平成元年度 運輸白書

はじめに

はじめに


 我が国経済は、二度にわたる石油危機、昭和60年以降の大幅な通貨調整当初の「円高不況」等の試練を乗り越え、61年末に景気回復に転じ、その後順調に拡大を続けている。今回の景気上昇は、旺盛な設備投資と力強い個人消費に牽引された内需主導型であり、経済の成長を通じ豊かな社会が実現されつつあるといえよう。しかし、こうしたなかで、経済社会の構造は急速に変貌しつつある。
 国民生活の面では、社会の成熟化に伴い人々の生き方がより個性的になり、女性の社会参加が顕著になるなど、新しいライフスタイルが定着しつつあることがあげられる。また、産業面においても、マイクロエレクトロニクス技術、情報関連技術を活用し、産業構造の軽薄短小化、高付加価値化が進展しており、経済がソフト化、サービス化する一方、経済の拡大に伴い企業の人手不足感が拡がりつつある。さらに、我が国経済の世界経済に占める地位の高まりに伴い、生活、産業両面において本格的な国際化時代を迎えており、我が国と海外との係わりは、これまでの加工貿易を中心としたものから、いわゆるヒト・モノ・カネ・情報等多面的な係わりへと変化してきている。
 このような変化の中には運輸に係わりの深い変化が少なくなく、こうした経済社会の変化に伴い、運輸について様々な解決すべき課題が生じている。以下、この第1部では、こうした運輸をめぐる環境の変化の実態を分析するとともに、それに伴う今後の課題について述べることとする。



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