2 安全な車づくりの推進


(1) 自動車の安全に関する技術基準の拡充強化

 自動車の安全に関する技術基準については、国際的調和にも留意しつつ、交通環境の変化に対応した見直しを適宜行っている。特に、近年、交通事故死傷者が高い水準で推移しているという厳しい事態に対処するため、4年3月に運輸技術審議会から出された答申を逐次計画的に実施している。最近では、10年10月より乗用車に対する側面からの衝突時に乗員の損害を軽減するための車体による衝撃吸収性能やトラック、バス等の大型車のブレーキの基本性能及び耐フェード性能等について基準の拡充強化を実施したところである。今後も事故の実態、自動車の技術進歩等社会的要請に対応するよう、引き続き拡充強化等を図ることとしている。

(2) 先進安全自動車(ASV)の開発推進

 エレクトロニクス技術等の新技術の活用により自動車を高知能化し、安全性を格段に高めた先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)について、学識経験者、関係省庁、自動車メーカー各社代表等により構成するASV推進検討会を中心に研究開発を行っている。
 3年度からの第1期5か年計画に引き続き、8年度からの第2期ASV開発推進計画においては、対象車種について、第1期の乗用車にトラック・バス、二輪車を加え、ヒューマン・インターフェイスの最適化及びインフラとの整合・連携について重点課題として取り組むこととしている。
 10年度においては、8年度に新たに整理した予防安全技術及び事故回避技術等の6分野32システム107の要素技術について研究開発を推進するとともに、条件整備(法規、規格、技術基準の制定・改正、インフラ整備等)の必要性についての検討及び各システム技術ごとの事故低減効果の推定を行うこととしている。
 今後とも、107の各要素技術について順次実用化をめざし、今世紀中に市販車両への搭載を図るとともに、各要素技術を統合制御できるシステムを開発し、21世紀初頭において統合システムを搭載したASV車の実用化をめざして、研究開発を推進する。

(3) 自動車ユーザーへの情報提供

(4) 自動車の検査及び点検整備

 7年7月の改正道路運送車両法の施行による、新しい自動車の検査及び点検整備制度が導入されて3年が経過し、ユーザー車検が増加するとともに、自動車整備業においても検査合否情報等の提供によるユーザー選択型整備の導入等ユーザーの利便向上、負担軽減を図る努力が進められている。また、自動車の保守管理責任が明確化されたことにともない、ユーザーの保守管理意識の高揚を図っていく必要があり、運輸省においては、引き続き、関係者の協力を得ながら「自動車点検整備推進運動」等の各種活動を積極的に行っていくこととしている。
 自動車の検査・点検整備に係る規制緩和については、10年3月31日に閣議決定された「規制緩和推進3カ年計画」に基づき、5月には自動車の重要保安装置の分解整備を行った場合の分解整備検査を廃止する「道路運送車両法の一部を改正する法律」が公布されたところであり、トラック等の自動車検査証の有効期間の延長については、9年度に実施した自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討結果を踏まえて、安全の確保、公害の防止の面も含め、延長の車種、期間等の総合的な検討を行い、6月に運輸技術審議会に諮問したところである。10年度中に具体的な結論を得て、所要の措置を講ずることとしている。

(5) リコール制度、自動車ユーザーからの苦情相談等への対応

 リコール制度は、自動車製作者等が、自動車等の構造、装置又は性能が道路運送車両の保安基準の規定に適合しない又は適合しなくなるおそれがあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認めた場合に、運輸大臣に届け、当該自動車を無料で回収・修理する制度であり、道路運送車両法に基づき実施している。
 また、ユーザー利益の保護及び車両不具合事故の未然防止対策の観点から、自動車交通局及び地方運輸局に自動車不具合情報受付専用FAXを設置する等自動車に係る苦情相談窓口の充実を図っている。


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