4 港湾運送事業の効率化・サービスの向上


(1) 港湾運送事業の規制の見直しと協業化・集約化による構造改善

 陸上輸送と海上輸送の結節点である港湾において荷役業務を行う港湾運送事業は、一旦混乱が生じれば我が国産業の生産活動や食料需給にも重大な影響を及ぼす公益性の高い事業であり、港においてこれらの業務が秩序を持って安定的に提供されることが、貿易立国である我が国にとって必要不可欠である。現行の港湾運送事業法における、事業免許制及び料金認可制による規制は、このような港湾運送の秩序を維持し、安定的な荷役作業の提供、さらには我が国経済の発展に貢献してきた。
 しかしながら、その一方で、現行の港湾運送事業法による規制は、

等の弊害をもたらし、我が国の港湾の効率化、活性化を阻害する要因となっていることも事実である。
 このような状況を踏まえ、運輸省としては、経済活動の基盤である物流の効率化の必要性が強まっているところであり、港湾においても同様に、効率性の向上、船社のニーズに沿ったサービスの確保への要請が高まっているところから、港湾運送事業の規制緩和に取り組むことにした。具体的には、まず行政改革委員会における審議が行われ、9年12月に最終意見が出された。最終意見においては、現行の事業免許制(需給調整規制)を廃止し許可制に、料金認可制を廃止し届出制にすべきであることと同時に、港湾運送の安定化や悪質な労働供給者の参入防止等の方策が必要であると指摘している。
 これらの指摘を踏まえ、10年5月20日、運輸政策審議会海上交通部会を開催し、規制緩和の具体的実施策の在り方、港湾運送の安定化方策等について、関係者間での議論を開始した。今後は、10年中を目途に中間とりまとめを行い、11年度早期にも答申を得る予定としている。
 また、港湾特有の業務の日別の波動性に対応する効率的な就労体制の形成を推進するため、港湾運送事業の集約化、協業化による構造改善を進める必要があり、この点についても、同部会において審議が行われているところである。

(2) 事前協議制度の改善

 現在、海運業界、港運業界、港湾労組の合意に基づき、コンテナ船の配船変更等における港湾における雇用の調整システムとして、海運企業と(社)日本港運協会(以下「日港協」という。)との間及び日港協と港湾労働組合との間で協議が行われる事前協議制が実施されている。
 事前協議制度については、内外船社等の関係者や米国、EU等海外の政府から手続きの簡素化や透明性の確保などその改善に関する強い要望があったことを踏まえ、日本の港をより使いやすいものにするため、国内において関係者間で議論を行った。その結果、9年10月末に、日港協、邦船社の団体、外船社の団体及び運輸省の4者間で、改善についての合意がなされ、現行事前協議制度について大幅な改善が図られたところである。
 また、あわせて事前協議制度の別方式の設定等について、運輸省はその権限を逸脱しない範囲内で関係者に助力を行うこと等を内容とする合意が、邦船社の団体、外船社の団体及び運輸省の3者間で9年10月末に行われている。


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