平成7年度 運輸白書

はじめに

はじめに


 平成7年1月17日午前5時46分、淡路島北部を震源とするマグニチュード7.2の直下型大地震が阪神・淡路地域を襲った。
 わずか二十秒間の激しい揺れは、神戸市を中心に広い範囲で震度7となり、戦後最大級の災害を引き起こし、死者数について昭和33年の伊勢湾台風を超えるなど、高度に都市機能が集積した都市圏の直下で発生する地震の恐ろしさを我々に改めて認識させる結果となった。
 運輸関連施設も鉄道、港湾を中心に甚大な被害を受け、被災地はもとより、我が国全体の人流、物流にも大きな影響が生じた。その復興には長い時間と多額の費用がかかり、今後、被災地域の再生に向けて国と関係地方公共団体は全力をあげて取り組んでいかねばならない。
 運輸省では、地震発生直後から気象庁を中心に地震発生要因の究明を行い、余震の発生に全神経を集中する一方、海上保安庁では昼夜のべつなく緊急救援活動を実施し、また、緊急援助物資輸送体制の整備、代替輸送手段の確保、鉄道、港湾の復旧などの措置を講じた。
 このような経緯を踏まえ、今年の運輸経済年次報告では、第1部において、「災害に強い運輸をめざして」をテーマとしてとりあげた。まず、第1章において、兵庫県南部地震の概況とそれによって運輸部門が受けた1兆6千億円に及ぶ被害、鉄道の不通や港湾機能の大幅な低下に伴って陸、海、空の輸送や観光に及ぼした影響、地震発生後に海上保安庁を中心として行った救援活動や官民をあげて取り組んだ緊急輸送、旅客及び貨物のそれぞれについてとられた代替輸送の状況について概観したうえで、我が国にとって極めて重要な地域である阪神・淡路地域の復興のために鉄道、港湾及び観光の分野を中心に、特別立法の策定や財政及び金融上の支援措置を含めて復旧・復興に全力で取り組んでいることについて述べる。また、第2章においては、今回の震災によって得られた教訓をもとにした運輸省における震災対策として、@今回のような直下型地震に対応し得るよう鉄道、港湾等の交通基盤施設の耐震性の向上を図ること。A港湾において都市防災拠点を整備していくこと。B地震・津波監視体制をさらに強化すること。C防災計画の見直し、政府部内における情報の収集・連絡体制の強化、救援活動・緊急輸送体制の強化、代替輸送の確保についての事前の検討等震災時を想定した体制の強化に取り組むことについて述べる。さらに、第3章においては、火山噴火、風水害・雪害、海上災害等の地震・津波以外の災害に対する運輸省の施策について紹介する。