2 新東京国際空港の整備


(1) 空港の現況

 8年度において新東京国際空港(成田空港)には38ヶ国51社の航空会社が乗り入れており、その利用状況は年間発着回数12万4,000回、年間旅客数2,557万人、年間取扱航空貨物量159万トンに上っているが、現在供用中の滑走路1本による運用では、既に乗り入れている航空会社からの強い増便要請や40ヶ国からの新規乗り入れ希望に対応できない状況にある。
 このため、昭和61年度から二期工事に着手し、平成4年12月には第2旅客ターミナルビルの供用を開始するとともに、現在、第1旅客ターミナルビル等の既存施設の能力増強に取組んでいる。しかしながら、増便や新規乗り入れ要請に応えて空港能力の拡大を図るためには、新たな滑走路等の整備が是非とも必要であり、未買収地の取得を含む成田空港問題の解決が喫緊の課題となっている。

(2) 成田空港問題をめぐるこれまでの動き

 成田空港問題については、平和的に話し合いで解決するべく成田空港問題シンポジウムへの参加等最大限の努力をはらってきたが、更に、千葉県等の地元自治体、空港反対同盟の熱田派のほか住民代表も参加して、空港と地域の共生の道を話し合うための成田空港問題円卓会議で真摯な議論が積み重ねられた結果、6年10月、平行滑走路等の整備の必要性については理解する等の結論が得られた。
 このような動きを受けて、7年1月、円卓会議には参加していなかった空港建設反対派である小川派のメンバーの1人から、総理大臣及び運輸大臣宛にこれまでの空港づくりについて反省を求める書簡が発出された。国としても空港建設に係るこれまでの事態について改めて遺憾の意を表した書簡を閣議に報告の上発出した。これにより、小川派は派としての反対運動の終了を表明し、同年7月には、元小川派代表と国等との間で裁判を通じて争ってきた諸問題を解消するとともに、これからの空港建設の進め方について話し合うことに合意した。この結果、8年7月には、空港敷地内農家としては11年ぶりに同氏が空港内用地約3.2haについて、さらに11月には同氏の実弟も空港内用地約1.9haについて売買契約を締結した。それ以降も話し合いが着実に実を結んでおり、9年8月には熱田派の敷地内農家2軒が空港内用地4.7haの移転についての基本的合意を行い、また、同年10月には元小川派の敷地内農家が空港内用地3.4haについて、さらに11月には、北原派の敷地内農家が空港内用地約1.4haについて売買契約を締結する等、話し合いによる用地問題解決の成果が具体化している。

(3) 地域と共生できる成田空港の整備に向けて

 8年12月末、運輸省は、共生策、空港整備、地域整備を一体のものとして進めていくとの認識の下、成田空港地域共生委員会からの要請に応えて、千葉県及び空港周辺市町村と相談した上で、その「基本的考え方」すなわち、共生策を組み込んだ新しい空港づくりを2000年度を目標に話し合いですすめることを地域に提案した。
 このような中、9年7月には従来の環境対策の枠を超えたきめ細かな環境対策事業を実施する財団(成田空港周辺地域共生財団)を空港公団、千葉県等関係地方自治体の協力のもと設立し、10月から事業を開始した。
 今後とも共生委員会とよく協議しながら地域との共生策のより一層の充実を図ることとする。また、運輸省・空港公団としては、地権者と引き続き誠意をもって話し合いを進めその理解を得るよう努力する等、用地問題の速やかな解決に最大限の努力を傾注し、また熱田派により提案され円卓会議の結論においてその具体化を図ることとされた「地球的課題の実験村」構想の実現等成田空港問題の最終解決に努力を重ねることにより、地域と共生できる空港の一日も早い完成をめざしていくこととしている。


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