1 国民生活の質の向上を支える港湾整備


(1) 親しみやすいウォーターフロントの創造

 ウォーターフロントへの多様で高度なニーズに対応し、港湾空間を海辺の持つ恵まれた資質を生かした交流空間としていくために、緑地、交流施設、賑わい施設などが相互に連携し、面的な広がりをもって一体的に配置された安全で親しみやすい空間の整備を公共事業、民活事業、他省との連携事業などを効果的に組み合わせて総合的に推進している。
 また、平成8年12月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のためのプログラム」において、今後成長が期待される新規成長産業のひとつに海洋関連分野が位置づけられるなど、海洋レクリエーション関連事業や海洋資源利用に係る事業、環境保全に係る事業等の海洋関連産業への期待が高まっており、運輸省としてもマリーナ等の整備、緑地等の親水空間の整備等の施策を推進していく。
 緑地については、良好な港湾環境の形成と周辺の生活環境の保全や人々の交流の活発化を図るため、7年度までに約2,300haの整備を実施しており、9年度には横浜港など166港で整備を実施している。特に整備を促進する必要がある再開発地区などの緑地については、自治省と協調し、従来からの補助事業と地方単独事業(都市生活環境整備特別対策事業)を組み合わせた「港湾緑地一体整備促進事業」を長崎港など23港で整備を実施している。また、これら緑地の整備などを通じて、人々が港へ安全かつ快適に行き来でき、海や港の魅力を楽しむことのできるプロムナード(港のパブリックアクセス)の整備を推進している。このほか、歴史的に価値の高い港湾施設を保存・活用する「歴史的港湾環境創造事業」や、港湾の特色を活かして個性的で良好な景観形成を図る「港湾景観形成モデル事業」などを推進している。
 マリーナについては、プレジャーボートを活用した海洋性レクリエーションの活動拠点となる施設であり、全国で約500ヶ所のマリーナが運用されている。9年度は公共マリーナ(第三セクターが管理・運営するマリーナを含む)は、横浜港等21港で、また、簡易な係留施設であるボートパークは東播磨港(兵庫県)等7港で整備を実施している。
 また、活力と賑わいのある豊かなウォーターフロント空間の形成並びに港湾を中心とした町づくりや地域の活性化を図るため、昭和61年の「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(民活法)」、62年の「民間都市開発の推進に関する特別措置法(民都法)」の制定以来、民活事業によりパシフィコ横浜国際会議場や大阪港の海遊館、博多港のベイサイドプレイスなど全国で約140のプロジェクトが推進されてきた。平成9年には、小名浜港等において地域の交流拠点となる旅客ターミナルが供用を開始したほか、神戸港等において港湾文化交流施設をはじめとする交流・賑わい施設の整備が周辺の事業と連携して進められている。

(2) エコポートの形成、廃棄物への対応

 港湾環境整備については、今後の目標を「環境と共生する港湾(エコポート)」の形成におき、水質・底質を改善する浚渫や覆砂、干潟の創造、緑地の整備など港湾環境インフラの整備等を推進している。特に環境の特性や立地条件から環境の保全や創造が強く望まれる地区については、エコポートモデル事業を行っており、横浜港等4港で実施されている。また、エコポートの形成のため、干潟・藻場の造成技術や生態系モデルの開発、海水交換等の海水浄化技術の実証等に取組んでいる。
 一方、廃棄物の処分については、内陸における処分場の確保が困難なことから、海面に最終処分場を求める要請が高い。背後に大都市圏が存在する東京湾、大阪湾などでは、一般廃棄物の海面処分の割合は5割を超えている状況にある〔2−8−14図〕。
 大阪湾においては、広域的に廃棄物の処理を行う広域臨海環境整備センター法に基づく事業(フェニックス事業)として、尼崎沖処分場等において廃棄物の海面処分が行われてきた。今般10年度に一般廃棄物等を処分する管理型区画が満杯となる見込みとなったため、9年3月基本計画が変更され、新たに神戸沖処分場が整備されることになった。
 また、資源循環型産業社会の形成に向け、臨海部に立地する産業がその廃棄物を相互活用する産業群を形成し、廃棄物ゼロを目指す臨海部ゼロ・エミッション型インダストリアルパーク構想の実現方策を検討する。

(3) プレジャーボート係留・保管対策の推進

 国民の生活水準の向上、モーターボートの低価格化などを背景にして、プレジャーボートによる海洋性レクリエーションの需要が増大し、7年度末のプレジャーボート保有隻数は約34万隻に達している。
 しかし、増大するプレジャーボート需要に対し、マリーナなどの係留・保管施設の整備が立ち遅れていることなどから、港湾等の公共水域に放置されるプレジャーボート、いわゆる放置艇が社会問題として顕在化してきている。  8年10月の運輸省港湾局・水産庁・建設省河川局の三省庁合同の全国実態調査によると、放置艇は全国で13万8千隻に達している。これら放置艇は、公共水域の適正利用、災害・安全対策、地域の環境保全対策に関して、深刻な問題を引き起こしており、早急な対応が必要となっている。そのため、いくつかの自治体が独自にプレジャーボートの放置の規制を含む条例や要綱を定めて対策を進めている。  こうした課題に対応するため、長期的かつ広範な視点から検討を行う有識者懇談会を設置し、プレジャーボートの係留・保管対策について検討を行ってきた。9年3月には「放置艇解消のためのプレジャーボート保管のあり方」(最終報告)が取りまとめられ、今後、提案された施策の具体化を進めていくことにしている。
 また、多量に存在する放置艇を早急に解消するために、既存の静穏水域等を活用した簡易な係留施設であるボートパーク〔2−8−15図参照〕の整備を推進することとしている。


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