平成5年度 運輸白書

はじめに

はじめに


 昭和40年代以降、モータリゼーションは、急速に進展した。 自動車の持つ随意性、機動性は利用者ニーズに適合しており、また、個室性等独自の魅力を有していることから自動車は国民生活や経済活動において極めて大きな役割を果たすようになった。
 しかしながら、自動車交通量の増大に伴い、道路交通混雑の激化、道路交通事故の増加、環境問題等のさまざまな弊害が顕在化しており、都市部を中心に「豊かさ」や「ゆとりある生活」を実感できない一つの要因となっている。
 一方、公共輸送機関は、自家用自動車に比べ、効率的な空間利用が可能で環境への負荷の少ない省エネルギー型の交通手段であり、特に、大都市や地方中枢都市においては鉄道の利用が増大している。
 1世帯に1.5台の割合で自動車が普及するなど、車社会が成熟化しつつある今日、真に豊かでゆとりある生活を実現するためには、自動車をめぐる諸問題を克服することが大きな課題となっている。このため、道路の整備・改良や違法駐車の排除等によって、自動車交通の円滑化を図ることが必要であるが、自動車交通量の増大が続く限り、これらの施策のみによっては、問題の根本的な解決を図ることは困難である。そこで、これらの施策とあわせて公共輸送機関の利用を促進することにより、公共輸送機関と自家用自動車の調和ある利用を図ることも必要となっている。
 また、21世紀に向けて、東京への諸機能の一極集中やその他の大・中規模都市への人口・諸機能の集積に伴い、これらの都市における通勤・通学混雑問題の解消や多極分散型国土の形成、さらには高齢化社会を迎えての高齢者・障害者等への取組みが大きな課題となっている。公共輸送機関は、自家用自動車のような私的交通機関とは異なった役割を果たすべきものとして、これらの課題への貢献が強く求められている。
 第1部では、こうした状況を踏まえ、まず第1章において、自動車利用の進展を中心に利用交通手段の変化を分析し、次に第2章において、こうした利用交通手段の変化によって生じた諸問題を明らかにし、第3章において、これらの問題の解決を図るとともに、21世紀に向けて高度化・多様化する利用者ニーズに応えつつ、様々な社会的ニーズにも対応するため、これからの運輸サービスのあり方がどうあるべきかを考えていくこととしたい。