性と課題等をテーマに議論が行われ、会合の成果としてコミュニケが取りまとめられた。
(8)世界銀行(WB)
令和6年6月に、兵庫県姫路市において、世界銀行が主催する国際会議「防災グローバルフォーラム2024」が開催された。同会議において、国土交通省は、気候変動を踏まえた我が国の治水対策を共有したほか、アジア太平洋地域における地震対策の推進に向け、我が国における住宅・建築物の耐震化の施策について紹介等した。
(9)アフリカ開発会議(TICAD)
アフリカにおけるインフラ整備への我が国企業の参画を推進するため「アフリカ・インフラ協議会(JAIDA)」と連携し、官民インフラ会議の開催等の取組を進めてきた。令和7年に開催されるTICAD9を契機として、インフラ分野における日本の技術やビジネス慣習に精通したアフリカ人材の育成やアフリカ各国のビジネス環境整備などの取組を加速し、我が国が強みとする「質の高いインフラ投資」原則を実践していく。
(10)アジア欧州会合(ASEM)
ASEMは、アジア・欧州関係の強化を目指して平成8年に発足した対話と協力の場であり、アジア側参加メンバー(21か国と1機関)、欧州側参加メンバー(30か国と1機関)の合計51か国と2機関によって構成されている。