我が国においては、医療・福祉体制の充実等により平均寿命が伸びる一方、女性の社会進出の拡大、晩婚化等により少子化傾向が続いており、我が国の人口構造は急速に高齢化しつつある。現在の高齢化率(65歳以上の高齢者が人口に占める比率)は、他の先進国とほぼ同程度であるが、引き続き少子・高齢化傾向が続くため、今後、他の先進諸国を引き離し、2015年には4人に1人を65歳以上の高齢者が占めるという世界に例のない高齢社会となる〔1−3−1図〕。
我が国の高齢化率は、1995年の14.6%から2015年の25.2%まで急増し、さらに2050年に32.3%とピークに達する〔1−3−2図〕。
(イ) 高齢者の公共交通利用の増加
60歳以上の高齢者の外出の頻度については、総務庁の平成7年の調査によると「毎日外出する」人が43.3%、「ときどき外出する」人が32.7%であり、合計で3/4を超えている。また、外出の手段については、バスを利用する人が26.7%、電車を利用する人が17.2%、タクシーを利用する人が7.5%であり、高齢者の外出においては、相当程度公共交通機関が利用されていることがわかる。今後高齢者数の一層の増加に伴い、公共交通を利用する高齢者は、急増していくと予想される〔1−3−3表〕。
年齢階級別にみた公共交通機関の利用割合は、同調査によれば、年齢階級が上がるほど電車の利用割合が低下しており、反対に、タクシーの利用割合が高くなっている。バスは、70〜74歳の階級をピークとして、これから離れるほど利用割合が低下している。
このことから、高齢者の中でも年齢が上がるにつれ、バス、電車等の定時定路線型サービスより、タクシー等のドア・ツー・ドア型のサービスを求める傾向にあることがわかる。〔1−3−4表〕
高齢者の社会参加等の活動が活発になっている傾向の具体例として、高齢者の国内、海外への旅行者数の増加が挙げられる。国内旅行の例では、JRグループの高齢者を対象としたサービスの一つである「ジパング倶楽部」(注)の会員数についてみると年々増加している〔1−3−5図〕。また、海外旅行については、年齢層別出国者数比率をみると、高齢者の海外への出国状況は、他の年齢層同様に増加している〔1−3−6図〕。
人口1000人に対する身体障害者数の割合は、厚生省の調査によると3年には28.3人であり、昭和62年時点より1.6人上回っており、増加傾向にある。年齢階級別にみると、身体障害者数の割合は高年齢ほど高くなっている〔1−3−7図〕。
身体障害者の外出状況をみると、過去1年間で「外出したことがある」人が85.8%、そのうち「ほぼ毎日」外出する人が42.7%と最も多く、「週に2〜3回」の人をあわせると全体の約6割を超えている。したがって、今後の高齢化社会の進展により身体障害者数の割合が高まることを踏まえれば、身体障害者の公共交通の利用は増加していくと予想される〔1−3−8図〕。
(注):ジパング倶楽部とは、男性65歳、女性60歳以上を対象としたJRグループの会員組織であり、年会費を払った会員に対し、様々な旅行情報を提供するとともに、JRの路線を201キロ以上利用する際の運賃・料金を、2、3割引きするサービス。
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