第1節 都市における魅力ある街づくり


1 「住んで良し、訪ねて良し」の街づくり


2 都市観光の振興による効果

 都市観光の振興により各都市への来訪客が増加することは、大きな経済効果をもたらす。すなわち、観光産業は、旅行業、交通業、宿泊業、飲食業等広範多岐にわたり、また、地域の特色ある食材や工芸品等を産出する地場産業にも関連が深く、観光振興はこれら産業の振興につながり、地元において多くの雇用機会を創出する。今後、ゆとりや豊かさを求めて国民生活の力点がレジャー・余暇生活に向かうこと、また、時短、休日等により余暇時間が拡大していくこと等を考えると、観光産業は、地域を支え、国を支える基幹産業のひとつとしての役割を果たす。


 また、観光振興は都市の住民が地域を見つめ直し、より良い街づくりを進める契機ともなるうえ、多様な価値や異なる文化とのふれあいを通じ、心の柔軟性と寛容性をはぐくむことができ、交流の拡大が地域間の友好協力に資する。
 諸外国の主要都市においては、こうした観光交流の果たす役割の重要性を認識し、ニューヨーク、シンガポールなどで積極的な都市観光政策を展開しており、我が国においても、各都市が関係方面と連携しつつ、都市戦略のひとつとして、観光交流の拡大に向けた総合的な取り組みを強化する必要がある。


3 都市交通政策と都市観光の関連

 最近の観光旅行の傾向として、個人や少人数での旅行の増大がある。このため、旅行先で住民と同じような立場で公共交通機関を利用する機会が増大しており、その利便性の向上やわかりやすい情報の提供(路線網、運賃、ダイヤ)が重要となっている。また、訪日外国人が増加している中、外国語による案内、標識等の充実、外客向けの宿泊施設の整備等を図っていく必要がある。
 さらに、最近の都市観光の傾向として、地域ふれあい・体験型の観光が主流となっている。中心市街地の活性化により街の賑わいを回復するとともに、都心部の交通量を抑制し、その街ならではの雰囲気や情緒を実感しながら歩いて楽しめる観光地づくりを推進していく必要がある。
 バス事業者においても市内循環バスの運行、総合ガイドブックの作成等の取り組みを行っているが、運輸省としても、国内観光情報を包括的に検索できるシステムを構築し、インターネットや観光案内所等を通じて提供する「次世代観光情報基盤整備事業」を進めるほか、国内観光振興緊急対策事業の一環として、サインシステムの整備事業に対する補助等を行うことにより、観光情報提供の充実を図りつつある。


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