(1) 船員雇用の現状
外航海運における国際競争の激化や国際的な漁業規制の強化による漁船の減船等により海運業及び漁業の雇用船員数は引き続き減少傾向を示しており、平成9年10月には約12.1万人と対前年同月比約3,000人(2.4%)の減少となった。船員の年齢構成をみると、45歳以上の中高年齢者が47.9%と対前年比0.8ポイントの増加となる等高齢化の傾向は変わらず、海技の伝承の受け皿となるべき若年船員の不足が懸念されている。
一方、9年の船員の労働需給をみると、有効求人数は14,042人と対前年比176人(1.27%)の増加、有効求職数は43,393人と対前年比1,807人(4.00%)の減少となった。このため、有効求人倍率は0.32倍と対前年比0.01ポイントの上昇にとどまり、船員を取り巻く雇用情勢は引き続き厳しい状況にある。
(2) 船員雇用対策等の推進
外航海運については、厳しい国際競争のなか日本籍船の国際競争力が低下し、日本籍船及び日本人船員が減少を続けている。
このため、日本籍船及び日本人船員の確保を図るため、8年度に国際船舶制度を創設し、9年5月に同制度の拡充等について海運造船合理化審議会海運対策部会の報告がとりまとめられた。
同報告においては、日本籍船の国際競争力を確保するための日本人船長・機関長2名配乗体制の実現及びこれに適切に対応し得る日本人船員を確保・育成するための若年船員に対する実践的な教育訓練スキームの確立等について提言された。これを受けて、10年10月から、実践的な教育訓練スキームとして若年船員養成プロジェクトを実施している。
一方、内航海運においては、従来は漁船や外航船の船員が内航船員不足を補充する供給源となっていたが、最近はその転入が従来ほど期待できない状況となってきている。一方、内航船員の高齢化の状況は依然として厳しく、若年船員を中心とした船員の確保が今後の重要な課題の一つとなっている。このため、5年3月の「内航船員不足問題を考える懇談会」報告に沿って、フォローアップ会議を開催し、労働条件・環境の改善、リクルート対策の強化等の対策を講じている。具体的には小委員会を設置して、タンカー荷役の際「船舶荷役安全確認表」の標準化、積荷の品質管理や航海毎のタンククリーニング作業の改善等船員の労務軽減対策等を検討しているほか、事業所訪問により荷主の協力を求めている。また、全国13カ所に設置した内航船員確保対策協議会等を活用して、各地区毎にリクルート対策を講じている。
(イ) 船員雇用対策
本四架橋に伴う関係船員の雇用対策については、明石海峡大橋関係では離職を余儀なくされる者に対し、関係者と協議しつつ離職前職業訓練の実施、再就職先の確保等の対策を講じてきたところであるが、供用開始後も引き続き求人開拓、職業紹介に努めるとともに、就職促進給付金の支給等の措置を講じ、離職者の再就職の促進を図っていくこととしている。一方、尾道・今治ルート(11年春供用開始予定)関係についても、関係機関と連携しつつ船員に対する離職前職業訓練、離職者の受け皿となる再就職先の確保等の諸対策を実施している。
漁業については、国際協定の締結等による漁業規制の強化及び漁業資源の減少等による減船の実施に伴い発生した漁業離職者に対し、職業転換給付金の支給等所要の措置を講じていくこととしている。さらに、漁業離職者の内航海運への再就職を促進するための「内航転換助成事業」を行っている。
(ウ) 外国人船員の受入れ対策
従来から、日本籍船であって日本の船社が配乗権を有するものについては、陸上職場における外国人労働者の受入れに関する閣議了解(現在は第8次雇用対策基本計画、平成7年12月閣議決定)を準用して、外国人船員を配乗しないように行政指導を行っている。これに対し、日本籍船であっても海外貸渡しにより外国の船社が配乗権を持っているもの(いわゆるマルシップ)については、閣議了解の範ちゅう外として扱い、外国人船員の一部配乗を認めている。
これを受けて、外航貨物船については、2年3月から、海外貸渡方式(いわゆるマルシップ方式)により日本人船員と外国人船員との混乗を実施している。
また、旅客船についても、外航客船を対象として海外貸渡方式による混乗が実施されているが、2年9月からは、旅客サービスの充実等のため、エンターテナー等の専門的な技術・技能等を有する外国人については、日本の船社が直接雇用し船員として乗り組むことも認めている。さらに、3年6月からは、海外貸渡方式により外国人船員を配乗する日本籍の外航客船が外航輸送と次の外航輸送の間に短期間に限り国内輸送をする場合には、その期間中も外国人船員が乗り組むことができるよう認めている。
一方、漁船については、2年3月から、海外基地で操業する漁船を対象に、外国人漁船員の混乗を認めているが、7年9月からは、外国人漁船員の割合の上限を乗組員数の25%から40%に拡大している。さらに、主として外国200海里水域で操業し、必要の都度外国の港に寄港する漁船を対象として、10年7月から海外貸渡方式による外国人漁船員との混乗が実施されている。
(b) 外国資格受有者の承認制度の導入
日本籍船の国際競争力を強化することを目的とする国際船舶制度は、8年度の海上運送法の一部改正により創設されたが、9年5月の海運造船合理化審議会海運対策部会において、その拡充方策の一つとして、国際船舶における日本人2名配乗体制の実現が提言されたことを受けて、外国人船員に対する海技資格の付与の方策の検討を進め、10年5月の船舶職員法の一部改正により、外国人船員に対する船舶職員の資格証明制度が創設された(11年5月20日施行)。
本制度の運用が開始されると、1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する条約(STCW条約)の締約国が発給した資格証明書を受有する者が運輸大臣の承認を受ければ、海技従事者の免許を受けなくとも船舶職員として日本籍船への乗り組みが認められることとなる。
(エ) 改正ILO条約への対応
8年10月に開催されたILO海事総会において、「船員の募集及び職業紹介に関する条約」等について審議が行われ、4本の条約(議定書を含む。)等が採択された。このため、関係者と調整を図り適切に対処することとしている。