1 一般労働市場の動向
技術革新に伴う巨額の設備投資,消費需要の増加,輸出の伸長等にささえられた近時のわが国経済の高度成長によつて、雇用者数は,労働生産性の上昇による生産額1単位当りの数を滅じながらも,昭和28年から38年までの間に2倍の水準に達するほどの増加を示した。一方,技術革新は作業内容を大きく変化させ,その結果,適応力があり,賃金も低い若年労働力に対する需要が急増した。とくに,新規学卒者に対する求人は年々大幅に増加し,それらが大企業や発展産業に集中したため,中小零細企業や停滞産業においては,その充足がきわめて困難となつてきた。また,機械関連産業や建設工事の発展に伴い,技能労働力も不足をきたしている。このように,新親学卒者およびこれに代替可能な若年労働者ならびに技能労働者を中心として労働力の需給関係がひつ迫化してきたのである。
以上の結果,既就業の労働力の吸収によつて必要人員を充足,確保しようとする動きが強まり,農業やその他の分野の中小零細企業に従事していた若年労働者および技能労働者が,賃金その他の労働条件のより良い職場へと移動する傾向を強めた。
このような労働需給関係のひつ迫化による新規学卒者の初任給や若年労働者の賃金の大幅な上昇と,その標準化傾向を契機として,年令による賃金格差が縮小すると同時に,賃金決定事情に変化をもたらし,賃金の社会的相場ともいわれるべきものがあらわれ,業種,企業または地域による賃金水準の格差が縮小する傾向にある。
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