1 「住んで良し、訪ねて良し」の街づくり
都市における魅力ある街づくりを進めるに当たっては、まず、住民自らが生活しやすい、利便性、快適性にすぐれた都市環境の整備をめざす必要がある。都市交通政策の展開により、地域内での円滑な移動が容易なハイモビリティ社会が実現すれば、高齢者、障害者等を含めた住民全体の社会参加と交流が促進される。また、住民が人間性豊かに暮らし、活気ある街であれば、来訪客にも好印象を与え、魅力ある街に感じられる。
21世紀に向けて、多くの人々が交流し、住民がいつまでも住み続けたい、また、来訪客も住みたくなるような都市として、ハード・ソフトにわたる都市環境を調和を保ちながら整備していくことが重要である。
(2)都市の観光魅力
魅力ある都市とは、美しい自然や歴史的遺産が多いといったことだけが条件でなく、これ以外に都市が持つ複合的な機能やその文化や情報の発信機能そのものが観光魅力となり集客力を発揮していることが多い
(東京都の臨海部、横浜のみなとみらい21地区、京都駅ビルなど)。
また、都市において、鉄軌道、道路等大規模なインフラは、本来の機能のほかに、それ自体が第一級の観光資源としての機能を果たすことがある(東京臨海部を走る「ゆりかもめ」、明石海峡大橋など)。
(3)地域固有の生活文化の活用
地方都市の中心市街地が持つ生活文化の魅力の再評価が進み、これを活かした街づくりを行うケースが増加している。生活文化とは、長い歴史の中でその都市が培ってきた運河、蔵、食及びまつりなどで、これらを活かす知恵と努力によって、多数の観光客を集めている。
こうした生活文化を活かした街づくりは、住民自らが地域固有の良さを発掘、再認識し、これを守り育てることが必要であり、また、来訪客との交流の中でその良さを共に分かち合うホスピタリティの精神を育てることが重要である。
さらに、街づくりのためには、行政依存ではなく長年にわたる住民の連携協力と、これを主導するリーダーの存在が重要であり、また、このような生活文化の魅力を観光産業との連携により、PRしていく積極性が求められる。
(4)都市観光の振興に向けた取り組み
運輸省は、こうした観光振興による地域活性化を促進するため、平成9年度から「観光地づくり推進モデル事業」を支援している。これは、モデル観光地について様々な観点から魅力度評価を行い、この評価を基に観光地づくりプログラムを策定し、観光関係団体による観光振興イベント支援事業等を集中的に実施するとともに、PRや観光客誘致等を行うものである。
また、「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」に基づき、地域伝統芸能等を活用したイベント等に支援を行うとともに、毎年、「地域伝統芸能全国フェスティバル」を開催している。
都市観光の振興により各都市への来訪客が増加することは、大きな経済効果をもたらす。すなわち、観光産業は、旅行業、交通業、宿泊業、飲食業等広範多岐にわたり、また、地域の特色ある食材や工芸品等を産出する地場産業にも関連が深く、観光振興はこれら産業の振興につながり、地元において多くの雇用機会を創出する。今後、ゆとりや豊かさを求めて国民生活の力点がレジャー・余暇生活に向かうこと、また、時短、休日等により余暇時間が拡大していくこと等を考えると、観光産業は、地域を支え、国を支える基幹産業のひとつとしての役割を果たす。
最近の観光旅行の傾向として、個人や少人数での旅行の増大がある。このため、旅行先で住民と同じような立場で公共交通機関を利用する機会が増大しており、その利便性の向上やわかりやすい情報の提供(路線網、運賃、ダイヤ)が重要となっている。また、訪日外国人が増加している中、外国語による案内、標識等の充実、外客向けの宿泊施設の整備等を図っていく必要がある。
さらに、最近の都市観光の傾向として、地域ふれあい・体験型の観光が主流となっている。中心市街地の活性化により街の賑わいを回復するとともに、都心部の交通量を抑制し、その街ならではの雰囲気や情緒を実感しながら歩いて楽しめる観光地づくりを推進していく必要がある。
バス事業者においても市内循環バスの運行、総合ガイドブックの作成等の取り組みを行っているが、運輸省としても、国内観光情報を包括的に検索できるシステムを構築し、インターネットや観光案内所等を通じて提供する「次世代観光情報基盤整備事業」を進めるほか、国内観光振興緊急対策事業の一環として、サインシステムの整備事業に対する補助等を行うことにより、観光情報提供の充実を図りつつある。
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