事業用自動車による重大事故件数(転覆、転落、火災及び踏切事故を生じた事故、死者及び重傷者が生じた事故など)は、ここ数年横ばい傾向を示している。しかし、9年の重大事故に起因した死者数は、1,535人にものぼり、依然として事業用自動車を取り巻く交通環境は厳しい状況にある。
事業用自動車の運行の安全を確保し、事故を未然に防ぐため、一定規模以上の自動車運送事業の営業所には運行管理者を選任しなければならないこととされており、運行管理者により運転者の労務管理、乗務員の指導監督など日常の運行が安全に保たれるよう管理させている。運行管理者に対しては、資質の向上を目的に研修を行い、安全運行に係る指導・教育の徹底を図っている。
また、自動車運送事業者に対しては定期的に監査を行い、法令の遵守、安全の確保に係る社内体制の改善を指導している。特に、悪質な違反や重大な事故を起こした自動車運送事業者には特別保安監査を実施して、必要に応じ事業用自動車の使用停止を命ずるなど厳正な行政処分を行っている。
さらに、自動車運送事業者が重大事故を引き起こした場合の自動車事故報告制度及び緊急連絡マニュアルを定め、重大事故発生時において情報を迅速に収集し、事故原因の究明及び再発防止に努めている。さらには、自動車事故情報分析システムを用いて事故の発生状況を多角的に集計・分析して事故防止対策の検討を行っており、その結果を踏まえて事故警報を発出するなどにより、安全な運行が確保されるよう積極的な取り組みを行っている。
また、自動車運送事業者から報告のあった重大事故報告書を解析した結果、全体のおよそ3割が重大事故の発生に際し法定速度を大幅に超えて運行されていたことが判明し、また、道路交通法の改正により最高速度違反における事業者の責任が強化されたことに伴い、警察庁とも連携を図り最高速度違反行為による事故を防止するため、自動車運送事業者に対する処分基準を強化するとともに、その基準を公表したところである。
現在、更なる運行管理手法を改善すべく、新技術の活用による新しい運行管理システムの構築をめざし、調査・検討を進めているところである。このシステムは、事故発生状況、運行管理の実態、社会状況等を総合的に勘案し、運行中の安全確保、運行計画の策定支援、運転者・運行管理者の教育、高度道路交通システムの活用などの方策に反映させることにより、事業用自動車に係る運行管理業務の高度化、効率化を図り、安全対策の一層の強化を期待したものである。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |