1 交通安全対策の推進
交通安全の確保は運輸行政の基本であり、このための施策の推進は重要課題の一つである。運輸省では、以下のように陸、海、空にわたる総合的な交通安全対策を講じ、各輸送機関の安全の確保に努めている。
特に、人為的ミスや不十分な検査体制による事故・トラブルが相次いで発生していることに対応して、運輸事業全般の事故防止に運輸省が一丸となって取り組むため、11年10月運輸省内に事務次官を議長とする「運輸省事故災害防止安全対策会議」(略称「運輸安全戦略会議」)を発足させ、安全の確保に最大限の努力を払っている。
○自動車交通関係では、平成11年6月の運輸技術審議会答申「安全と環境に配慮した今後の自動車交通政策のあり方について」において、今後の自動車交通安全対策の事故低減目標やその進め方が示されたことを踏まえ、事故情報の収集・分析・活用、事業用自動車の安全対策及び車両の安全対策をはじめとする自動車交通安全対策を、体系的、また、継続的に推進することとしている。
○鉄軌道交通関係では、11年6月27日の山陽新幹線福岡トンネル及び10月9日の北九州トンネルにおけるコンクリート剥落事故等を踏まえ、「トンネル安全問題検討会」を開催し、事故原因の究明を行うとともに、トンネルの中長期的な保守・管理のあり方について検討し、早急にとりまとめることとしている。同時に、JR西日本に対しては、山陽新幹線の安全総点検を指示するとともに、徹底した安全対策の確立を指導している。
○海上交通関係では、船舶航行の安全性を確保するための防波堤等の整備、船舶の安全かつ能率的な運航を確保するための灯台、灯浮標等の航路標識の新設及び既設標識の機能向上、船舶気象通報の拡充等を行うとともに、船舶の安全な運航を確保するため、船員の資質の向上、船舶の運航管理の適正化、海難審判による原因の究明等を行っている。
また、船舶の安全及び海洋汚染の防止のための技術的な規制について、効果の客観的な評価を行い、合理的かつ効果的な規制体系の構築に努めている。さらに、小型船舶安全対策として、11年5月から五級小型船舶操縦士資格制度が施行されたため、当該免許取得者へのルール・マナーに関する教育・啓蒙をさらに充実させることとしている。
○航空交通関係では、11年6月に航空技術の発達等に対応した安全規制の見直しを内容とする航空法の一部改正が行われたところであり、今後、航空安全対策を体系的、継続的に推進することしている。また、11年4月に航空路火山灰情報センターにおいて航空路における火山灰の拡散予測業務を開始し、航空気象情報の高度化を図った。さらに、11年7月23日に発生した全日空61便ハイジャック事件を踏まえ、同種事件の再発防止のため、同事件で問題となった受託手荷物受取場から出発ロビーへの逆流についての恒久的な防止措置を含む、ターミナルにおける保安措置の全面的な見直し、強化を行い、可能なものから逐次実施してきており、ハイジャック時の機内における対応マニュアルの見直しについては、検討を進めている。
2 災害対策の推進
運輸省、海上保安庁及び気象庁は、災害防止のための予報体制の強化、輸送施設及び交通機関の災害予防対策、国土保全対策、災害復旧事業を総合的かつ計画的に推進している。
具体的には、11年4月から津波予報区を細分化し、津波の高さを8段階に分けて発表する新しい津波予報を開始したほか、画像情報を主体とした、よりわかりやすい防災気象情報を提供する「緊急防災情報ネットワーク」の運用を11年9月から開始した。
3 技術開発の推進
急速に高齢化社会を迎える我が国が、今後とも活力を維持し、持続的な発展を遂げるためには、独創的・革新的な技術を創出していくことが不可欠である。そのため、交通サービスの飛躍的な向上に資する以下のような技術研究開発を強力に推進するとともに、その成果を安全性・利便性の一層の向上や環境の保全に積極的に活用することとしている。
○自動車技術関係では、3年度からの第1期5ヶ年計画に引き続き、
8年度からの第2期ASV開発推進計画において、対象車種について第1期の乗用車にトラック、バス及び2輪車を加え、21世紀初頭の実用化を目指し研究開発を推進しており、12年12月にはインフラと連携した共同実証実験を計画している。
○鉄道技術関係では、超電導磁気浮上式鉄道については、山梨実験線において走行試験が行われているところであり、11年2月より5両編成での走行試験を行い、同年4月には最高速度552km/hを達成した。また、軌間可変電車(フリーゲージトレイン)については、10年10月試験用車両が完成し、その後、11年1月のJR山陰本線での走行試験後、同年4月より米国コロラド州プエブロの試験線において高速走行試験及び耐久性確認試験等を実施している。
○造船技術関係では、メガフロート(超大型浮体式海洋構造物)の構造物としての安全性、信頼性等の確保のために必要となる評価システム等の調査研究を実施するとともに、災害時における大規模浮体式防災拠点として活用が可能とされる機能要件、技術課題に係る調査を実施している。
○港湾・空港技術関係では、阪神・淡路大震災クラスの直下型地震に対応できる耐震技術に関する研究、建設コスト縮減やリサイクル材料の実用化に向けた研究、海上国際空港の建設技術に関する研究、各種データベースの整備など港湾及び空港に係る広範な研究を実施している。
○航空技術関係では、人工衛星やデータリンク等の新しい技術を活 用し、現行システムの限界を克服するため、次世代の航空保安システムの中核となる、航空管制のための機能を搭載した運輸多目的衛星(MTSAT)を打ち上げることとしている。
4 情報化の推進
運輸分野では、消費者利便の向上、安全性の向上、経営の効率化等の観点から、従来より、各種の情報システムが導入されてきた。
7年2月には、内閣総理大臣を本部長とする高度情報通信社会推進本部において「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」が決定され、運輸部門については、高度情報化を進めるべき重要な部門として位置付けられた。この基本方針を受け、同年8月に、公共輸送部門における情報化実施方針を策定した。同実施方針は、高度情報通信社会に向けてより多様化する国民のニーズに的確に対応するため、国民へのタイムリーな情報提供、安全性の確保、物流の効率化といった観点から、近年の情報通信技術の成果を活用し、情報化を一層推進することとしている。