海上保安庁は、海洋汚染が発生する可能性の高い海域に巡視船艇・航空機を重点的に配備するとともに、監視取締用資機材を活用するなどして海洋環境保全のために監視取締りを実施しており、8年には、海上環境関係法令違反を787件送致した。また、1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(MARPOL73/78条約)に基づき領海外での外国船舶による油の不法排出について適切な措置を求めるため、当該船舶の旗国に対して違反事実を通報する旗国通報を実施しており、8年には19件を通報した。
海上保安庁は、油排出事故が発生した場合には、原因者、海上災害防止センター等防除措置の実施者への指導・助言を行うとともに、原因者側の対応が不十分なときは、自ら排出油等の防除を行うなど被害を最小限にくい止めるための措置を講じることとしている。また、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(海防法)及び7年12月に閣議決定された「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」に基づき官民合同の調整・防除機関である排出油の防除に関する協議会の組織化等の諸施策を推進している。
5年7月より、船舶からの油の排出基準の強化やタンカーに対する二重構造の義務付けを行ったほか、二重構造タンカーの導入を促進するために特別償却等の税制上の優遇措置や開銀による低利融資を講じている。
また、海防法に関し、7年5月に、「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力のための国際条約(OPRC条約)」に基づく、油流出事故についての通報に関する規定の整備、8年6月に、「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」に基づく、海洋汚染事犯を引き起こした外国船舶に対する担保金等の提供を条件に速やかに釈放等の措置を講ずる制度の創設、9年6月に、MARPOL73/78条約附属書Xの改正に伴う、船舶内で発生する廃棄物の不法投棄を防止するためのプラカードの船内掲示の義務付け等所要の改正を行った。
海上保安庁では、訪船等の機会を利用し、有害液体物質等の排出事故防止、ビルジ等の適正処理等の指導を実施するとともに、全国各地での海洋環境保全講習会を通じて、海事関係者のみならず広く一般市民に対し海洋環境保全の重要性等を呼びかけている。
また、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)船舶等の不法投棄について、7年度から、不要となった船舶の早期適正処分を指導する内容等を記載した「廃船指導票」(オレンジシール)を当該船舶に貼付することにより、原因者による自主的かつ円滑な処理の促進を図っている。
さらに、地方公共団体等に対し、協議の場を通じ、それぞれの地域に適した廃船の適正処理体制の確立を求めているところである。
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