(1) 事業者の収支状況
運輸関係大手企業60社の平成9年度売上高についてみると、10業種の中で、定期航空業、外航海運業等を除き、鉄道業、乗合バス業、造船業など6業種で減収となっており、特に、鉄道車両工業がその他の業種に比べ大きく減収(対前年度比12.4%減)となっている。〔2−1−25図〕
同じく運輸関係大手企業60社の9年度経常利益についてみると、10業種の中で、定期航空業、外航海運業を除き、鉄道業、乗合バス業、トラック運送業など8業種で減益となっており、そのうち鉄道車両工業は経常赤字となっている。また、鉄道業、港湾運送業など5業種で10%以上の減益、トラック運送業、乗合バス業及び倉庫業の3業種で5%以上の減益となっている。〔2−1−26図〕
(2) 設備投資動向
「運輸関連企業設備投資動向調査」(以下「設備投資動向調査」という。)によると、運送業(原則として資本金1億円以上の1,941社調査)における10年度設備投資計画は、対前年度比4.9%減(総額2兆3,181億円)となっており、9年度設備投資実績の対前年度比6.4%増から減少に転じた。特に、航空運送業、トラック運送業、倉庫業の減少額が大きく、また、車両への投資が減少しており、車両更新時期の延伸等によるコスト削減の動きがうかがえる。〔2−1−27表〕
(3) 景況感
運輸関連企業の景気動向に関する調査(以下「景気動向調査」という。)によると、最近の運輸事業者の景況感は極めて厳しいものとなっている(10年9月時点での景況感DI値−92.2)。内訳をみると、「良い」と感じている事業者は、0.7%しかなく、92.9%の事業者が「悪い」と感じており、全部門において厳しさを増している。〔2−1−28図〕
(4) 資金調達状況
設備投資動向調査によると、事業者の設備投資に要する資金調達については、その約2分の1を外部からの借入等によっている。〔2−1−29図〕また、景気動向調査によると、金融機関の貸出態度について約半数の事業者が厳しさを感じており、資金繰りについても4割強の事業者が苦しいとしている〔2−1−30表〕。
(5) 倒産状況
9年の全産業倒産件数は、16,365件となり、近年では最多となった。運送業の倒産件数は436件と対前年比15.3%の増加となっており、5年以降高い水準で推移している〔2−1−31図〕。全産業の負債総額は、金融機関の破綻や上場企業の倒産が増加したことから、14兆210億円と大幅に増加している。このうち、運輸関連企業の負債総額については、運送業が対前年比41.7%増の894億円となっている〔2−1−32図〕。
(6) 雇用状況
全産業でみた最近の雇用状況は、10年度に入り雇用者数が減少し、完全失業率が4%台とこれまでにない高水準で推移するなど厳しさを増しているが、運輸事業をめぐる雇用状況も厳しい状況下にあり、景気動向調査によると、運輸関連企業の人手過剰感は、人手不足感を約14ポイント上回っている。また、10年度の新規採用者数を前年より「減少させる」とした事業者も「増加させる」とした事業者より大幅に多い〔2−1−33図〕。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |