(1) 運輸分野における国際協力の重要性
開発途上国の発展のためには、効率的な輸送体系の構築や観光の振興が不可欠である。しかし途上国においては、そのための資金、技術、人材等が不足している。このため豊富な経験と優れたノウハウを持つ我が国に対し運輸分野の国際協力の要請が数多くなされている。これに対し基盤施設の整備等のハード面のみならず、施設の管理・運営、事業の経営等のソフト面も含めて、国際協力に総合的に取り組んでいる。(写真)
(2) 運輸分野における国際協力の実績
我が国の国際協力の中で、運輸分野は過去5年間で協力実施国が100カ国以上にのぼり、有償資金協力全体の約1/5を占めるなど重要な役割を果たしてきている。平成9年度における協力形態別の実績は以下の通りである。
開発調査(協力対象国と共同して開発計画のマスタープラン策定やプロジェクトの実施可能性調査等を行うもので、調査の過程を通じて計画策定に係る技術を移転することも目的としている)については、タイの空港整備計画、インドネシアの港湾整備長期戦略調査、シリアのダマスカス市内交通総合開発計画等、12件が採択された。また、鉄道、港湾、航空等の運輸分野の専門家合計211名をインドネシア、フィリピン、タイ等をはじめとして、全体で31の国及び国際機関に派遣した。
研修分野では、総合観光セミナー、鉄道経営計画、港湾管理運営セミナー、航空管制セミナー、海洋保全などの研修を行い、97の国・地域から449名の研修員を受け入れた。また、ロシアからも航空、港湾分野の研修生を受け入れている。
プロジェクト方式技術協力(専門家派遣、研修員受け入れ、機材等供与を一つのプロジェクトに統合し総合的に実施するもの)について、9年度末において実施中の運輸分野案件は、フィリピン航空保安大学校など合計5件となっている。
運輸分野におけるリハビリテーション協力(メンテナンス不良等から有効に利用されていない施設、設備等を修理・補修し再活性化するもの)については、6年度よりメキシコでメキシコシティー・トロリーバス再活性化協力を実施している。
(イ) 資金協力
有償資金協力では、タイのバンコク地下鉄建設第2期事業、ブルガリアのブルガス港拡張計画、中国の上海浦東国際空港建設事業計画等17件について総額2,178億円に及ぶ円借款の交換公文が締結された。
無償資金協力では、サモアの島嶼間輸送貨客船建造計画、パキスタンの第二次気象観測網整備計画、エジプトのスエズ運河架橋建設計画等11件について総額204億円の交換公文が締結された。
(3) 国際協力の動向
開発途上国のニーズに的確に対応した効果的な国際協力を行うために、運輸関係国際協力における国別、分野別の援助指針の策定を進めるとともに、相手国との相互理解をより一層深度化する観点から、ハイレベルでの政策対話、実務者協議を行っている。
また、地域全体を視野に入れた効果的な国際協力を行うために、多数国、多分野にわたる総合的な物流調査を行うとともに、多数国にまたがる案件について各国の相互理解を図るために、セミナー等を開催している。9年度においては、メコン圏物流整備調査やシルクロード鉄道国際フォーラム等を行った。
(イ) 環境問題への対応
環境問題は、開発途上国において深刻化するとともに、地球的規模の重要な課題となっている。このため、環境問題の対応には特に力を入れており、気候変動観測・監視体制の整備、都市交通公害対策、海洋汚染防止等様々な角度から積極的に対応している。
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