日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の経営は、昭和39年度に赤字に転じて以降、悪化の一途をたどり、破綻するに至った。その国鉄を市場競争に耐え得る事業体に変革し、鉄道事業の再生を図るべく、62年4月1日に分割・民営化を柱とする国鉄改革が実施された。この時点で処理を要する国鉄長期債務は、国鉄の累積債務その他の負担金等、総額37.1兆円であった〔2−1−35図〕。
(1) 新事業体
国鉄の鉄道事業の分割・民営化を実施するため、旅客鉄道会社6社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国及びJR九州)と貨物鉄道会社1社(JR貨物)が設立された。これらの新会社等は、最大限の効率的経営を行うことを前提として、当面収支が均衡し、かつ将来にわたって事業を健全に経営できる限度の債務(計5.9兆円(注1))を負担することとされた。ただしJR北海道、JR四国及びJR九州については、営業損失が見込まれたため、長期債務は承継しないこととし、営業損失を補填し得る収益を生む経営安定基金(計1.3兆円)を設けることとした。
(イ) 新幹線鉄道保有機構
既設新幹線については、線区ごとに資本費格差があるため、本州3社(JR東日本、JR東海及びJR西日本)間の収益調整を行う観点から、新幹線施設を一括して保有し、本州3社に有償で貸し付ける主体として新幹線鉄道保有機構が設立された(注2)。新幹線鉄道保有機構は新幹線施設の簿価に相当する債務(5.7兆円)を承継するとともに、再調達価格と簿価との差額に相当する債務(2.9兆円)を後述する日本国有鉄道清算事業団に対して負うこととされた。これらの負担はリース料という形で本州3社が負担することとなり、新会社等が負担する債務の総額は、実質的には14.5兆円となった。
(2) 日本国有鉄道清算事業団
国鉄は日本国有鉄道清算事業団(以下「清算事業団」という。)に移行し、JR、新幹線鉄道保有機構等の新事業体に承継されなかった長期債務(25.5兆円)及び土地その他の国鉄の資産は清算事業団に残された。清算事業団は国鉄長期債務の償還及びその債務に係る利子の支払い、そのために必要な土地やJR株式等の資産の処分を行うとともに、新事業体に採用されなかった国鉄職員の再就職の促進を図るための業務を臨時に行うこととされた。
(注1) 日本テレコム、鉄道情報システムが承継する分を含む。
(注2) なお、株式の上場のために本州3社の資産及び債務を確定させる必要が生じたため、平成3年10月に新幹線施設は本州3社に売却され、債務は同月に設立された鉄道整備基金に承継された。また鉄道整備基金は9年10月に解散し、債務は同月に設立された運輸施設整備事業団に承継された。
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