(1) 総合経済対策による公共事業の前倒し執行
長引く景気の停滞から早期に脱出し、我が国経済を力強い回復軌道に乗せるため、10年4月に総事業費16兆円超の過去最大規模の「総合経済対策」が策定され、その着実な実施が図られているところである。この中で、10年度当初予算における公共事業の執行については、上半期末における契約済額の割合が政府全体として過去最高の81%以上となることを目標として前倒し執行に努めており、早期の景気回復を目指している。
さらに、政府としては、一刻も早い景気回復を図るため、11年度に向け切れ目なく施策を実行できるように、第3次補正予算を編成することとし、また、税制について、6兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施することとしている。
(2) 運輸に係る追加的景気対策
運輸省としては、所管公共事業費の約6割を3大都市圏のプロジェクトに充当するとともに、「総合経済対策」の一環として、10年度当初予算の前倒し執行を図っている。このほか、10年度第1次補正予算として、運輸省関係では公共事業費3,713億円を含む総事業費3,919億円を計上し、景気対策に資することとしているが、主な事業は次のとおりである。
横浜港等中枢国際港湾においては、コンテナ船の大型化に対応した水深15メートルの国際海上コンテナターミナルを整備することによるスケールメリットを活かして物流コストの削減を図る。また、塩釜港等中核国際港湾において、国際海上コンテナターミナルを整備することにより、地方圏発生貨物を海外とダイレクトに結ぶことによる物流コストの削減を図る。
(イ) 拠点空港の整備
航空ネットワーク形成の拠点となる新東京国際空港(成田)、東京国際空港(羽田)、関西国際空港、中部国際空港の大都市圏拠点空港及びこれに準ずる機能を有する拠点空港の整備を推進するとともに、地方空港の整備を行う。
(ウ) 次世代航空保安システム等航空保安施設の整備
航空機の安全運航の確保を最優先としつつ、空域の有効利用等による航空交通容量の拡大を図るため、神戸航空衛星センターの新設、広域航法衛星ネットワーク整備の促進など運輸多目的衛星を中核とした次世代航空保安システムの整備を推進するほか、航空路における管制施設、保安施設等の高度化を推進する。
(エ) 都市鉄道による広域的都市ネットワークの整備
営団地下鉄東西線九段下駅の折り返し線を新設することにより、列車本数を増加させ列車の混雑を緩和して快適性を高め、自動車利用者の鉄道利用を促進することによって道路渋滞を緩和する。
(オ) 震災時の防災拠点等の緊急整備
阪神・淡路大震災における神戸港の耐震強化岸壁の有用性に鑑み、緊急物質等の輸送用の耐震強化岸壁の整備とともに、避難緑地等と一体となった臨海部の防災拠点を整備し、防災機能の向上を図る。
東京湾において9年7月に発生したダイヤモンドグレース号の座礁事故等に鑑み、船舶航行の難所となっている重要航路において航行の安全性の向上を図り、災害を防止するため、開発保全航路を緊急に整備する。
さらに、運輸省としては、景気回復に向けて全力を尽くすために、運輸関係社会資本の重点的・効率的な整備による内需拡大等を内容とする11年度概算要求を行ったところである。
こうした総合的な経済対策が奏功し、我が国経済が早期に景気の自律的回復軌道に乗ることが期待される。
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