1 外航海運


(1) 世界における外航海運の動向

 近年、アジアの経済発展を背景に、アジア域内やアジア−欧米諸国間の貿易が拡大した結果、アジアにおける巨大な海運市場が形成されてきた。しかしながら、平成9年夏以来のアジア諸国の経済の混迷等の影響で、荷動きに変化が見られ、韓国、タイ、インドネシアといった国からの輸出が伸びる一方、輸入は減少もしくは伸び悩んでいる。
 アジアと北米を結び最大の基幹航路である北米航路においては、7年以降大量の大型コンテナ船が建造・投入され、需要の増加を上回る船腹供給がなされる中、海運企業間の競争の激化により、定期コンテナ船の運賃水準は、平成7年後半から大きく下落(40%〜50%)したまま低水準で停滞し、海運企業は厳しい経営を強いられてきた。このような中、9年来のアジア発貨物の増加に伴う輸送需要増を受けて、北米航路の往航運賃(アジア発)が上昇し、低落傾向に一応の歯止めがかかった。
 また、欧州航路についても、アジア発貨物の増加を背景に実勢運賃上昇の動きがある。〔2−7−1図
 世界の主要コンテナ航路においては、膨大な投資を要する船舶を各々の海運企業が多数保有することが困難であるため、複数の企業がコンソーシアム(企業連合)を形成し、コンテナ船のスペースを分け合って共同で定期運航を確保するスペースチャーター(同一の定期コンテナ航路に配船する複数の海運企業が相互に一定のスペースを融通し合いコンテナを海上輸送する制度)を行うのが通例となっている。近年では、P&OCL(英)とネドロイド(蘭)の合併(9年1月)、NOL(シンガポール)のAPL(米)の買収(9年11月)等、お互いに異なるコンソーシアムに所属する大手海運企業の合併等を契機として、海運企業間でコンソーシアムの更なる再編が行われている。

(2) 国際競争力強化への取り組み

 外航海運業界は厳しい国際競争にさらされており、先進国をはじめとする各国外航海運企業はコスト削減を図るため、船舶の海外置籍を進め、途上国の低廉な労働力を活用している。我が国においても、日本籍船及び日本人船員が減少しており、9年には日本籍船は182隻(前年比4.7%減)、日本人船員は4,561人(前年比11.6%減)となっている。〔2−7−2図2−7−3図
 しかしながら、日本籍船及び日本人船員は、海運造船合理化審議会(海造審)や運輸政策審議会の答申等においても述べられているように、貿易物資の安定輸送の確保、船舶運航等に係るノウハウの維持・向上、世界のトップレベルを行く造船業と連携した海上運送の安全の確保・向上並びに海洋汚染防止を含む環境対策の充実の面で、海運及び関連産業とともに、大きな意義を有している。このため、自国籍船・自国人船員の確保策を講じている欧米各国の例も参考に、我が国においても、8年度以降、安定的な国際海上輸送の確保上重要な一定の日本籍船を「国際船舶」と位置づけ、その海外譲渡等について届出・中止勧告制度を設けている。また、このような国際船舶について登録免許税及び固定資産税の軽減措置が講じられている。
 さらに、8年3月より海運造船合理化審議会海運対策部会において、新たな国際経済環境に対応した外航海運対策について審議が行われ、9年5月に報告書が取りまとめられた(第6章第3節1(2)参照)。


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