平成8年11月から本格的な議論が開始された中央省庁改革の動きの中で、交通運輸行政も大きな変革を迫られることとなった。
中央省庁改革の基本的な理念として、できる限り大括り・総合化をめざすという考え方があり、各行政分野に係る中央省庁の建て方についての様々な議論を経て、最終的に、交通運輸行政については、新たに設置される国土交通省が担うこととなった。
我が国の経済社会システムが内外の環境変化の中で限界を露呈している状況にかんがみ、これを21世紀にふさわしいものに再構築するため、行政組織の面においても、複雑多岐にわたる行政課題に縦割行政の弊害を超えて国民本位で的確かつ効率的に対応できる組織体制を作り上げることが重要な課題となっている。
このため、新しい組織体制の理念と具体策を検討するため、各界の有識者が集まり、8年11月に行政改革会議が設置された。40数回に及ぶ審議等の場において、21世紀における国家機能の在り方、これを踏まえた中央省庁の再編の在り方、官邸機能の強化のための方策等の事項について検討が行われ、9年12月には最終報告がとりまとめられた。
最終報告では、内閣機能の強化、1府12省体制への省庁の再編成及び行政機能の減量・効率化等の様々な改革方策が提示され、このうち、交通運輸行政については、運輸省・建設省・北海道開発庁・国土庁の4省庁を母体として新たに設置される国土交通省が担うこととされた。
その後、最終報告を具体化するため、基本的な理念及び方針等について定めるとともに、改革の推進のための組織として内閣に中央省庁等改革推進本部を設置すること等を内容とした「中央省庁等改革基本法」が国会に提出され、同法は10年6月に成立した。
国土交通省の具体的な担務については、行政改革会議最終報告及び中央省庁等改革基本法において、国土の総合的・体系的な開発及び利用、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進等を主要な任務とし、また、国土計画や都市整備等とともに、道路・鉄道・空港・港湾等の公共施設の整備・管理、運輸事業、運輸安全、海上保安、気象、観光等を主要な行政機能とすることが定められている。
また、その編成に当たって、交通運輸行政に関しては、主として以下のような方針が示されている。
○ ハード(道路、鉄道、空港、港湾等のインフラ整備)とソフト(組織・要員・ノウハウ等の総体としての事業運営等)の両面からの総合的な交通体系の整備を行うこと
○ 運輸事業について、需給調整のための規制の撤廃等を通じて市場原理に委ねることを徹底し、行政の関与を大幅に縮小すること
○ 交通安全行政について、関係府省間における調整の中核としての機能を担うこと
このような考え方に基づき、国土交通省が設置され、交通政策の推進をその主要な任務とすることにより総合的な交通運輸行政が展開できることとなることは、社会資本整備の整合的・効率的な推進と並んで、国土交通省を編成する大きな眼目のひとつである。
今後、国土交通省の設置に向けては、上記のような中央省庁等改革基本法等に示された方針を踏まえつつ、ハード面の施策(交通インフラの整備)とソフト面の施策(利用者利便の確保、安全確保、環境対策等)とを一体的に遂行する必要がある。このためには、例えば、
(1) 物流の高コスト構造是正のための道路輸送、海上輸送、鉄道輸送等を通じた総合的な施策
(2) 陸・海・空を通じた効率的な幹線交通体系の整備
(3) 来るべき高齢化社会に対応した都市交通施策
といった各般の施策を、より的確に展開するとともに、そのための的確な体制のあり方を検討していくことが重要な課題である。
また、交通運輸行政の基本は安全の確保にあるが、国土交通省は、運輸省及び建設省が所管している各般の交通安全施策を一元的に引き継ぎ、将来にわたって、安全な交通運輸サービスの提供の確保に大きな役割を果たすことが必要である。
中央省庁等改革基本法においては、できれば21世紀がはじまる13年1月1日を目標として中央省庁の再編成に係る新しい体制への移行が開始されることとされており、今後、中央省庁等改革推進本部を中心として、具体的な検討が進められ、所要の法律案が11年4月頃に国会へ提出される予定となっている。
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